第121話 おとしまえはキッチリと!
「あの、ナツキ様、そろそろお加減の方は…」
「ん~もう少しこのままで~」
現在、俺はミールに膝枕をしてもらいつつも、フサフサ尻尾をモフモフしながら休憩している。
そんな俺のすぐ近くでは、エルとティリアの二人が抱き合い泣いていた。
泣いていると言っても、悲しくて泣いている訳では無く、うれし泣きというやつだ。
先程、ミール達に治して見せると宣言し、エルとティリアの元へとやって来た俺は、無事ティリアの翼と足を治療する事が出来たのだが、代わりに俺は魔力がごっそりと減り、酷い眩暈に襲われる事となった。
すぐにマジックポーションを飲み、魔力を回復させたのだが、まだ少し眩暈がするのでミールに膝枕を頼み、こうして休憩させてもらっていたのだ。
因みにノアとシアとレイの3人は部屋の外で周囲の警戒をしてもらっており、サラとディは俺のお腹の上にお座りしている。
それから少しの間休憩していると、エルとティリアが落ち着いたらしく、二人は立ち上がり俺の傍へとやって来た。
「ナツキ様、この度は本当にありがとうございました。
盗賊につかまっていたところを助けて頂いた上、無理をしてまで私の翼と両足を治して頂けた事、心より感謝しております」
そう言いながら、ティリアはお腹の上に両手を当て、頭を下げる。
「もしお許しいただけるのならば、私は貴方様の為、身体を使いお返し致したいと思っております」
この一言に、俺の脳内はR指定的な妄想が一気に広る。
尚、それがどんなものなのかは、絶対に誰にも教えるつもりは無い。
「旦那様、念のためにお教えしますが、ティリアさんの言っているのは、旦那様にメイドとして仕え、身の回りのお世話をするという意味ですからね?」
ミリーは、妄想する俺の姿をジト目でみながら、ティリアの言葉の意味を俺の教えるのだが、そこにティリアの爆弾発言が投下される。
「ご主人様がお望みでしたら、もちろん伽の方も…」
この一言で俺の先程の妄想が再びリピートされ始めたのだが、流石にティリアの提案はすぐさま嫁一同に却下される事となった。
毎晩嫁達に相手をして貰えているので、残念だなんて思っていません!
全く思っていません!
…すみません、少し思いました。
ゴホン!
そう咳払いをし、話題を変えようと俺はエルにティリアとの関係について聞いてみた。
「ティリアは私の補佐役兼専属メイドでした。
ですがそれ以上に、私にとっては大事な姉妹の様に思っていました」
危ね、もしこの殻ごと吹っ飛ばしてたら、俺、知らずのうちにエルの姉妹同然の人物を殺してしまうところだった。
今後は気をつけねば。
「なるほど、じゃあ尚の事、ティリアさんはうちに来てもらわないとな」
「ナツキ様!ありがとうございます!よかったですねティリア!」
「はい!ありがとうございますナツキ様、いえ、ご主人様!」
そういって頭を下げた後、ティリアとエルは抱き合って喜んでいた。
「さぁて、いつまでもここに居るわけにもいかないし、さっさと盗賊共を捕らえて街に戻るぞ」
なんだかんだで、結構この場に留まってしまっていたが、まだ依頼を達成したわけでは無い。
アジトに潜入してからと言うもの、かれこれ1時間が経つ。
未だに盗賊に出会う事も無ければ、見回りの姿も見えないのが不思議だが、難無く先に進めるので良しとしよう。
今の俺達なら、盗賊共相手では、大抵の事には対処出来る自信がある。
エルとティリアはゆっくりと互いの事について話したいだろうが、それは後で時間が出来てからにしてもらうとしよう。
今はまず、女の子に非道な事をした奴らにそれなりの罰を与える事が、俺にとっての最優先事項なのだから!
「ねぇミール、ここに居る盗賊達、生きて街に連れて帰れると思う?」
「だ、大丈夫、じゃないでしょうか?多分…きっと…」
「ヌシ様、アレ絶対に恐ろしい事考えてそうですものねぇ」
サラ、ミール、ディーの3人が盗賊達の命の危機を感じている中、俺は盗賊達を如何に苦しめながら捕らえるかと思案しつつ、アジトの奥へと進み始めた。
次回 第122話 2体目