第108話 憂さ晴らしに...こうして!こうして!こう!~前編~
話数が108を飛ばして109話になってたのを訂正しました。
ギルドから出ると、先程まで話していた二人組が慌てて話題を変更したのを聞きながら、街の南にある門へと向かい歩き始めた。
そして門前へと着くと、門番にギルドカードを見せ通行の許可を取り、西の森を目指して皆でおしゃべりしながら歩いて行く。
もちろん、道中ずっと俺は探知スキルで周囲を警戒中である。
そんな状態を保ちつつも、皆で他愛無い話しをしながら歩き始める事約30分、道中でモンスターに襲われる事も無いまま俺達は森の入り口へと辿り着く。
「ヌシ様、この先少し入った辺りに目的のオークが居るようですよ」
ここに来るまでの間、ずっとエルの頭上に居たはずのディーが俺の肩までやってきて、目前に広がる森の方へと視線を向けたまま知らせてくれる。
確かに俺の探知スキルの方にも300m程先の位置にモンスターの反応がある。
きっとこの反応がオークなのだろう。
「よし、それじゃ先頭は俺、次にミリーでその後ろがエル。
ミリーとエルの右側はミールで、左側はノアが付いて、二人の後ろはシアが付いてやってくれ」
並大抵の事では俺達は何ともないだろうが、念には念を入れてのミリーとエルの二人を囲う様にした陣形を取り、俺達は森の中へと足を進める。
周囲を警戒しつつ、生い茂る草木を掻い潜りながらも歩くこと数分。
最初にオークの姿を捉えたのは左側を担当していたノアだった。
「主様、左前方の方にオーク2匹です!」
相手に気付かれぬよう、声のボリュームを落としながら敵を発見した方を指さし知らせてくれる。
俺達は、ノアの指さす先を見て、オークの姿を捉えた。
モンスターとの距離は約150mといったところ。
そこには同じ種類のモンスターが2匹、俺達に背を向けるようにして立いる。
後ろ姿ではあるが、身長約160㎝程、肌は緑色っぽい感じをしており、腰に茶色い布を巻いており、二匹共が手には鉄製だと思われる剣を持ている。
どうやらこちらにはまだ気づいていない様だ。
とりあえず俺は皆にしゃがむように小声で指示を出しておき、俺も体制を低くしようとしたのだが、その前にオークを完全解析スキルでそのステータスを確認する。
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オーク
LV 8
HP 101
MP 13
STR 63
VIT 60
AGI 42
INT 16
DEX 21
LUK 8
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Dランクの討伐依頼にしては多少強めな敵の様だが、俺達にとってはただの雑魚だ。
とは言っても、ミリーとエルのレベルを上げて、基本ステータスを上げるには十分すぎるモンスターである。
「ミリー、エル、まずは二人同時に魔法を使ってあの2匹を倒すんだ」
「「はい!」」
二人の声量は小さなものだったのだが、やる気の方は十分な様だ。
俺は二人の返事に頷き返し、二人に攻撃魔法の準備を始めさせる。
「それじゃカウント行くぞ、3、2、1、行け!」
「「アイスランス!」」
俺の合図と同時に、二人はその場に立ち上がり、両手を前に向け水の精霊魔法を使った攻撃魔法を放つ。
二人が伸ばした両手の前に現れた、全長1m程の先端が鋭く尖った氷の槍は、ものすごい速度でオークに向け真っすぐに飛んで行く。
例え、その進路を邪魔する木々があろうとも、その速度は全く落ちる事も無く木々を貫いて行くその光景は、明らかにおかしいと流石の俺でも思った。
そんな驚異的な魔法が放たれ、それに気付いた二匹のオークがこちらへと振り向こうとするのだが、身体がこちらに向くよりも早く氷の槍が二匹オークの身体を貫通し、更にその先へと飛んでいく。
あのままどこまで飛んでいくのかは分からないが、その先に冒険者等が居ない事を願っておこう。
「やったねエル!」
「はい!うまく当てることが出来ました!」
初めての戦闘に成功し、喜び合うミリーとエル。
「よくやったね。ただ魔法の威力が大きすぎるようだから、もっと弱めにしような」
とりあえず勝利したことには違いないので、二人の頭を撫でつつ褒め、ついでにという程で注意もしておく。
「はーい」
「き、気を付けます」
俺に注意された二人の表情が、少し申し訳なさそうになってしまったのだが、大事な事なのでしっかりと伝えておかなければならない。
だがそのかわり、二人がちゃんと出来た時には、その分しっかりと褒めるつもりだ。
「よし、それじゃちょっと倒したオークからステータスと素材を取って来るから、皆は周囲を警戒しながら少し待っててくれ」
ミリーとエルが倒した初の獲物の元へと向かうと、そこには先程倒したモンスターが倒れており、漸くその顔をしっかりと見る事が出来た。
俺の予想通り、顔は豚のようなものだった。
つまりオークとは、2足歩行する緑色の肌をした豚が剣を持っているというモンスターの様だ。
いつまでも死体を観察していてもしかたないので、俺はさっさとアブソープを使いオークのステータスを手に入れ、次に分解スキルを使いオークを素材へと分解するのだが、そこには思いもよらない物が残っていた。
「マジでコレが素材?」
2匹のオークが居た場所に残ったのは、なんと腰に着けていたあの茶色い布が2枚だけだったのだ。
「せめて武器の方が残れよ…」
次回 第109話 憂さ晴らしに...こうして!こうして!こう!~後編~
少し体調が悪いので、今回はここまでを前編として投稿し、明日は夜早めに寝て、明後日から続きを書き始めます。
後半の方は多分短いものになってしまいますが、その分早く投稿できるよう頑張ります。