第9話 報酬と使い道
戦いは終わり、ハスマや動けるようになったパーティーの人達を連れ、ゴブリンの集落の入り口まで戻ると空は夕日で染まり始めていた。
撤退していた他の参加パーティーを見つけ、合流しようと歩いていると、無事に戻ってきた俺達にコーラルのパーティーが気づき駆け寄ってきた。
「ハスマ様、それにナツキ達も無事でしたか!!」
「ああ、ナツキ達が来てくれたおかげで助かったわい」
ハスマの一言にコーラル達は頭を傾けた。
それもそのはず、戦っていた相手はゴブリンジェネラルで、そこに俺達二人が増えたところで普通なら助かるはずがないのだから。
「えと、つまりナツキ達が来たおかげで何らかの逃げる手段が取れたと・・・そういうことでしょうか?」
「いや、ゴブリンジェネラルはナツキが一人で倒した、ワシ等はそのおかげで生きておる」
ハスマの言葉を皆が一度は疑ったのだが、ハスマと一緒に戦っていたパーティーが同じ証言をした事で、皆が更に驚く事となった。
兎にも角にも、これにて此度の討伐依頼は終わりとなり、馬車のある場所で野営をする事となり、その晩はちょっとした酒盛りが行われていた。
っていうか、皆お酒もってきてるのかよ・・・
ひとしきり騒いだ後は、撤退していた人達が交代で見張り役をし、夜が明けた。
そして次の日
朝日が昇るころにハスマの号令で目覚め、出発の準備を済ませ町へ向けて移動を始めた、帰りの馬車でもコーラルパーティーと一緒だったため、やれステータスを見せてくれだとか、どうやったらそんなに強くなれるのかとか聞かれたが、そんなに仲のといえる相手でもない訳で、答えるつもりはない
なので、「すみませんが、お話しすることが出来んません」と言ったところ、「そうか・・・」とあっさりと諦めてくれた。
こうやってすぐに分かってもらえた事は好感が持てるが、やはり教えたくはない。
昨夜の騒ぎであまり眠れていなかった事もあり、少し眠りたいといって、俺は眠りにつこうと目を瞑る、そのせいか今度はミールが彼らの話し相手となってしまった。
彼らの話は、俺の事はどうだとか、どういう扱いされてるのだとか色々聞かれていたみたいだ
すまんミール・・・彼らの相手を頼む、そう思いながら意識が薄れて行くのを感じ、眠りへついた。
町へ到着したのは午前9時を少し過ぎた頃になっていた、町に着いたとミールに起こしてもらい、参加者の皆とギルドへと集まりハスマから、今回の参加のお礼と各パーティーへの報酬が渡されていく。
いよいよ俺達のもらう番が着たと思ったら、明日の朝もう一度ギルドへ着てく良いれと、そして報酬はその時に渡すと言われた。
素材の引き取りと、今回の報酬の見直しなどの事もあり、少し時間がかかるらしい。
そういう事なら仕方ない、俺達以外の残りのパーティへ報酬の授与がされると、これにて解散!とハスマさんが締め括り、それぞれがギルドを出て行く。
「んじゃミール、俺達も一旦宿に戻って、今日はのんびりお休みにしよう」
「はい♪」
二人で宿へ戻るとアロンさんが出迎えてくれた。
無事に戻った事を伝えると、まるで息子が帰ってきたかのように喜んでくれたのが少し嬉しかった。
野営などをしたので、身体を早く拭いてサッパリしたいのでお湯をもらい部屋へと戻る。
本当ならお風呂に入り、マッサージなどしてもらってから眠りたいところだが、無い物ねだりは出来ない。
いつも通り先に身体を拭いてもらい、その後ミールの身体も丁寧に拭き終えると二人は裸のまま布団に抱き合いながら倒れこむ。
そりゃ可愛い子の身体を拭く作業してたらこうなっちゃうよね!
ゆっくりとミールの頭を撫で始め、次に可愛いらしい犬のような耳を撫でる、するとくすぐったいが気持ちもいいらしく顔を擦り付けてくる。
抱きしめる体勢になっているので可愛らしい胸をいじるのは無理なので諦め、ならばと尻尾をかるく握るような感じで撫でてく。
どうやら尻尾の付け根のほうがより感度が良いらしい事を発見、ならばと次はしごいてみる。
これを重点的に続けるとミールが顔を赤くしながら上目遣いで物欲しげな顔をした。
そこから軽いキスをし、ディープなキスへと続き、唇を放すと二人の間に唾液の糸が出来ていた。
すでにミールの身体は受け入れの準備が出来ているらしく、愛情とお互いの存在を確かめるように二人は身体を重ね合う。
ミールさん・・・疲れているはずなのにちょっと激しかったですよ?
行為に体力の残り全てを使い切った二人は倒れるように眠りについた。
目が覚めた頃には空は夕暮れに染まり始めていた。
今更ながら、今朝サンドイッチを食べてから何も食べてないせいで空腹が襲い掛かるが、あと2時間ほどで夜の食事が出来るはずなので我慢我慢
「なぁミール、食事まで時間があるし、ちょっと気晴らしに散歩にいかないか?」
「はいご一緒します♪」
二人で町へと出かけると、どこか町の人々の視線を感じる気がする、一体何なのだろうか?
とりあえず気にしないようにし、二人は特に目的も無くぶらぶら歩いていると商業区にあるアクセサリーショップで足が止まる。
ミールが店の入り口にあるガラスケースに入った、小さな緑の宝石をあしらったブレスレットに魅入っていた。
ミールも女の子だ、やはりこういうアクセサリーとか好きなのかな?
値段を見ると1000コルと書かれている、今の手持ちで十分買ってやることが出来る額だ、所持金にはまだ多少の余裕があるし、今回のゴブリンの集落での討伐の報酬もあした貰える事になってる。
まぁそれがどれくらいの額なのか分からないが、少なくとも1000コル以上はあると信じている。
だって他の参加していた高ランクパーティーですらゴブリンを討伐するだけなのに4000コル貰ってたらしいからね。
なんで人の貰った額を知っているかというと、興味本位で解析スキルでみちゃったからです。
「そのブレスレットが気に入ったの?確かにミールには似合いそうだね。」
「あ、いえ、このような高価な物私には・・・」
自分は奴隷の身、このような高い物を身に付ける事など、ましてや装備としてのアクセサリならまだしも、オシャレのためのアクセサリーなど身に着ける事など絶対に無いと考えているのだろう。
「・・・」
「あ、あのナツキ様そろそろ宿に戻りましょう?食事の時間です」
確かに空はすでに暗くなっている、だがそんな事よりも目の前にいるこの子の喜ぶ顔が見たい気持ちでいっぱいなのだ
「おいでミール。」
「えっ、あの、ナツキ様!?」
ミールの手を引き店に入ると、店員にガラスケースのブレスレットをくれと伝え1000コルの支払いを済ませる。
「ほら、左腕をだして」
「そんな!私などにこのような高価な物を頂くわけには!」
「でも、もう買っちゃったし、どうせならこれを付けてオシャレをしたミールを見たいな」
うわ、自分で言っておいてなんだが、めちゃくちゃ恥ずかしい!俺こんなキャラだっけ!?しかも店員が見てる前でなんて!って、店員さん気を使って奥にいっちゃったよ・・・
「で、でも・・・」
「ほら、じゃないとコレ使い道が無いから捨てなきゃならなくなるんだよ?そんな無駄遣いを俺にさせちゃうのかい?」
「そ、そんな・・・ナツキ様卑怯です・・・ですが、ありがとうございます、私の一生の宝物にしますね。」
ちょっと拗ねたような表情をしてたが、ブレスレットを受け取ったミールは笑顔で涙を浮かべている、多少強引だがこうでもしないと貰ってくれない気がするしいいよね。
買ったばかりのブレスレットをミールの左手つけると、自分の左腕を胸元で抱きかかえ、ついには嬉しさのあまり泣き出してしまった。
俺はそんなミールが落ち着くまで抱きしめて頭を撫で続けた。
「グスッ、ありがとうございます・・・もう、大丈夫です。」
ミールはニッコリといい笑顔を向けてくれる、こんな可愛い子に慕ってもらえるのは最高だね!
落ち着くとお腹が空いたのを思い出し、俺のお腹がぐ~っと鳴ってしまった。
「さぁ、急いで宿に戻ってご飯にしましょう♪」
「ああ、そうだねお腹が空きすぎたよ。」
宿に戻ると、受付にいたアロンさんが食事の準備が出来ているから部屋にもって来てくれると言うので部屋へと戻るとすぐに食事が運び込まれてきた。
今日のメニューはボアの肉で作られたステーキと玉ねぎスープ、そしてスパゲティだった、無事に帰ってきたお祝いにとロークが腕によりをかけて作ってくれたらしい、すごく美味かった。
満腹になったところで、自分とミールのステータスのチェックを始める。
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ナツキ 男 20歳
LV 31
HP 4552/4552
MP 1363/1363
STR 3142
VIT 2913
AGI 2526
INT 2096
DEX 1458
LUK 964
スキル
ステータス&スキル隠蔽
アブソープ
完全解析
融合と分解
言語マスター
テイムマスター
癒しの加護
創造
方向感覚マスター
探知マスター
時空魔法 LV5
火属性魔法LV 1
両手剣LV3
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(うん、もうそこらへんのモンスター程度だと負ける気がしないな・・・といっても数で押されたらさすがに無理かもしれないから油断は出来ないけど・・・
さて、俺はいいんだがミールの方はどうなってんだろ、一緒に戦ってる間に結構な数のゴブリンを倒してたから、2か3くらいは上がってるといいんだが)
そしてミールのステータスを見ていると、2や3レベル上がるどころではなかった。
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ミール 人狼族♀
奴隷
主人 ナツキ
LV 31
HP 310
MP 93
STR 301
VIT 215
AGI 308
DEX 217
INT 170
LUK 124
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(あ、やっぱりミールのレベルも同じ31まで上がってる、ってことはパーティー内は経験値が公平に入るって事で間違いないな)
ステータスチェックを終え、ふとミールを見るとまだ左腕につけたブレスレットをみながらニコニコしていた。
そして尻尾が大きく揺れている。
それほど喜んでもらえると、こちらもプレゼントした甲斐があるってもんだ。
そんなミールを見ながらニヤニヤしてるとミールと目が合う
「ナツキ様、こんな良い物を本当にありがとうございました。」
「うん、こちらも大事にして貰えて嬉しいよ。」
「はい、これからも誠心誠意、ナツキ様の為に尽くしますね♪」
「ああ、期待してるよ、さぁ今日はもう寝ようか」
いつものように、ミールを抱きしめながら布団に入り、今日はおやすみのキスまでで眠りへとついた。
翌朝目を覚ますと、先に起きていたミールから朝の挨拶とおはようのキスをして、今日も一日が始まった。
顔を洗い、朝食を済ませ、昨日は出来なかったミールの髪のセットを行う。
この行為は俺にとってとても大事な儀式でもあるのだ。
さて、今日のミールの髪型をどうするかと少々悩んだ結果、今日はポニーテールに決定、サクッと整え、シュシュで縛る
うむ、我ながらいい出来だと満足出来たところで、二人はギルドへと向かう。
ギルドに向かう途中もやはり町の人の視線が気になったが、ギルドにつくとその原因がハッキリした。
受付のコロンがこちらを見つけると受付から飛び出し、俺の前に飛びつくように向かってきた。
「今回の討伐でゴブリンジェネラルを一人で、しかも一撃で倒したってほんとかにゃ!?」
コロンさんの言葉遣いがまた「にゃ」になってますよ~
そんな、にゃ言葉になったコロンの質問に「ええ、まぁたしかに倒しましたが・・・」と答えるとギルドの中で聞き耳をたてていた人達が「やはり噂は本当だったのか」などと言っている。
そしてコロンは開いた口がふさがらないという表現がピッタリな表情で固まっていた。
このままでは話も出来ないので、とりあえずコロンさんの頬を優しくぺしぺしと叩き、現実に呼び戻す。
報酬を受け取りに来た事を告げると、奥のギルドマスターの部屋へと通された。
ギルドマスターの部屋は、奥に大きな社長用みたいな机と椅子、部屋の中央にはテーブルを挟むようにソファーが置いてあり、奥のギルドマスター専用の机の後ろの壁には幾つもの表彰されたときに受け取ったバッジや表彰状が額に入って掛けられていた。
「おお、ナツキか、さぁさぁそんな所に突っ立ってないで取りあえず座りなさい。」
「はい、失礼します。」
自分の椅子に座っていたハスマが立ち上がり、俺はソファーへと腰かけるが、ミールは俺の後ろい控えていた。
それを見たハスマはミールにも座るように進め、俺もミールを隣に呼び寄せると、「失礼します」と言い、俺の横へと座る
「さて、それじゃ先に今回の報酬だ」
そういって一枚の封筒を取り出した、受け取って中を見ると白金貨が1枚入っていた。
つまり100万コルだ・・・
「えっ!?こんなに貰っていいのですか!?」
「ああ、今回ナツキが倒したゴブリンジェネラルは、本来Aランクのパーティーが5組ほどで戦うほどの相手だ。
もしあのまま全滅してしまった場合、いずれ奴らはこの町を襲う、そうなるとさすがにこの国もただではすまん、だがそれをお前さんはたった一人で倒しよったのだ、つまりこの町を救ったという意味でもある、それと、奴から剥ぎ取った素材の分を足した分だ、だからコレは正当な報酬ということになる。
そしてさらに!今日よりナツキ達のパーティーのランクはBランクに昇格させる事にした。本来ならAランク扱いしたいところじゃが、Aランクになるには国に申請して、その後に昇格試験を受けなければならないからワシ個人の権限では無理なんでな。」
「なるほど、分かりました。それならこの報酬はありがたく頂きます。」
「ああ、それでなにかいい武器も買うといい、あの戦いで折れていたじゃろ?せめて自分の能力にあった武器を・・・と思ったがお前さんほどの強さに合う武器があるかどうか分からんがのぉ、はっはっは」
「たしかにそろそろいい武器が欲しいところだったので、この後にでも武具屋の方にも足を運ぶとします」
「うむ、これで以上じゃ、わしもこの後色々忙しくなるわい。
ああ、それと後でコロンのところにでもいってギルドランク変更の手続きをして貰え」
「分かりました、では俺達もこれで失礼します。」
ギルドマスターの部屋を出て、コロンの元でギルドランク変更手続きをしてもらうい礼をいってギルドを出ると、二人で噴水の縁に座る。
「予想以上の報酬がもらえてしまったわけだが・・・ミールちょっと相談事がなんだけど・・・」
「なんでしょうか?」
「あの戦いの途中で火属性の魔法のスキルを手に入れたんだが、魔法の使い方とかが分からないんだよ、そこで戦力アップの意味もこめて新しい仲間として魔法の使える奴隷を増やして、使い方も教わろうかと思うんだがどうだろうか?」
「確かに私では魔法についてはお教えする事が出来ません、ですのでその案はとてもよろしいかと思います・・・・」
そういうがどこかミールに不安そうな雰囲気を感じる。
新しい奴隷を買うとしてそれが女だった場合の事を考えてるのだろうか?
「えと、新しい奴隷は予定通り女の人を買うつもりだ」
そこまで言った後、ミールの耳元で囁く
「だけど、それが可愛い女の子でも俺はミールを一番可愛がるつもりだ」
「あ、ありがとうございます・・・」
そう答えるミールは顔を赤くして俯いているが尻尾が揺れているし、多分安心させる事は出来たと思う。多分だけどね・・・
こうして二人は奴隷商へと向かった。
次回 第10話 ノアとシア
今日の投稿は9話目で終わりの予定です、また明日10話目を予定としております。
また、誤字脱字、その他にも感想や指摘などあればコメントください。




