表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/25

地震

 勝四郎さんは、一時機嫌がよかったものの、また悪くなっていた。


「達也、最後のは反則だ。そんな化け物みたいな剣使ったから勝てたんだぞ」

 戦闘からの帰り道、同じようなセリフをもう五回は聞いた気がする。


「分かってますよ。普通の刀だったら、絶対にあんなに簡単に勝てなかった」

 これも五回ぐらい、言った。


「まったく……『常磐井(ときわい)』家の家宝を借りてるなんて……反則だ」

「もう、兄貴、聞き飽きたよ。それも達也さんの人柄。実力のうちじゃない」

 (かえで)はかばってくれる。


「なんだと、てめえ、どっちの味方だっ」

「んっ……と、ちょっとだけ達也」

「なっ……裏切りやがったなっ!」

「そうじゃなくて、達也はまだ素人なのよ。贔屓(ひいき)したっていいじゃない」

「ばかやろう、『犬神』を一撃で倒す奴が素人のわけ無いだろうっ!」

 ……いえ、剣が「チート」なだけで、ずぶの素人ですけど。


 なお、今回の戦いで(あるいは、最後の『犬神』を倒す前に)階級が一つ上がっていた。


  達也 職業 : 忍者

     階級 :  2

     生命力: 80/80 → 100/100

     妖力 : 50/50 → 30 / 60

     俊敏 : 95 → 100

     筋力 : 80 →  85

     器用 : 60 →  60


妖力の現在の値が減っているのは、戦闘中に妖術を使ったからだ。

基本能力は『器用』以外は全てアップしていた。


技能段位は

投擲:三 → 四

太刀:三 → 四 

弓 :一

軽業:五

ということで、『投擲』と『太刀』がアップしている。


特殊技能は変わらず。

妖術:火炎、雷撃

鑑定、変り身、遁術


それからしばらく、勝四郎さんは黙り込んでいたが、真面目な顔で急に別の話を始めた。


「……しかし、正直なところ、相当面倒なことになったな。犬神が三頭つるんでいたなんて……しかも一頭は首領格。いや、だからこそ配下を従えていたのか……」


「それって、そんなに珍しいことなんですか?」

「ああ、少なくとも『強妖』が、昼間っから複数同時に出没するなんて、この『阿東藩』では今までほとんどなかった」


「へえ……じゃあ、ほかの地域ならあったっていうことですか?」

「そりゃあ、『恐山』や『地獄谷』なんかは妖魔の巣窟だからな」


「恐山……なるほど、この世界では妖魔が出現する場所なんですね……でも、そもそも、なぜこの阿東藩に妖怪が出没するようになったんですか? ずっと昔から、とか?」


「いいや……てめえ、本当に何も知らないんだな……まあいい、かいつまんで教えてやる」

 こうして、城下町まで歩く時間、勝四郎さんがこの地方における『妖魔』の伝承について語ってくれた。


「そもそも、この阿東藩には『妖魔』はほとんど出現しなかった……まあ、何百年も前は別だが。ところが、七年前に起きた大地震の後、『阿東川』の上流で、妖魔が度々目撃されるようになったんだ」

「……大地震?」


「ああ、突き上げるような激しい縦揺れだった。俺も楓も、当時からこの『阿東藩』に住んでいたから実際に経験している」


「……大変だったんですね」


「ああ、何件かつぶれた家もあったからな。津波が来なかったのは幸いだったが。そしてその地震以降、阿東川の上流で、『妖魔』が出現するようになっちまったんだ」


「妖魔……そもそも、妖魔はどうして、どういうところに出るんですか?」

「どういう、って言われると難しいが……まあ、『瘴気』ってやつが多い場所に出現するらしい。こいつを感じられるのは、神官や巫女だけだが」


 ……うーん、聖職者の特殊能力みたいなものかな。


「さっきちょっと言いかけたが、『何百年も前』は妖魔がいたのは確かだ。それを上流の山岳地帯に封じ込めた、とされるのが『常磐井(ときわい)家』の先祖だ。だから退魔用の『妖術』を代々伝え、実際に実力もすげえ。てめえが持っているような『家宝』も大切に伝えてきたんだろう」


 なるほど、『常磐井家』はそんな昔からの名門だったんだな。


「まあ、地震がきっかけで封印が解けてしまったのかもしれねえが……これで生活に直撃を受けたのが、阿東川上流部に住む『木こり』達だ。あちこちで妖魔が出現するから、仕事にならない」


「……それで、その人達はどうしたんですか?」

「ああ、実は『妖魔』を倒したときに現れる『魔石』が売れると知って、『木こり』達は斧を武器にして、見つけた怪物達を片っ端から倒し始めた。

「『木こり』が……すごい……」 


「ところが、妖魔共は倒しても倒しても、また現れてきやがる。木こりたちは『きりがない』と嘆いていた。ただ、幸いな事に『阿東藩』では『瘴気』が薄く、しかし広範囲に広がっていた。その結果、『低級の妖魔』が大量に出没する、初心者~中級者向けの絶好の『退魔』地点だという噂が諸国に広まって……それで街が発展するきっかけになったんだ。そして七年で寂れていた城下町が一気に整備され、今に至る、というわけだ」


「へえ……じゃあ、妖魔は『やっかいもの』でもあるし、『町を発展させたきっかけ』でもあるわけなんですね」


「その通りだ……そこで問題なのが、今回の一件で、まあ簡単に言えば『妖魔が強くなっている』ってことだ。瘴気が濃くなっているのかもしれねえ。このままじゃあ、『阿東藩』全体が『恐山』みたいになりかねねえな」

 なるほど、そう言われると一大事のように聞こえる。いや、実際そうなのだ。


「とりあえず、徳の高い神官か巫女さんに、阿東川上流の瘴気を見てもらわないといけねぇな……」


 徳の高い神官か巫女さん――。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ