巫女捜索隊
それから約三十分後、『疲労回復』の妖術でなんとか体力は回復したが、精神的な疲労はまだ相当のものだった。
だからといって、街中の人々が妖魔に襲われているのを見過ごすわけにはいかない。
意を決して、街の門番に対して、援護に来た人間であることを告げ、門を開けてもらって中に入ったのだが……街中の妖魔は、ほとんど倒されたか、逃げた後だった。
城内へ侵入した妖魔も皆無。
明炎大社の宮司代理などの活躍によるらしいのだが……それでも、被害は甚大だった。
十二人もの巫女が、誘拐されたというのだから……。
また、この戦いで俺は階級が3に上がっていることを認識した。
そして数時間が過ぎ、夕方になった頃、ようやく百人からなる妖魔討伐隊の本隊が帰ってきた。
茜も楓も、俺と明、ヤエが無事であることを真っ先に見つけてほっとしていたが、さすがに巫女が誘拐された件に関しては表情が凍り付いた。
その夜は、妖魔が再度襲撃してくることを懸念して警戒態勢は継続し、さらに状況把握と今後の対策について、明炎大社内の会議室で緊急討論が行われた。
参加者は、城の役人が三人、俺と明、茜を含む討伐隊メンバーが七人、そして明炎大社から宮司代理を含む関係者が五人の、計十五人という結構な大人数だ。
まず被害状況などの報告があり、死者こそ出ていないものの、負傷者多数、そして巫女十二名の行方不明という、相当な大事件と認識された。
また、今回の妖魔襲来の目的が巫女の誘拐だったこと、その巫女の一部が操られ、味方であるはずの俺に攻撃を仕掛けてきたことも大きな関心事となった。
さらに深刻な事態も発生した。
大妖である『獄炎龍』すら操った、麻利の存在だ。
これには明も相当驚いていたし、
「本当にややこしいことになった」
と語った。
今までは『人間』対『妖魔』という比較的単純な図式が成り立っていたのに、麻利のような『妖魔を操る存在』が出現したのだ。
「あるいは、『神』が絡んでいるのか……」
ぼそりとつぶやいた明の言葉が、忘れられなかった。
とりあえず、神官や退魔師組合を中心とした『巫女捜索隊』が編成されることとなり、俺や明、茜、楓、勝四郎さんも(志願して)メンバーとなったが、全くどこを探していいか分からない中で、翌日になっても出発することすらできない状況だった。
また、『洗脳』されてしまい、その後正気に戻ったヤエは、明炎大社内で事情聴取を受け、茜も、楓も「可哀想だ」と言っていたのだが、夕方になって解放された彼女はニコニコしており、
「でも、そのおかげで達也さんと恋人になれたので……」
と爆弾発言をしてしまい、俺としても否定するわけにもいかず……楓は
「こんな幼い子を彼女にするなんて、どういうことっ!」
と怒り出すし、ヤエは
「いえ、達也さんは操られていた私を何とか助けようと、ついそう言ってしまっただけでしょうし……でも、私、もう十四歳ですし……」
となんとかフォローしようとしてくれたものの、
「でもまさか、口づけまでしてくれるなんて……」
と赤くなりながら口を滑らせてしまい……以来、楓と俺との間でピリピリとした空気になってしまったのだった。
さらに二日後、怪しげな文が、巨大なコウモリによって明炎大社に運ばれてきた。
「巫女を返して欲しければ、阿東川上流に存在する、既に廃坑となった阿東鉱山まで、神の名代である海部達也一人で来い」という内容だった。
差出人は、堂々と『麻利』と記入してある。
これが本物ならば……やはり麻利は、『獄炎龍』に食いつかれたぐらいでは死ななかった、という事になる。
また、こうなってくるとさすがに宮司代理である茜の兄、常磐井 光宗さんも、半信半疑だった『神の名代』の存在を信じざるをえない状況となった。
そしてなぜか指名されてしまった俺だが……もちろん、罠と分かっていても逃げ出すわけにはいかない。
とはいっても、さすがにたった一人で行くのはあまりに無謀だ。
俺は信頼できる仲間と共に、巫女達の救出作戦を、相手の出方のパターンに分けて立てていくことにした。
達也 職業 : 忍者
階級 : 3
生命力: 100/100 → 135/135
妖力 : 60/60 → 80 / 80
俊敏 : 100 → 112
筋力 : 85 → 93
器用 : 60 → 64
技能項目
投擲:四
太刀:四 → 五
弓 :一
軽業:五 → 六
特殊技能:
妖術:火炎、雷撃
鑑定、変り身、遁術
装備:緋炎ノ剣 攻撃力:70
その他武器、防具:棒手裏剣、クナイ、籠手、すね当て
護符:茜の護符(仮称):妖力保持




