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ヴァーバルの剱  作者: 真川塁
第一話 始まる物語(フェアリーテイル)
2/27

学園の噂話と美少女の告白

 フェアリーテイル学園。


 レイナード達が通うのは「オズ」と呼ばれる機体の操縦や整備の学習を専門に扱う私立校だ。

 ゲルマンシュバルトが誇るオズの二大メーカー、「ボーム社」と「グリム社」が統合してできたフェアリーテイル社は、世界シェア4割、E.A.Uに限ればシェア8割を誇る世界最大のオズメーカーである。

 そのフェアリーテイル社がゲルマンシュバルト軍の協力の下設立したこの学校には、世界で活躍するオズの操縦者ハンドラー整備士スティブラーを目指す若者が多く集まってきている。


 オズとは何か。

 知らない人間に簡単に説明するならば人が乗れるサイズのロボットということでいいだろう。

 人型機動二輪『Ornamental Zwei Rader』――「OZR」や先述した「オズ」の略称で呼ばれる兵器だった。

 兵器。

 そう。いまでこそ専門の学校が出来、また「特殊二輪」に分類されるオズだが元々の分類は兵器だった。


 『人型機動兵器』

 わずか九年前までこの鉄の人形はそう呼ばれていた。

 市街地や森林地帯などの入りくんだ地形での戦闘をよりスピーディに、より効率的に行うために開発されたロボット。

 それこそがオズの正体だ。


 しかし、いまではその「兵器」としての使用は殆ど行われていない。

 なぜか。

 兵器としての能力があまりに低すぎるためか?

 そうではない。

 逆だ。

 兵器としての能力が高すぎるために投入すべき戦場が限られているのだ。そのため、先の地中海戦争のような大規模な戦闘でもない限り使用すべき舞台がない。


 それからしばらくは災害地での人命救助や他国に対する抑止力としてしか活躍の機会がなかった。

 そんな中、新たな活躍の場として設けられたのが見世物としてのオズである。

 ゲルマン軍のオズによる模擬戦闘を見たとある金持ちが推奨したとされるオズを使用したスポーツが誕生した。


「バジーレ」と呼ばれるこのスポーツは内容的には軍の行う戦闘訓練との違いは殆どない。

 基本的には小隊同士の戦闘にスポーツとしていくつかのルールが追加させられただけのものであったが、ロボット同士の戦闘というのはどうにも観衆を熱狂させるようで、設立からわずか二年ほどでプロリーグが結成され、その熱気は未だに冷めることがない。

 現在では先進国を中心に多くの国と地域でプロリーグが開催されており、技術大国と呼ばれるような国はこぞってオズの研究開発に力をいれている。

 その中でも最も高いリーグレベルと関係職員の育成に力を入れているのが此処、ゲルマンシュバルトだろう。


 オズの開発者――オズワルド・スタンリー博士の母国でもあるゲルマンシュバルトはオズ発祥の地ということもあり、世界一位の経済大国アメリア合衆国さえも凌ぐほどの技術力と高い教育水準を誇っている。

 その代表格がフェアリーテイル社であり、フェアリーテイル学園である。

 

 フェアリーテイル学園は騎乗科と整備科の二つの学科クラスからなっている。

 それぞれの生徒数は騎乗科が各学年150名、整備科が各学年200名程度となっており、若干整備科の方が募集人数は多い。

 騎乗科はハンドラーを、整備科はスティブラーを育てる学科である。

 ハンドラーはオズの操縦士パイロット、スティブラーはオズの整備士メカニックを指す。

 他にも設計やその他関連職員を目指す生徒もいるが、大勢がこの二つの職種を目指す者達である。

 レイナード達四人は整備科に属している一年生だ。

 そのため、今日も機体の整備をする日々である。


「隣のクラスのヤツも見たってよ……夜な夜な現れる幽霊スティブラー」

「いいなー、私も見てみたい」

「ぼ、僕は遠慮しときたいなー」

「……幽霊って道具に触れるのかな?」


 ……どうやら彼らの日常は機体の整備ばかりをするわけではないようだ。

 授業中であるにもかかわらず今は噂話に花を咲かしているようである。

 ちなみに幽霊の話を持ち出したのがジョルナン、羨ましがっているのがアイナ、顔を青ざめているのがマルフリーで、そもそもの疑問を口にしているのがレイナードである。こうした世間話からも彼らの性格は見てとれる。


 現在彼らのクラスはオリエンテーションの授業中で「オズの新たなる可能性」をテーマに班ごとにディスカッションをするという内容だったが、授業時間も三分の四が過ぎたところでほとんどの班がただの雑談へとなりさがっていた。その辺りはまだまだ学生といったところか。

 レイナード達の班は今、学園の噂話――いわゆる七不思議について談義していた。

 忽然と人が消える魔の廊下、中を見たものは死んでしまうという開かずの扉、夜な夜な現れる幽霊スティブラー、どこからともなく聞こえる謎の駆動音などなど。普通の学校と同じようなものからオズの専門校らしいものまでいろいろとあるようだ。


 ひとしきり七不思議についての話題を終えた一行が一息ついている時に、ジョルナンがふと思い出したかのように新しい噂話を持ち出した。


「そういや、聞いたか。今年の一年にどっかの王族が紛れ込んでるってハナシ」

「王族? 親戚筋じゃなくて?」

「あぁ、噂じゃそういう話みたいだな」


 フランクローズやゲルマンシュバルト、グレートブリテン連合など貴族制度が残っている国の大公爵家などになると王家と血のつながりがあることはさほど珍しくもない。そしてそういった家からの入学もまた、珍しい話ではない。

 しかし、現役の王家の人間となると話は別だ。そんな世間的にも話題になりそうなニュースが校内だけでまことしやかに囁かれているというのも怪しいものだ。


「なんかうさんくさい話ねー」


 声に出してそう言ったのはアイナだが、他の三人の顔もその言葉を肯定するようなものばかりだった。話題を提供したジョルナンでさえ眉唾物だと思っているようだ。

 そんな話ばかりを滔々と議題に挙げているとふとマルフリーが素朴な疑問を口にした。


「……というか、この学校って創立からまだ5年目だよね? その割に噂話とか妙に多いよね」


 オズが誕生してからまだ三十年ほどである。スポーツとして転用されるようになったのはココ8年ほどの出来事だ。この学園も元々の母体として軍のオズを取り扱う訓練所があったが学校になったのはつい5年前――去年やっと二期生が卒業し、一昨年卒業した一期生が最近になって数人が活躍し始めたくらいである。

 確かにそんな新設校に七不思議など、それこそが不思議ではある。


「まぁ、元は軍の施設だったっていうしその頃のなごりなのかも。それにどこの学校も七不思議っていつできたのかわかったもんじゃないからなぁ。他の学校も設立当時からあったのかもしれないし」


 レイナードは持ち得る情報からそれらしい答えを導きだす。こういった持ち得る情報から予測を立てるのはレイナードの得意分野でもある。勿論、それが常に正しいわけではないが。

 そんなレイナードの予測が遠からずと全員得心がいったのか、この話題はこれにて終了。はてさて、ではそろそろ本題に戻るのかとも思われたが、しかし一度脱線した会話はまだ収束する見込みはなく、噂話はまだまだ終わらない。


「学校に限らなきゃ黒い噂も結構多いよな、オズ関係の噂って。発案者の謎の失踪とか子供を使った秘密の人体実験とか」

FTフェアリーテイル社以外だとセントクロスの堕天シリーズとかA.I modeの拠点移動の件なんかもあるわよね」


 興味をひかれた様子のアイナがいの一番で話に乗っかった。

 アイナの言葉に出てきたセントクロス、A.I modeとは共に外国に拠点を置くオズメーカーである。セントクロスはアメリア合衆国、A.I modeはルーシア連邦に本社があり、ここゲルマンシュバルトに居を構えるFT社を含めて三大オズメーカーなどとも呼ばれる。まぁ、それも三大美女や三大料理などに見られるように国や地域によっては多少メンツを変えていたりもするのだが、少なくとも通説ではその三社ということになっている。

 そんな憧れのメーカーの話とあってはアイナのみならず一同の興味を惹かない通りはない。

 様々な憶測や議論が飛び交うのだろうかと予測されていたこの話題だが、


「オズの歴史が戦争の歴史みたいな側面はあるからね。情報戦の一環でそういうのがあったんじゃないかな?」


 ただ、一人先ほどと同じようにレイナードが端的にその理由らしき答えを口上した。

しかし、レイナードの表情はどういうわけか微妙に固い。だが誰もその表情の固さには気づくことなく、つまらない答えばかりを提示するレイナードの現実的な部分をジョルナンは批難する。


「夢がねーな、お前はよぉ」


 ジョルナンのみならずアイナやマルフリーの目にも少なくない落胆の色が見え隠れする。なんとなく、バツの悪い思いだ。


「いや、お前のいう噂って全部、夢っていうか悪夢の類だからな? 実際にあったらヤバいことばかりだろ。……まぁ噂話もいいけどさ、もっと夢のある話題にしないか?」


 話題の転換を図りたいレイナードはそう提案した。


「なんだよ?」

「そうだな……例えば『一度は乗ってみたい機体』とか?」

「やっぱ『八大戦姫』っしょ!」


 適当に口走ったレイナードの言葉に被せるようにノリノリで話しだしたのは意外にもジョルナンだった。


「戦“姫”っていうのがちょっとばかり気になるがやっぱり戦争の英雄ってのはカッコウいいしな! なにより強そうだ」


 鼻息荒く力説する友人を片目にアイナが薄ら笑う。


「単純ねぇ」

「んだよ! じゃあお前はなんなんだよ」


 ジョルナンの質問にふふん、と胸を張り得意気に返答する。


「そんなの決まってるじゃない! アリスよ!」

「なんだよ、お前だって結局戦姫じゃねぇか」

「アンタの理由なんてどうせカッコイイとか有名だからとかそんなんでしょ? 私とじゃ天と地ほどもまるっきり違うのよ。あのフォルム、あの形状……そしてあの機能! アリスシリーズ全ての根幹にして骨格をなす機体よ? 単純な兵器としての価値だけでなくもはや芸術学的な価値も計り知れないわ。あぁ、一度でいいから触れてみたい分解バラしてみたい改造イジってみたい!」

「いや、芸術品分解バラしちゃダメでしょ」


 その両目は確かに夢を語る少女特有のキラキラした光を湛えていたが同時にマッドサイエンティストのようなギラギラとした執念をも宿していた。

 正直言って、怖かった。

 それが男子三名の共通の認識だ。


「……けど、それで僕らの班の整備実習にはメアリが使われているんだね」


 今さらながら、そのことに気がつかされマルフリーが成程、と呟く。

 “整備実習”とは騎乗科の実習で損傷した機体の整備や実戦では既に使われなくなった機体を使い整備を学ぶ実習のことだ。

 その実習で彼らが使うのが通常、騎乗科の実習で使われる“ブルーダー”しかし、それだけでは物足りないとアイナがコネクションを最大限発揮して持ってきたのが“メアリ”である。

 “メアリ”とはアリスの直接的な後継機であり、実戦投入前の試作機を除けば現存する機体の中でもかなりの古株である。

 それゆえ、整備手法などにおいても違う点が様々見られ、学園で主に扱っている実習機“ブルーダー”と比べるとどうしても時間がかかるし面倒臭い。しかし、アイナにいわせればむしろそれは好都合らしく、


「古い機体を使って綺麗にしてあげたほうが整備士冥利に尽きるってもんでしょ?」


 と、綺麗な瞳で嘯くばかりである。


「まぁ、俺はほとんど操縦オンリーだからいいけどよ……マルは大丈夫か?」

「僕はアイナやレイの手伝いだからそんなに辛くはないよ。僕よりもレイの心配をしてあげないと」

「オレもジョルナンの動きにあわせたシステム調整と外部の修復がメインだから、パーツの切り替えやらシステム面での調整をするアイナほどじゃないし。まぁ、一番大変な本人が大丈夫そうならいいんじゃないかな?」


 このような実習は通常5人~7人ほどでやるのが普通だが、彼らは4人という少数で行っている。

 あぶれた4人というわけでもない。彼ら――というかアイナは科内でも有数の整備知識と技術をもっているし引く手数多だった。それに及ばずともレイナードもそこそこ成績は良い方だし、ジョルナンやマルフリーも人当たりの良さはそれなりなので声がかからないということはなかった。

 しかし、アイナの「ファーストシーズンのチューンナップ」という言葉に魅力を感じる人間はレイナードくらいだった。


 さきほど言った通り、古い機体の修理というのはそれだけ時間と手間がかかる。最近のちょっと損傷した機体を修理するだけで点数の貰える授業の一環で、わざわざ自ら難易度を上げようと思う生徒はいなかった。

 そんな彼らについてきたのはマルフリーとジョルナンだけだった。彼らにしてみたって「この2人がいるならばなんとかなるだろう」程度の考えだ。


「にしても、レイはよくやる気になったよな」

「面白そうだったし、メアリみたいなファーストシーズンの機体に触れる機会なんてそうないし勉強になるかなって」

「そうよね! レイならわかってくれると思った!」 


 その大きな瞳に抑えきれぬ輝きを、口元には小さい唇が引き裂けんばかりの笑みを湛えている。自分と波長の合う人間というのはやはり有り難いものなのだ。


「ねぇレイ、やっぱり私と付き合わない?」

「うん、それは遠慮する」


 突然の告白に動揺するようなこともなく、そげなく返答するレイナード。

 あまりにもそっけないのでジョルナンもマルフリーも驚く暇もなかったくらいだ。

対岸の火事を覗くかのような味気なさを見せるレイナードだがそこは多感なお年頃、恋愛に対して全く興味がないわけというではない。


 しかし相手がアイナとなると話は別だ。

 多分な行動力とオズ技術に代表される知性を兼ね備え、さらには魅力的な容姿を持ち快活で男女分け隔てなく接するもはや非の打ちどころのないように見える整備科有数の才女アイナ・エーヴァルドに淡い恋心を抱く生徒というのは少なくない。

 そして、青春真っ盛り中のアイナ本人も全く恋愛に興味がないというわけでもなく、それどころか極端なコトを言えば来る者拒まずというスタンスの少女だった。

 自分のことを好きになってくれたのだから、というそれだけの理由で名前すら知らない生徒と付き合ったりもする。玉砕覚悟で告白をした生徒達は二つ返事でオッケーを貰えるので眼を丸くするとかしないとか。


 生徒達、と評したようにアイナは一人の男性と長く続かない。

 その理由はただ一つ。


「え~、一緒にオズ博物館行こうよ、オズ展示会行こうよ、軍の演習とイメージビデオ観ようよ~」


 そう、今までの言動からも予想できたかも知れないがアイナ・デーヴァルトは重度のオズマニアなのだ。

 倍率五倍の整備科に対し、その更に四倍――倍率二十倍を誇る騎乗科にさえ合格できるほどの成績を残しながらも将来の夢が整備士である彼女は騎乗科を受けることなく整備科一本でこの学園の入試を受けて、そして当たり前のようにこの整備科に入学した。


 そんな彼女が日々考えることの大半はオズ関連のことである。となると付き合うにはまずオズについての造形を深めなくてはいけないのだ。

 同じくオズの専門校の生徒ならばそれもラクだろう、と考えるのはちょっと早計というものだ。

 彼女の知識は学生レベルではない。

 デートプランといえば、バジーレ(オズ同士の戦闘スポーツ)を見に行くなんてのはまだいいほうで、博物館や中古品市、授業で流すようなオズのDVDを延々見させられた彼氏は色気もへったくれもないデートになかばノイローゼ気味になりながら自ら告白した割に早々と別れをきりだすのだという。

 その噂を聞き付けたオズ知識自慢の猛者インテリたちがこぞって挑戦したらしいが、それでも彼女の生活に合わせるのは難しく、持って二週間程だという。


 そういう情報とそして普段の立ち振る舞いを見ていると、レイナードお得意の推論をたてずともどうにも付き合う気にはならない。

 そういうとアイナは口をすぼめた。


「なによー、前にデートした時はいい感じだったのにー」

「えっ!? なになに、お前らそういう関係だったの? 初耳なんだけど!」


 衝撃の発言に野次馬根性丸出しのジョルナンが目を輝かせている。こういったゴシップが好きなのは何も女性ばかりではないのだ。言葉にしないがマルフリーの瞳にも好奇心が宿っている。

 2人とも美少女アイナに彼氏がいると言われて、嫉妬や悔しいといった反応をまるっきり見せない辺り、彼女がどう思われているかわかるだろう。

 そんな2人の発言に苦笑しつつ、


「この間、アイナのお父さんの職場に連れてってもらった時のことだよ。話したろ?」

「ああそのことか。なんだ、つまんね」


 一瞬で興味が失せるジョルナン。

 アイナの父親テュゲター・エーヴァルドは整備士としてフェアリーテイル社に勤めているため、その伝手で工場に見学にいかせてもらったという、早い話が工場見学だ。


 学園の校外学習でも行くことはあるが、その際は製造工程ラインなどもガラス越しにしか見せて貰えない。そんな普通ならばまず入ることができないような場所にもアイナ父の役職と耽溺する娘への愛情が不可能を可能とするらしかった。

 そんな場所を見られる機会なんてそうそうないので、アイナに誘われた時に二つ返事でOKした。

 元々は当時の彼氏と行く予定だったらしいが、その直前に例の如く逃げられたので一人分パスが余ったらしい。その彼氏とやらも勿体ないことをするなとレイナードは思ったがおかげで貴重な体験をすることが出来たので感謝しておくことにした。


「パパもレイのことは結構気に入ってたよー」

「……そうかなぁ、なんか殺されかけない勢いだったけど。まぁ、アイナがそういうならそうなのかな?」


 彼氏がくると聞かされていたアイナ父から勘違いされ、射殺すような視線とか凶器になりそうな工具とかを向けられたのもいまとなってはいい思い出だ。

 誤解が解け、オズについての意見交換などをしているうちに確かに話は弾んだように思う。その時に少しは認めてくれたということなのだろうか。


「まぁ、またお話ししてみたいけどね」


 あの時間は本当に貴重な体験となった。入場不可能な工場内を直に見学できたことは言うに及ばないが、しかしそれ以上に有益だったのはアイナ父との意見交換という名のレクチャーだった。流石というかやはりというかフェアリーテイル社の整備士ともなると知識の質も量も半端でなく、何気ない会話の中にも眼から鱗な情報がいくつもあった。


「じゃあ、また行こうよ! 今度は私の彼氏として」

「うーん、あんな濃いオズ談義を毎週とか毎日のペースでさせられるのはちょっとムリかな」


 工場見学中は勿論のこと工場見学を終えた後に二時間以上喫茶店でオズについての話を聞かされた時は同じくオズへの関心が高いレイナードであっても軽く辟易させられた。やはり濃いトークというのはたまにするくらいがちょうどいい。


「……うー、そっかぁ」


 珍しくしおらしくなるアイナ。そんないつもとは違う儚げな印象に一瞬、ドキッとさせられたが、まぁ本気でそういう意味・・・・・・での好意を持たれているわけでもないだろうとレイナード。

 あまり大事にならないように軽く言う。


「まぁ、また彼氏としてじゃなく友達として連れてってよ。それならおじさんに命をとられる心配もないし」


 それならば大歓迎だとレイナードは笑った。





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