彼と彼女の小噺
短いです。
アニメでいうCパートを意識しました。
読まなくてもストーリーに支障はありません。
レイナードとナターシャが広場にいた頃、クラウディアとゼアドールは喫茶店にいた。
チームメンバーがそろったことと祝勝会を兼ねたささやかなお祝いだった。
二人は寮生ではなくゼアドールの家が所有する屋敷にて生活している。
そういった事実もまた二人の関係が色恋沙汰と絡められる要素なのだが、当の本人達はあまり気にしていない。
只、そういった噂は気にならずとも流石に人目は気になるのか、この間のブリーティングルームのようにクラウディアの後ろでゼアドールが直立して周囲に睨みを効かせるということもなく、向かい合って着席している。
クラウディアは少し味の薄い紅茶をすすり、表情を険しくしてカップを置く。
「まさか、デリンガーさんの方からあんな提案をしてくるとは思わなかったわね」
クラウディアがこうなったきっかけを思い出す。
彼女がナターシャを勧誘しに行った時に最初の内こそ気の進まない様子だったが、この後整備科にいる生徒を誘うつもりだと言った時に異様に食いついてきた。そして、その生徒の名を明かすと、自分の方から彼も入るなら入ると言ったのだ。
「俺はその場面を見てないのでなんとも云えないが」
「なんか凄い形相だったわ」
しかも、彼は普通に持ちかけただけじゃ絶対に首を縦に振らないと言って、色々と提案してくる始末である。
「意外と彼女も搦め手が上手いのよね」
いっそ、彼女に作戦を立てて貰おうかしら。クラウディアがそう漏らすのを学年二位は冷ややかな表情で見送り、運ばれてきたばかりの湯気のたつエスプレッソを一息で飲み干す。
その仕草がどうにも刺々しい。
「なによ、まだ不服なの?」
「……別に、そういうわけではないが」
「やっぱり、不服そうじゃない」
ゼアドールは今回の作戦に最後までいい顔をしなかった。
新人戦に出るにもメンバーが足りないという今の状況でなければ最後まで反対していただろう。
「ちゃんと戦ってみたかったというだけだ。こうしてチームメイトになった以上、本気で戦う機会もそう無いだろしな」
表情には出ていないが彼は彼なりに今回の対戦を楽しみにしていたのだ。
レイナードの立てた作戦内容はクラウディア経由で聞いている。
「旗は後回し。実力差のある相手に数の力で押し切る……面白い作戦だ。是非、試してみたかった」
まぁ、と一拍置いて彼は言う。
「たかだか四対一で勝負になるかという点を除けば、だがな」
「……私のことはとやかく言うくせにアンタも随分自信家よね」
「俺のは『自信』じゃない『事実』だ。お前の湧いて出たようなの根拠のない妄言とは違う」
その言葉に思わず紅茶をぶっかけてやろうかとも思ったが、一応淑女たる彼女は必死に自制した。
「多少腕が立とうとも整備科生が三名だ。デリンガークラスが四人ならまだ可能性はあったがな」
「うぅ……言ってることは完全にナルシストなのに、あながちウソでもないから強く言えない……」
静かに、淡々とそう述べるゼアドール。
「そうなると気になるのはやはりその時にデリンガーが言ったという台詞だな。俺のことは伝えてあったんだろ?」
その言葉の指すフレーズを想起したクラウディアもそれは疑問だと議題にあげる。
「ええ、でもそれなら解決していると思うのだけど。ああやって『機略に富んだ戦術家だから』ってことでしょう? 何かの隠喩ってワケでもなさそうだし」
「俺は全く逆の想像をしていたんだけどな」
「逆?」
「言葉通りの意味だと期待していた」
その言葉にまさか、とてんで相手にする気のないクラウディア。
戦いにおいてはあらゆる可能性を捨てない彼女でもただの世間話でまで馬鹿馬鹿しい話を信じてはいられない。そうやってなんでもかんでも受け入れていたらすぐに頭がパンクしてしまう。
「それはないでしょ? 彼女の言葉、ちゃんと覚えてるの?」
もう一度、喉を潤してから彼女は面白がるようにその台詞を口にした。
「『普通にやったらわたし達じゃきっとレーくんには敵わない』って、幼馴染を信頼するのは結構だけど、ちょっと大言壮語よね」
「…………」
一蹴するクラウディアに、しかしゼアドールは素直に同調することはできなかった。
前話に含んでも良かったのですが、読まなくても大丈夫な部分でしたのでボーナストラック的な扱いにしてみました。
これにて二話が終了です。
三話は短めな予定なので、もしかしたらもうちょっとは早めにあげられるかも……っ!




