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本日の商品『ノンアルコール日本酒風』

まったく酒でも飲まなきゃやってられねーぜ。

エルアルド・アーチは遺跡の壁を見ながらぼやいた。。


キシギディル大陸のモタマチムイ遺跡国最大遺跡のシレルフィールの城塞都市はシレルフィール遺跡管理組合が管理している。

エルアルド・アーチはそのシレルフィール遺跡管理組合の主任だ。

貴重な遺跡が汚されたり、破壊されたり発掘品の盗難が無いように日々見回っているのである。


シレルフィールに俺様参上ってなんだよ。

エルアルドがため息をついた。

貴重な遺跡の壁に黒黒とのこる文字跡……心無い観光客が残した落書きである。


考古学者や冒険者(いせきたんさくにん)たちは遺跡の貴重さがわかってるので遺跡を傷つけることはありえないのであるが一部の心ない観光客のせいで頭を悩ませている毎日なのだ。


はあ……酒飲みたいけどなぁ……先生がなぁ

ストレス発散に飲酒をしたくてもエルアルドはとある事情から遺跡の飲み屋で酒の提供はしてもらえないのであった。


「あ、主任どこに行くんですか?」

「ちょっとな。」

仕事の後エルアルドは大急ぎで遺跡の外にでた。

あそこならきっときっと酒が買える。


足早に歩くエルアルドのまえに小さな店舗が見えてきた。


下着から携帯食料、雑貨、謎のグッズまで揃えたあの店……当然酒類も扱っている万屋明正屋である。


カランカランと入り口の鈴がなって勢い良く扉が開いた。


「店主さん、日本酒あるか!? 利根の香春がいいかな。」

まさに必死の様相である。


酒は命の水とばかりである。


「エルアルドさん、先生にしかられますよ。」

店主が苦笑した。


オーノー……ここまで俺の酒禁止令が浸透してるなんて……エルアルドは絶望した。


実はエルアルド、酒の飲み過ぎで肝臓を悪くしておりシレルフィール遺跡の中で唯一の医者フィテア・バーガワから禁酒指示が出ているのである。


ほとんどみんな顔見知りで指示が徹底されているのはこの愛すべき酒好き親父の事を皆心配している証拠だろう。


本人は有難迷惑だろうが……

店主はこの間フティア本人に聞いたばかりである。


「冷たいこといいっこなしだよ、店長。」

諦めきれないエルアルドが店長を拝んだ。

「…やめられないんですか?」

店主が困った顔をした。

「わかっちゃいるけどやめられないってね。」

エルアルドは笑った。


ストレス解消法は酒とエルアルドは思っている。

それにわざわざ、禁酒令もあるが明正屋まで買いに来るのは日本酒が気に入ったからだ。

この世界にも米の酒はあるが飲んだ瞬間こんな繊細で芳醇な酒があるのかと感動が走った。


それ以来、明正屋まで買いに走ってるのである。


この辺ではここでしか日本酒は買えないからだ。


「じゃ、これでどうですか?」

店主が日本酒みたいな瓶をだした。

「売ってくれるのか?」

エルアルドは言って見るものだなと笑った。

「試飲をどうぞ。」

店主がカップに日本酒?を注いだ。


繊細で芳醇な味が口一杯広がる。

自分の理想とする日本酒の味だ。


「うまい!」

エルアルドはおもわず叫んだ。


「気に入りましたか?」

店主は微笑んだ。

「何て言う銘柄だ?」

エルアルドは買う気満々で聞いた。

「こちらです。」

店主が瓶をてにもって見やすく傾けた。


『理想の日本酒★あなたの思い通りの味がします、美味しいノンアルコールで禁酒しましょう。』


リラックス成分いりなのだそうだ。


「…店長、日本酒擬きじゃねぇか。」

エルアルドは半眼で恨みがましい声をだした。

「エルアルドさん、美味しかったですよね?」

それにもたじろがず店主がニッコリとした。


確かに今までで最高に旨かったとエルアルドは思った。

でも、酒じゃないしな……でもな……エルアルドは考え込んだ。


でもやっぱり酒が飲みたいのである。


「エルアルドさんの事、お父さんみたいに思ってるんです、死んじゃったら嫌です。」

店主が殺し文句を言った。


ちなみに店主の父親は異世界の明正和次元の日本で今日も元気に働いている。


「大袈裟な…せめて兄ちゃんにしといてくれよ。」

エルアルドはにやつきついた。

若い女性に言われて嬉しかったようだ。

「すみません……でも。」

店主はさらに言って目をうるませた。

よく見ると手元の紙をチラチラ見ながら喋ってるようだ。

「じゃあ、その酒擬き一本。」

エルアルドは上機嫌だ。

若い女性に心配されてよほど嬉しかったらしい。

「ありがとうございます。」

店主は言って新たな商品カウンターから出してを包みだした。


「エルアルド主任! 大変です! 北側城塞遺跡で貴重な遺物に落書きが! 」

部下のキャリサ・ダータンスが飛び込んできた。

「なに?すぐいく!」

エルアルドはキリッとした表情で対応した。

こういう責任感のある所がエルアルドの愛される理由の一つであろう。

「エルアルドさん! 頑張って下さい! 」

店主は包みを渡した。

「おー! 悪いな! また来る!」

エルアルドは包みを受け取ってキャリサと走り出した。


遺跡を荒らす不心得者がいるかぎりエルアルド・アーチのストレスがつのる日々は終わらない。


でも肝臓は大切にしてもらいたいものである。


本日の商品

理想の日本酒

★あなたの思い通りの味がします、

美味しいノンアルコールで禁酒しましょう。

水本酒造

リラックス成分いり。

お酒がやめられないお父さんを説得する台詞集付き。

本商品はお酒ではありません。

飲み過ぎるとお腹がゆるくなることがあります。

ご購入ありがとうございました。

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