幕間 グーレラーシャのサーペント来襲
ここにいるんですよね。
アルティウス・グーレラーシャは遺跡を見上げた。
キシギディル大陸のモタマチムイ遺跡国最大の遺跡、シレルフィールの城塞都市のすぐそばに万屋明正屋がある。
金の長い髪をミツアミにした水色の瞳の超美形男が店に入っていった。
「快黎・グーレラーシャの居場所を教えてください!」
美形男は掴みかからんばかりの勢いでカウンターに押し寄せてきた。
「カイリ・グーレラーシャ?……ああ、考古学者の先生ですね、私に言われても困ります。」
店主は戸惑った顔をした。
当たり前である考古学者や冒険者は一箇所にとどまらないので店主がしるどうりはないのである。
「万屋明正屋によくくると聞いています。」
美形男は確信をもって力説した。
一体彼は何者なのであろうか? 姿形はグーレラーシャ人の武人のようであるが……
「店主、小型魔晶石をくれ。」
ヘリウス・ジエルギスがやって来た。
モミモミわんこマッサージャーの餌をかいにきたようだ。
胸のポケットにモミモミわんこを入れてあるのが見えた。
しばらくほてほてとカウンターに近づいたヘリウスは後ろに飛び退いた。
「………わーー!なんで殿下が!」
ヘリウスは慌てた。
「あなた、グーレラーシャ人らしいですね、快黎・グーレラーシャの現在の居場所を知りませんか?」
殿下?がヘリウスの方へつかつかと近づいて言った。
「し、知りません。」
ヘリウスはますます後ずさった。
「ヘリウスさん、こちらの方は?」
店主が不思議そうな顔をした。
「グーレラーシャ傭兵国の女王陛下の弟君のアルティウス・グーレラーシャ殿下、人よんでグーレラーシャのサーペントだ。」
ますます後ずさったヘリウスが叫んだ。
自国の王族などみるのは普通映像ぐらいのものだろう。
「逃げなくてもいいんですよ、私は妻の居場所が知りたいだけなんです。」
アルティウス殿下がニッコリとどこか黒い微笑みを浮かべた。
店主とヘリウスは固まった。カイリ・グーレラーシャがアルティウス殿下の妻? ……あの遺跡大好き過ぎて遺跡に住んでる考古学者の先生が?! 二人は顔を見合わせた。
グーレラーシャのサーペントそのサーペント(毒を持つ大蛇あるいは水蛇)の呼び名の通り狡猾な戦闘スタイルで知られる武人である。
一番それが発揮されたのは、愛妻への求婚の時だったそうだ。
ちなみに現在も外交等王族の仕事をしているため王族扱いなのである。
「店長さん!こんにちは♪天濫製菓の新作入荷しましたか?」
デリア・ミーミアが嬉しそうに扉を開けた。
カランカランと入り口に下げた鈴がなった。
「…デリア・ミーミア嬢?」
アルティウス殿下が確かめるように聞いた。
「あーん、誰ですか?カッコいい♪」
デリアはのんきに頬に手を当てた。
「すごいな、デリア。」
ヘリウスは関心したようにつぶやいた。
「ええ、真似できません。」
店主も驚いたようにつぶやいた。
「ミーミア嬢、快黎はどこにいますか?」
アルティウス殿下がずいっとデリアに近づいた。
「えー?先生ですか?東城塞遺跡あたりにいますけど、どこいるかわかりません。」
やーん、近づいても素敵といいながらデリアは答えた。
デリアはその先生の元から買い食いにきたはずなのであるが?
「おい、だいたいでいいから教えて差し上げてくれ。」
ヘリウスがふたたび被害が来ないように口添えした。
「ええ?私説明できませんよ、このひっくりコガエル君をつかうんで。」
方向音痴なデリアは青い小さい蛙のバッジを出した。
「それはなんですか?」
アルティウス殿下が好奇心にかられてのぞき込んだ。
「えーと、店長さんお願いします。」
デリアは分からないやと店主に丸投げした。
「これはひっくりコガエル君と言うものです、ひっくりオヤガエルと言う親機を先生がおもちでして、そちらの場所に行けるようになってます、ひっくり親子ガエルと言う商品名で親子セットで売られてます。」
店主がパンフレットを出して説明した。
「では、おっていきますので。」
アルティウス殿下が微笑んだ。
足には自信があるようだ。
グーレラーシャ人は総じて傭兵なので大体身体能力は高いのである。
「スッゴーい早いんですよー。」
デリアが両手をあげた。
そう、直ぐにカエル君Dほどではないがひっくり親子ガエル君も高速移動が基本である。
「……通信してみます。」
アルティウス殿下が通信機をだした。
さり気なくカバーが家族写真と言うのが涙を誘う。
最初からやれと言う話である。
「快黎、アルティウスです。」
アルティウス殿下が呼び出しで出できた相手に甘く微笑んだ。
『あ、アルティウス、久しぶり。』
快黎・グーレラーシャはさっぱりしたもんである。
この夫婦温度差が有りすぎる。
「今、シレルフィール遺跡の前まで来てるんですが、会いに行きます、どこにいるんです?」
アルティウスが更に甘く微笑んだ。
『ええ?いいよ、私忙しいしさ。』
快黎は迷惑そうだ。
「愛黎がお母様に会いたいと言ってます。」
アルティウス殿下が通信機の画面上に金の髪と赤みがかった青い目の可愛い女の子(ちび幼児)をうつした……録画らしい。
『おかあしゃま早くきゃえってきてくだしゃい。』
女の子が可愛く小首を傾げた。
『……デリアちゃんじゃ案内できないよね。』
さすがの快黎も娘の姿にぐっときたようである。
「無理です、先生。」
デリアはのんきにお菓子を物色中だ。
『わかった、しょうがない、一旦出るよ。』
快黎は深いため息をついた。
さすがの遺跡狂も可愛い子供には勝てないようだ。
考古学者、快黎・グーレラーシャはしばらくシレルフィールの城塞都市遺跡を離れるのかもしれない。
「ありがとうございました。」
アルティウス殿下が頭を下げた。
「めっそうもないです。」
店主が頭を下げた。
「お役にたてず申し訳ございません。」
ヘリウスがグーレラーシャの武人らしい礼をした。
いつもの腰をさすっている彼と大違いである。
やはり、自国の王族は別格らしい。
グーレラーシャのサーペントは満面の微笑みを浮かべた。
してやったりと言うところだろうか?
ファモウラ軍国での先の大戦では知略の武人と呼ばれた男はまだまだ健在のようである。
本日の商品
『ひっくり親子ガエル』
親子機一匹ずついり。
トトキクリエイト
子機は別売のものを設定で10匹まで増やせます。
改造はなさらないようにご使用ください。