本日の商品『まったり軽食セット』
今日も忙しかったわね。
フティア・バーガワはため息をついた。
「まったり軽食セットおまちどうさまです。」
店主が軽食が乗ったトレーを外のテーブルに置いた。
キシギディル大陸のモタマチムイ遺跡国最大の遺跡シレルフィールの城塞都市のすぐ近くに一軒の店がある、万屋明正屋だ。
明正屋では軽食もとれるようになっていてオヤジから女の子まで利用している。
「美味しそうね。」
フティア医師はうっとりした。
おにぎり2個と漬物、味噌汁と緑茶セットのようだ。
ああ、お腹すいたお昼はこれよねとつぶやくフティアの向こうは日がだいぶ落ちかけている。
フティア・バーガワはシレルフィールの城塞都市遺跡の中で診療所を開いている唯一の医師だ。
唯一の医師となれば自分の専門分野ばかりしているわけにいかない。
怪我の処置から風邪薬の処方まで
彼女の細腕にかかってくるのである。
今日も縫合手術に時間をつかい今ごろ昼御飯なのだ。
「ああ、おにぎり久しぶり♪」
フィテア医師がしみじみと嬉しそうに言った。
「先生はお米が主食何ですか?」
店主は小首を傾げた。
じつはまったり軽食セットはあんまり出ないメニューなのだ。
どちらかと言うとサワヤカ軽食セットや(サンドイッチ レタスとハム、タマゴと海苔 コンソメ味のスープ、飲み物つき)カータシキ風煮込みセット(カレーライス、ミニサラダ 飲み物つき)のほうがよくでる。
この辺は粉食文化圏なのである。
「ええ、そうなのよ。エナカのほうの出身なのよ。」
フティアは懐かしそうな顔をした。
国を出て何年たったろうか……あの人は元気かしらとときたま感傷に浸る独身美人医師なのである。
おにぎりがあるのをこの間の買い出しの時に見つけて次は食べると決めていたのだ。
エナカ聖霊国の元本国はムリュフ精霊国で昔は流刑地となっていた政治犯といういわゆる失脚したインテリも多く頭がいい人たちの子孫なのでインテリがおおいのが特徴である。
エナカもムリュフも米食文化圏で日本とにてるのである。
「美味しい!店長さんくらい料理が上手なら、男性にモテモテよね。」
おにぎりを食べながらフティア医師がはしゃいだ。
店主が一瞬固まった。
「……実はそれ、私が作ったんじゃありません。」
店主が沈痛な面持ちで告白した。
店主は作ってないようだ。
誰が作っているのであろう? 店にはキッチンは見当たらない。
「どう言うこと?」
フィテア医師が不思議そうな顔をした。
「実はミアレフーズの軽食セットシリーズの1つなんです。」
店主が店内に入って保存パックを持って来た。
保存パックには『まったり軽食セット ミアレフーズ』と書かれお弁当の用に綺麗にオニギリが並んでいた。
「まあ、買って帰りたいわ。」
フィテア医師が目の色変えた。
「ありがとうございます。」
店長がお辞儀をした。
「店主いるか。」
シレルフィール遺跡管理組合と書かれたマントをきた大柄の中年男性が入ってきた。
「いらっしゃいませ、エルアルドさん。」
店主が愛想笑いを浮かべた。
「……先生、今頃飯か? 」
シレルフィール遺跡管理組合員エルアルド・アーチが腕組みした。
「縫合手術があったのよ、ほっておいて。」
フィテア医師がお茶をのみながら横を向いた。
「先生も大変だな、男っ気も全然ないしな。」
エルアルドが笑った。
「ほっといてちょうだい、あなたこそ肝臓の具合はどうなの?」
フィテア医師は味噌汁をのみ干して聞いた。
「う、それを言われると日本酒が買いづらいな。」
エルアルドが苦笑した。
「右側の背中が重苦しいんでしょう?ダメよ、肝臓の数値悪いんだから。」
フィテア医師が鋭い眼差しで睨んだ。
こえーよ先生とエルアルドがぼやいた。
さすがシレルフィール遺跡の全住民の主治医である病状把握は完璧だ。
「お見通しか? わかっちゃいるけど、やめられないんだよなぁ。」
エルアルドが豪快に笑った。
「…あんた死ぬわよ、そのうち。」
フィテア医師はため息をついた。
「ノンアルコールビールとかノンアルコール日本酒風とかあるんで今度取り寄せときます。」
店主は心配そうに言った。
「…いい人だな、店主、よしオッサンが寂しいロンリーハートの二人に今度彼氏を紹介するぜ。」
エルアルドが笑った、余計なお世話である。
意外だが彼は既婚者である。
「…よけいなお世話よ。」
そう言いながらフィテア医師はこんどなにしようと思いながらテイクアウトメニューに目を向けた。
フィテア医師に彼氏ができる日は遠そうだ。
これからも彼女は遺跡の住民?たちの主治医で頑張るのだろう
本日の商品
まったり軽食セット(業務用)
ミアレフーズ
おにぎり3個いりもございます。
大量購入は値引きさせていてだきます。
消費期限を守ってご賞味ください。
ご購入ありがとうございます。