本日の商品『万屋☆明正屋』
久しぶりですみません(泣)
最終話ですがこの話の後に登場人物の紹介入れさせていただきます。
キシギディル大陸のモタマチムイ遺跡国最大の遺跡シレルフィールの城塞都市の目の前に小さな店がある。
下着から携帯食料、お取り寄せから人材派遣(守護戦士限定)や異世界万屋の設立の仲介はては謎の商品まで揃っている店舗である。
その名を万屋明正屋という。
「おい、無理するなよ舞。」
店主の夫の冒険者ヘリウス・ジエルキスがクルクル動く店主旧姓天見 舞、現在、舞・ジエルキスを抱きとめて言った。
「ヘリウス、私は大丈夫だから。」
店主はそういいながらカウンターを探った。
確か試供品がとつぶやきながら少しよろめいた。
「おい、普通の身体じゃねぇんだぞ。」
ヘリウスがそういいながらついに店主を抱き上げた。
グーレラーシャ傭兵国人のヘリウスにとっては普通の行為である。
「そうですよ、店主さんは今、大事な身体なんですから。」
お賽銭で買った限定甘党爆弾リンゴ飴をもぎゅもぎゅ食べながらシレルフィール遺跡在住の守護の女神トゥーセリアは幸せそうな笑みを浮かべた。
そう、今、舞は妊娠中なのである。
「大丈夫ですよ、妊娠は病気じゃありませんし、それに適度に動かないと行けませんしね。」
店主はそういいながらいつも脚立に乗ってチェックしている棚の在庫を調べだした。
「舞……少しは休んでくれ。」
人間脚立……いやヘリウスが心配そうに舞の背中を撫でた。
「うん、でも今度実習生も来るし在庫知らねべておかないと。」
店主は端末をチェックしだした。
「舞。」
ヘリウスが店主の首筋を舐めた。
ひゃと可愛い声をあげて店主は顔を上げた。
「無理するんならしばらく店閉めるか? 」
どこか妖しくヘリウスが笑った。
「だ、大丈夫、無理しないから。」
店主はたじろいだ。
店主の負けのようである。
そうか無理するようなら本当にしばらく休んだほうが良いかもなといいながら甘い微笑みを浮かべる筋肉質なグーレラーシャ人……なるべく無理しないと店主は心に誓ったようである。
「ええ、やすまれるのこまりますよ。」
おとなしくお菓子を選んでいた考古学者、デリア・ミーミアが白雪ふんわりえび一千、新春限定紅白梅味を陳列棚から取りながら言った。
すでに買い物籠の中はお菓子でいっぱいである。
「そうですよね。」
菓子友な女神トゥーセリアが今度は超生クリームサブレーを食べながらのんきに同意した。
「……なるべくご不便かけないように頑張ります。」
店主は戸惑いながらも嬉しそうに笑った。
カランカランと入り口の扉が開いた。
大柄な男二人が入ってきた。
まとっているマントにはそれぞれシレルフィール遺跡管理組合と全国遺跡管理組合という文字が入っている。
「店主さん、なんとかしてくれよ。」
シレルフィール遺跡管理組合主任、エルアルド・アーチが叫んだ。
「ど、どうしたんですか? 」
店主は慌ててエルアルドのほうに顔を向けた。
「こいつが俺を本部に呼ぼうとしてるんだぜ。」
エルアルドは隣でやはり明正屋の品揃えは良いなとうなっている全国遺跡管理組合次長アラルシド・ガーチアの頭を小突いた。
「何をするんだ、エルアルド。」
アラルシドが頭を抑えた。
「俺はここで静かに日本酒を飲みながら遺跡管理をしていたいの。」
エルアルドがそういいながら日本酒の陳列棚をチラ見した。
カランカランと音がしてまた、誰か入ってきた。
白衣をひるがえした女性である。
「肝臓の数値は良くなったけどまだやめておいてくださいね、エルアルドさん。」
シレルフィール遺跡で開業中の医師フティア・バーカワである。
「な、なんで先生が来るんだよ。」
エルアルドがたじろいだ。
「キャリサちゃんにきいたのよ、全国遺跡組合にご栄転なんでしょう? 知り合いの医師に紹介状書いておいたからきちんと通院してちょうだいね。」
ニッコリとフティアが封筒を差し出した。
「俺は行かないぜ。」
エルアルドがどっちともつかない返事をした。
「キャリサさんに後を任せて王都へいけ。」
アラルシドが次の主任は彼女だしなと続けた。
その時トゥーセリアの祠を磨いていた遺跡管理組合員キャリサ・ダータンスが盛大にクシャミをしたと後々語った。
「風邪かな? 」
キャリサはハンカチで口を拭いながらつぶやいて今日は明正屋で健康ドリンクを買いに行こうと心に決めたそうである。
まあ、蛇足である。
「紹介状代はこれだけよ。」
勝手に書いたのにフティアは押し売りした。
「ちょ……しょうがねぇな……。」
ブツブツと言いながらエルアルドは財布を出して代金を払った。
「ねぇ、店主さんその新作ののほほんオニギリセットS、10セット下さる? 」
フティアはそのお金で早速買い食いした。
オニギリ大好きなフティアの選択においおいとエルアルドは苦笑した。
「かしこまりました。」
店主が棚から時空保存パックに入ったのほほんセットを出そうとするのを押し留めてヘリウスがこれでいいのかと出した。
過保護甘々ここに極まれりであるが蜜月のグーレラーシャの男としては通常営業である。
「ま、これで安心して王都に行けるな。」
ニコニコとアラルシドがエルアルドの背中を叩いた。
冗談じゃねぇ行くかよとエルアルドが叫んだ。
カランカランとふたたび扉が開いた。
「店主さん!舞扇ありますか? 」
藍色の作務衣風の格好をした長身の女性が飛び込んできた。
守護戦士の五十嵐 葉月が涙目で入ってきた。
「どうした、またなんかやらかしたのか!? 」
ヘリウスが反応した。
「機械停止のヘリウスさん、私、守護ロボット袈裟がけに斬っちゃいました〜。」
葉月は泣きそうだ。
「おい、どうやればあの天鉱合金の守護ロボットを袈裟がけにできるんだよ。」
ヘリウスが目を丸くした。
シレルフィール遺跡を守る守護ロボットは大昔のテクノロジーなのに動きがよく硬いことに定評があるのである。
「普通にバトルファンでないただけですよ。」
一騎当千の守護戦士、葉月はさり気なく視線をそらした。
「……え、えと舞扇ですね、ここにはさすがにおいていないのでカタログ出しますね。」
店主がそう言ってカウンターに手を伸ばすとここかとヘリウスがカウンターを探った。
何が何でも愛しい女性を下ろさないグーレラーシャ男の鑑である。
「葉月さん、本当にお強いんですね。」
トゥーセリアがそう言いながらポリポリと染みハニー、限定オレンジ蜜味を食べた。
「先生と同じ五十嵐家ですよね~……本当に舞扇で大丈夫なんですか?」
デリアが同じく染みハニーを食べながら聞いた。
デリアの先生とは考古学者の快黎・グーレラーシャである。
独立するまでデリアは快黎の元で修行していたのであった。
快黎は戦闘能力は皆無であるが力持ちで五十嵐家最弱の女の異名を持ちながらも天鉱合金で作られたシャベルをよく壊していたのをデリアは思い出したようだ。
「……ハリセンでやろうかな。」
葉月はつぶやいた。
「ハリセンでは流石に無理だろう。」
ヘリウスが突っ込んだ。
「…………とりあえずカタログください。」
葉月はため息をついた。
その後舞扇でも守護ロボットの首を飛ばしてしまい本当にハリセンにしようかとパーティーグッズカタログを見ていた守護戦士がいたそうである。
「こんにちは〜店主さん、注文した着物が届いたって聞いたんだけど。」
カランカランとふたたび扉があいて和装の妖艶な中年女性が入ってきた。
一杯飲み屋『金の女神像』の店主幸花 江田である。
「はい、四季の着物シリーズ新春の華やぎですね。」
店主が棚から着物の入ったたとう紙を出した。
「間に合ってよかったわ、息子がお嫁さん連れてくるのよね。」
ニコニコと幸花はわらった。
「おめでとうごさいます江田さん。」
店主は微笑んだ。
「江田君の母上様ですか、幸太郎君にはいつも頑張ってもらっております。」
アラルシドが愛想笑いをした。
「まあ、幸太郎がいつもお世話になっております。」
幸花が丁寧に頭を下げた。
「幸太郎君は優秀なのでシレルフィール遺跡にエルアルドの代わりに来てもらうことになってるんですよ。」
アラルシドがエルアルドの背中を叩きながらわらった。
「おい、それはどういう……」
「まあ、ありがとうございます。」
エルアルドは慌て幸花が本当に嬉しそうに笑った。
悲喜こもごもである。
エルアルドの全国遺跡管理組合異動は決定的のようである。
さあ、ご馳走つくって着替えて待ってないととウキウキ幸花はかえって行った。
エルアルドもアラルシドに引き継ぎ書作成だなとひきづられていった。
カランカランと入り口が開いた。
「あの、万屋明正屋さんってこちらですか? 」
「ここでいいのよね? 」
シレルフィール遺跡管理組合というマントを着た黒髪の若い男性と冒険者らしい若い女性が手をつないで入ってきた。
「明正屋へようこそいらっしゃいました。」
店主がニッコリ微笑んだ。
筋肉男に抱き上げられてる店主にたじろぎながら二人はカウンターに来た。
「あの、実はこちらで生活必需品を揃えるとお得だと組合でチケットもらいまして……」
組合員がチケットを出した。
「はい、使えますよ、さしあたって何を揃えましょうか。」
店主がそう言いながらヘリウスからおろしてもらいカウンターの定位置についた。
「あの、実は私たち新婚なので夫婦で使えるものをお願いします。」
冒険者の女性がそう言って嬉しそうに男性を見上げた。
「ではこちらでいかがでしょうか?」
いつも通り店主が適切な商品を選んでカウンターに出した。
客たちは店主の説明を聞いて購入することに決めたようである。
本日も万屋明正屋はシレルフィール遺跡の前で営業中である。
本日の商品
万屋☆明正屋
異世界万屋コーポレーション㈱
キシギディル大陸 モタマチムイ遺跡国 シレルフィールの城塞都市遺跡前にて営業中。
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