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本日の商品『万屋』前編

ここがかの有名な万屋明正屋か…。

全国遺跡管理組合次長アラルシド・ガーチアは思った。


キシギディル大陸のモタマチムイ遺跡国最大の遺跡シレルフィールの城塞都市の前には万屋明正屋という店舗がある。


謎の商品から下着携帯食料、人材派遣、お取り寄せまで行う店である。


「おい、本当に頼むのかよ。」

シレルフィール遺跡管理組合主任エルアルド・アーチが言った。

「ああ、遺跡管理組合の未来のためにな。」

アラルシドがかっこよく腕組みした。


背景に稲妻が走るような光景だが実際はのんきに鳥が飛んでいる晴天である。


「行くぞ!」

アラルシドは決意を込めて明正屋の扉を開いた。


「いらっしゃいませ~。」

いつも通り…でなく何故か店主でない若い女性が言った。

「店長さんはいるか?あんたは?」

エルアルドは資料と違う女性に迎えられて固まったアラルシドの代わりに聞いた。

「すみません、天見は異世界万屋コーポレーション本社の研修にいっておりましておりません、私が承っておきましょうか?」

異世界万屋コーポレーション研修生、神宮(ジングウ)菜摘(ナツミ)が愛想笑いを浮かべた。

「だ、そうだ、でなおして来よう、アラルシド。」

エルアルドが言うとアラルシドは何故か素直にうなずいた。


可愛くコクンは親父のするもんじゃないだろうとエルアルドは思った。


「で、いつ頃帰宅予定なんだ?」

エルアルドが聞いた。

「一週間ほどで帰ります。」

菜摘は微笑んだ。


その間異世界万屋を一軒任された菜摘は嬉しくてたまらないのである。

いずれチリアエシという異世界の婚約者の領地で異世界万屋を開く予定の菜摘にとって繁盛店『万屋明正屋』の留守番はまさに棚からぼたもちなのであった。


キシギディル大陸ムタマチムイ遺跡国、最大の遺跡シレルフィールの城塞都市の中にシレルフィール遺跡管理組合の事務所がある。


「つまり、明正屋みたいな万屋を全遺跡に配置すると言うことですか?」

シレルフィール遺跡管理組合員、事務担当ボブエル・カーランドが計画書を見ながら言った。

「ああ、できればだが、最初は何ヵ所かで試してみてだな。」

アラルシドは資料を見ながら言った。


特にいれたいのは辺境地域の遺跡である。

近くにサポートできる町がないために考古学者や冒険者(いせきたんさくにん)が少ないからだ。

盗掘の被害にあっているところもあるほどである。

万屋明正屋のような店があり人が集まればそのような被害も最小限に防げると思われる。

そこからシレルフィール遺跡のように発展していけば万々歳なのである。


「だがよ…みんな明正屋方式でいいのか?場所によってニーズが違うんじゃねぇか?」

エルアルドがシレルフィール遺跡の本日の入場者数を確認する大型通信機の画面を開きながら言った。


蛇足であるが、シレルフィール遺跡に入場時は首から下げられる入場章が配られ退場時には回収するその入場章によりどこにいるのかだいたい把握できるようなシステムとなっているのである…それも明正屋の提案である、他の遺跡よりも安全な観光が提供されている為発展していると言えよう。


考古学者や冒険者(いせきたんさくにん)ももっているがそれはその人物用なのでこちらもいざというとき救出しやすいのである。


「そのシステムも導入したい。」

アラルシドが画面上で動く点を見ながら言った。

「なかなか大変なんだぜ。」

エルアルドは苦笑した。


とくに観光客の入場章の返却について苦労したようである。

返却し忘れはまあ、しかたないとしてもあえて返却しない悪質なケースもあったのだ。

もちろん、それに対して対策を講じて運営しているのであるが、なかなか大変なのである。


「おいおい、やっていくと言う事で良いんじゃありませんか?」

そういいながら『シレルフィール遺跡に行ってきました饅頭』をお茶菓子にとボブエルがテーブルに置いた。

「これもいいな、誰の提案だ?」

アラルシドが饅頭を食べながら言った。


ちなみにお茶が入った保温マグカップには守護の女神トゥーセリアの像の写真とシレルフィール遺跡という文句が飾り文字で書いてある。


「そりゃ…やっぱり店長さんの提案だけどさ…開発はオレの奥さんもかかわってるぜ。」

エルアルドの妻クオリュサ・アーチはモタマチムイ遺跡国の首都モタでカリスマ料理研究家をしているのである。

ちなみにエルアルドは三人の子持ちである。

「まったく…なんだってこんなにすごいことになってるのを黙ってたんだ。」

饅頭をモグモグ食べながらアラルシドは通信機画面に釘付けである。

「普通に入れてただろうが報告はよ。」

エルアルドはそういいながら頭をかいた。

淡々と事実のみ入れたエルアルドの報告書はとても読みやすかったが、ここまでの驚きは現場に来てからであろう。


シレルフィール遺跡組合員にとってそれだけ普通なことであり特別なことと思わなかったのも原因であるが。


「ともかく万屋明正屋をはじめシレルフィール遺跡全体を再検証しなければならないな。」

アラルシドはもうひとつ饅頭を食べながら重々しく言った。


饅頭を食べながら言っても全くしまらない風景である。


「まったく、めんどくさいぜ。」

エルアルドはつぶやいた。


何はともあれ万屋設置は店主が帰って来てからの相談となるようである。


本日の商品


店主不在の為手に入らず。


本日のお茶菓子

シレルフィール遺跡にいってきました饅頭

シレルフィール製菓

シレルフィール遺跡をイメージして作りました。

ハチミツ餡入りです。

10個20個30個いりがございます。


消費期限内にお召し上がりください。


万屋明正屋、土産物シレルフィール、アイルス雑貨店等で取り扱いしております。


ご賞味ありがとうございます。

駄文を読んでいただきありがとうございます♪

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