幕間 正しい遺跡の運営法
全国遺跡管理組合本部か…まったくめんどくせぇ。
シレルフィール遺跡管理組合主任、エルアルド・アーチは思った。
モタマチムイ遺跡国の首都モタの王宮の隣には立派な全国遺跡管理組合の建物がそびえ立っている。
世界で一番遺跡がある国としてのほこりの象徴である意味王宮より大きい、まあ、王宮とつながっているので王宮の一部とも言えるのであるが。
「エルアルドさん、いらっしゃいませ。」
受付嬢のカナタ・オラスアが微笑んだ。
いつもと違い遺跡管理組合員の正装に身を包んだエルアルドは居心地が悪そうである。
「アラルシドはいるか?」
エルアルドが頭をかきながらきいた。
「次長をはじめ皆様おまちでございます。」
カナタがそういいながら通信機のボタンを押した。
「げ、オレ帰ろうかな。」
エルアルドがまわれみぎをしようとしたところで全国遺跡管理組合次長アラルシド・ガーチアが足早にやってきたようである。
「エルアルド、逃げるな、みんな待ってるぞ。」
後ろから逃げようとするエルアルドの首根っこをつかんだ。
「おい、やめろ、やっぱり柄じゃねぇんだよ。」
エルアルドはもがいた。
「みんな、シレルフィール遺跡の営業方法には興味があるようだ、いくぞ。」
アラルシドがそのまま引きずっていった。
遺跡の管理業務で鍛えられているので遺跡管理組合員はだいたいのものが力持ちなのだ。
「ごゆっくり~。」
カナタが手をヒラヒラした。
「ごゆっくりじゃねーよ。」
エルアルドは叫んだ。
大会議場には全国遺跡管理組合員、組合長をはじめたくさんの役職者が集まっていた。
他の遺跡の主任クラスもいるようである。
「さあ、話してもらおうか。」
組合長がニコニコとエルアルドに言った。
「な、何をですか?」
壇上にたたされたエルアルドはたじろいだ。
「もちろん経営方法だ、なぜシレルフィール城塞都市遺跡だけがこんなに発展する?」
組合長が鋭い眼差しで見た。
よくみるとみんなエルアルドに注目している。
どこも遺跡管理には苦労しているのである。
「別に変わったことなんてしてませ…いやしまくってるな。」
エルアルドは考えた。
「そうだな、外部の職人をいれ遺跡の雰囲気を崩さない遺跡修復は参考になった。」
どこかの遺跡管理組合員が言った。
「あとは落書き防止ラッカーとかもこちらでもつかえたわね。」
どこかの女性遺跡管理組合員が呟いた。
「まつりやったろう?あれは集客にいいよな。」
どこかの遺跡管理組合員が感心した表情で腕組みした。
「守護戦士は礼儀ただしくていいよ、一部の不心得ものの冒険者の抑制に役立っている。」
どこかの遺跡管理組合員が微笑んだ。
「差し入れ小袋と回復符いいわ、もっと仕入れたいんだけど?」
どこかの遺跡管理組合員がニコニコしていった。
「シレルフィール遺跡からみんなでたものだ、いったいそのもとはなんなんだ?エルアルド?」
エルアルドの逃亡防止対策で後ろにたったアラルシドが聞いた。
あれはすべて…。
エルアルドは考えた。
「全部、万屋明正屋だ、すべてもとは万屋明正屋が関わっている。」
エルアルドは呟いた。
「そうだ、だから君にたのみたい、万屋明正屋さんにもっと万屋明正屋を増やせないか聞いてくれ」
組合長が微笑んだ。
ほかの遺跡になくてシレルフィール遺跡にあるもの。
それは『万屋明正屋』である。
明正屋があったからといって発展するとは限らないのだがやってみて損はないのである。
つまりみんな万屋明正屋を自分の遺跡に増やしたいのである。
「まあ、きいてみるけどよ…店長さんとヘリウスのやつ蜜月でそろそろ結婚らしいからな、すぐには無理かも知れねーぜ。」
エルアルドが頭をかいた。
「アラルシド、いって交渉してこい。」
組合長がアラルシドを指差して言った。
「わかりました、全国遺跡管理組合のために必ずせいかをあげて見せます。」
アラルシドは拳を突き上げた。
会場が歓声のうずにまきこまれる。
いったいなんの集会という勢いである。
まさになんかのカリスマ降臨と言う感じであろうか?
「おい、ほどほどにしておいてやれよ。」
エルアルドは頭をかいたままいった。
かくして、全国遺跡管理組合は万屋明正屋増殖計画をスタートさせたのである。
うまくいくのであろうか?
やり過ぎないことを祈るばかりである。
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