本日の商品『回復符』
やっちまった!
冒険者ニルザード・デーランは天井を見ながら落ちていった。
キシギディル大陸のモタマチムイ遺跡国の最大の遺跡シレルフィール城塞都市は城塞ゆえに昔の罠が多大に残っていた。
「いてーっ……骨やったかも……」
天井を見上げながらニルザードはぼやいた。
一瞬いきが止まったなと強打した背中に手をやる。
少しまだ息苦しい。
ニルザードは見事?にその罠……落とし穴にはまっていた。
「動けねーな。」
ニルザードはぼやいた。
いつもは身軽なニルザードも動けなければどうにもならない。
足腰が立てばなんとか抜け出られる範囲に穴の縁がみえてるのに今のニルザードには夜空の果てである。
「クッソ〜、誰かーいねーのかよ!」
ニルザードは息切れしながらなんとか叫んだ。
声を出すたびに背中と胸に響く。
しかしその必死の叫びに誰も反応しなかった。
そう、いつもならこの辺をウロウロしてシレルフィール跡管理組合員たちや考古学者、冒険者たちはみんな世紀の大発見の東城塞遺跡に方へ詰めているのであった。
当然そこから来たニルザードにもそれはわかっているのであるが……だれか一人くらい西城塞遺跡を通るんじゃないかと願いを込めたのである。
「まったく、デリアちゃんの頼みなんぞ聞くんじゃなかったぜ。」
実はニルザードが西城塞遺跡にいるのは明正屋の帰りである。
異世界菓子熱が覚めてない考古学生デリア・ミーミアにお菓子の買い出しを頼まれ一刻も早く帰ろうと近道した結果がこれである。
ニルザードさんお願いと両手を合わせて小首をかしげたデリアの可愛いしぐさに鼻の下伸ばしてひきうけたのだから自業自得である。
穴に落ちるまでお礼にキスくらいしてくれるかなとルンルンだったのだから注意力散漫をせめられても文句は言えないだろう。
「オレ、このまま死ぬのかな。」
ニルザードが天井を見ながらうめいた。
巨大遺跡での事故それはすぐ死につながる。
シレルフィール城塞都市遺跡でも年間何人か怪我したり最悪の事態になってしまった人もいる。
まさに注意一瞬怪我一生なのである。
「なんかないかな…。」
手に届く範囲に荷物が落ちていることに気がついてニルザードはなんとか動く手でいつもの荷物に加えてデリアの菓子の入った袋まであさった。
「……これはなんだ?」
デリアの菓子の入った袋の底に緑色の3センチ四方の紙が入っていた。
「ああ、明正屋の店主さんがオマケで回復符いれときますって言ってたな…効くんか?」
頼りない紙を眺めながらニルザードは呟いた。
つかって害はないだろうし使ってみるか……
ニルザードはおもった。
「なになに……えーと」
震える手でパッケージを開けてニルザードは回復符の説明文通り額に貼った。
「……痛みがとれてきた?」
ニルザードは驚いた。
息が楽になってきた。
身体中を覆っていた痛みと重苦しさが少しずつ抜けてきている。
「異世界の技術はんぱね~。」
ニルザードはやっと大きく息を吸った。
ニルザードはしばらくして巡視中のシレルフィール遺跡管理組合員に発見され人を呼び集めて医者に担ぎ込まれた。
「よく、いきてたわね。」
シレルフィール遺跡中の町のようなところで診療している女医フティア・バーガワは診察しながら関心した。
「よく、生きてたって酷いのかよ。」
ニルザードがぼやいた。
「まあ、肋骨骨折と右足骨折、全身打撲よ、治ったあとがあるからもっと酷かったかも知れないわ。」
フティア医師が説明した。
「やっぱり、明正屋恐るべしだな、あの回復符がなければ、オレは…。」
ニルザードは遠い目をした。
死ななくて良かったと……
「ま、応急処置がよかったし、治るわよ。」
フティア医師がニコニコと肩を叩きいてーとニルザードがうめいた。
ニルザードは当分の間、冒険者活動は中止のようだ。
デリアが駆けつけてきた。
涙で潤んでる顔をみてやっぱ可愛いと思いニルザードはにやけた。
「ニルザードさん!ごめんなさい。」
デリアは思いっきりニルザードは抱きついた。
遠慮会釈なしである。
「いてーっ!!」
ニルザードはうめきながら思った……胸があたってる……こんな美味しい事もうないかも知れない。
やっぱデリアちゃん最高……絶対に落とす。
まずは……明正屋で回復符を買い占めて……
ニルザードの頭の中は桃色のようだ。
こりない男である。
本日の商品
『体力回復符』
赤岡製薬
ご使用は一回一枚額に貼付してください。
次のご使用まで8時間あけてください。
アレルギー出現時は直ちにご使用をおやめください。
使用上の注意を守り用法用量を守って正しくお使いください。
おだいじに。