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本日の商品『端末・通信機用地図アプリ』

うーん、広大な遺跡ですな。

神学者キイン・オランは通路で途方にくれていた。


キシギィル大陸、モタマチムイ遺跡国にある最大の遺跡シレルフィールの城塞都市は今日も多種多様の人々を受け入れている。


「えー?トゥーセリア様ですか?」

シレルフィール遺跡管理組合員ラファネイ・ピリカが遺跡の水道管の出っ張りに立って見下ろした。


小人族な彼女は小さいのでよくこう言う細かい水道管管理等の作業に駆り出されるのである。


「神力を計りたいのございますが、逃げられましてな、困っておるのですよ。」

キインが自慢の口ひげを撫でながら言った。

「あー、トゥーセリア様は庶民的ですからそういうの嫌いですよ。」

ラファネイがそういいながら水道管を覗いた。

古い時代の水道管だがまだまだ使えそうである。

「それでは、私の役目が果たせないのですぞ。」

キインは首をひねった。


キインはアキュア聖王国から派遣された神学者である。

地方の低等神だった守護の女神トゥーセリアが最近信仰のためかメキメキ頭角を現して中等神になったようなので明確に見極めるために来たのだ。

おおざっぱな神格は本国アキュア聖王国でも分かるが細かいところは本神(ホンニン)を見極めなければいけないのである。


庶民的なトゥーセリアはそれが嫌で今日も逃げまくっていた。

中等神になればさらに崇め奉られ責任も重くなるからであろうか?


「え?トゥーセリア様ですか?」

砥ぎ師アリスディア・ピゼシタが冒険者(いせきたんさくにん)ロシュルア・ニノミの小刀を砥ぎながら言った。

「それからここがどこか教えていただきたい。」

キインはアリスディアが仕事場に使っている美しい人口の泉の前にしゃがみこんでいった。


つまり完璧迷子である。


「南城塞です、トゥーセリア様はあんまり来ません。」

アリスディアはそういいながら仕上げた小刀を洗った。

「うむむ…トゥーセリア様はいずこへ。」

キインは苦虫をつぶしたような顔をした。

「明正屋さんの方がいますね、それから地図買った方がいいです。」

アリスディアがそういいながら小刀の水気をぬぐった。


シレルフィール遺跡の目の前に万屋明正屋という店舗がある、謎の商品から下着に携帯食料、人材派遣にお取り寄せまで幅広く行っている店である。


「すみませんな、トゥーセリア様はいらっしゃいますかな?」

キインはやっと遺跡を抜けてやって来た。

「トゥーセリア様ですか?いらっしゃいません。」

店主が答えた。


いつも座って染みハニーを食べている軽食用テーブルには誰もいない。


「どこにいるかわかりますかな?」

キインが身を乗り出して聞いた。

「さあ、知りません。」

店主はたじろいだ。


「舞、ただいま…何してやがる!」

冒険者(いせきたんさくにん)ヘリウス・ジエルキスがハンマーを構えた。


まるで店主にキインが迫ってるように見えたようだ。

ヘリウスと店主は婚約中なのである。


「あー、ヘリウス、違うから!」

今にも殴りかかりそうなヘリウスに店主があわてて手をふった。

「どういうわけだ!?」

ヘリウスはハンマーを担ぎ上げてカウンターを飛び越した。

そのまま店主を片腕で赤ちゃん抱っこをした。

「もう、ヘリウス、仕事中ですよ。」

店主が軽くにらんだ。

「お前はオレの宝物だからな、不埒なやつは許さん。」

ヘリウスが鋭い眼差しをキインに向けた。

「別に不埒なことなど考えておりませんぞ。」

キインが両手を前に出して否定した。

「ヘリウス、お客様です、邪魔しないでください、申し訳ございません。」

店主はヘリウスの腕の中で頭を下げた。

「そうか…悪かったな、ああ、神学者の先生じゃねぇか。」

ヘリウスがやっと気がついたようにいった。


ちなみにハンマーはもうカウンターに立て掛けており店主をしっかり両手で抱き込んでいる。


「あなたは冒険者(いせきたんさくにん)ですな?トゥーセリア様を見ませんでしたかな?」

キインは勢い込んで聞いた。

「うーん、東城塞でデリアと菓子食ってるのと西城塞でハナウアズ先生としゃべってるのはみたぜ。」

ヘリウスはそういってる間も店主の背中を撫でている。


甘すぎて悶絶しそうな雰囲気である。


「どうやっていくのですかな?」

微妙に目をそらしてキインが言った。

「えーと、地図アプリはいかがですか?」

店主は常連客からキインが迷いまくってるという情報を聞いていたのである、いつか危ない地域に入りそうとも…。

「地図アプリですと?それはなんですかな?」

キインは興味を持ったようだ。

「えーと、通信機か端末にこの地図アプリを購入してダウンロードしてもらって立ち上げると目的地まで案内してくれます。」

店主はそういって自分のバラの花型の端末を取り出して画面表示をした。


店主も超方向音痴なのでこのアプリは必須なのである。


「ヘリニー、案内してください。」

店主がアプリを立ち上げていうと可愛いインコのぬいぐるみがピコピコと端末から出てきて店主の周りをとんだ。

『どこにいくピ』

店主の肩にとまって可愛い子供の声で言った。

「明正屋店舗前のトゥーセリア様の祠までお願いします。」

店主がいうとインコのぬいぐるみは飛び立った。

『こっちだピ。』

店主の方を振り替えっていう様はかわいらしい。

「ヘリウス、ついていくか下ろしてください。」

店主がヘリウスを見た。

「ああ、いくぞ。」

ヘリウスは店主を抱えたまま歩き出した。


グーレラーシャの男に最愛の者を下ろすと言うことは辞書に無いようだ。


インコは店主(ヘリウス付き)の歩く速度にあわせて案内していく。

キインは声もなく後をついていった。

研究者なキインにとって面白すぎるアプリだったからである。


インコは見事に店主を案内して見せた。


「地図アプリ『あんなインコ』です。」

店主は甘えるインコを撫でながらトゥーセリア様の祠(複製)の前で言った。

「素晴らしいですぞ、購入いたしますぞ。」

キインはキラキラした目でいった。


どこか目的を忘れているような目である。


かくしてシレルフィール遺跡にインコのぬいぐるみに案内されるおじさんが出没することになったのである。


シレルフィール遺跡管理組合事務所は遺跡内にある。

珍しく遺跡管理組合主任エルアルド・アーチが大型通信機でだれかと通信しているようだ。


『エルアルド、本部に出てこい。』

全国遺跡管理組合とかかれた旗を背景に中年男性がいった。

全国遺跡管理組合次長アラルシド・ガーチアである。

「オレは本部は苦手でよ…。」

エルアルドは頭をかいた。

『本部はシレルフィール遺跡の管理営業方法のノウハウを知りたがっている、一度出てこい。』

アラルシドは長年の悪友に微笑んだ。

「ったく面倒だぜ、いきたくねーよ。」

エルアルドは舌打ちした。


そこに勢いよく扉が開いた。


「わーん、エルアルドさんかくまってください。」

守護の女神トゥーセリアが飛び込んできて言った。

「ど、どうしたんです、トゥーセリア様?」

エルアルドは画面の前から振り返った。


トゥーセリアの後ろからキインがインコと一緒にやってくる。


「さあ、トゥーセリア様、ご神力を計らせていただきますぞ。」

キインがインコのぬいぐるみと共におってきた。

「嫌です~、私は単なる低等神です、平々凡々なハチミツ神生(ジンセイ)を送るんです。」

トゥーセリア様がエルアルドの後ろにまわりながら言った。

「平々凡々なハチミツ神生ってなんですか?ったく」

エルアルドがそういいながら一応トゥーセリアをかばう位置に立った。

「ピピリンに中等神トゥーセリア様のところに案内と頼んだら連れてきてくれたのですぞ、間違いないのですぞ。」

キインがインコのぬいぐるみを手のひらにのせて言った。


ピピリンがこのインコの名前らしい。


「トゥーセリア様、諦めたらどうだ?」

エルアルドが後ろに隠れるトゥーセリアに言った。

「ええ?中等神なんて面倒なものなりたくありません。」

トゥーセリアがエルアルドの背中から少し顔を出して言った。


後ろの画面から大笑いが聞こえた。

見るとアラルシドが大笑いをしているようだ。

『面白すぎる…やっぱり本部にこい、きっちり話を聞いてやる。』

アラルシドはついでに出た涙を拭きながら言った。

「おい、それはこと…切りやがった。」

エルアルドの注意がそがれた。


大型通信機の画面が切れたのである。


「やはり中等神になられてたようですな、おめでとうございます。」

一緒に注意がそがれてたトゥーセリアをキインはちゃっかり神力測定器で測定して満足そうに笑った。

「ああ、しまったのです。」

トゥーセリアは頭を抱えた。


かくして守護の女神トゥーセリアは低等神から中等神に格上げとなった。


アキュア聖王国ではトゥーセリアの小神殿の建築を計画中だそうだ。


キインはピピリンとともに大喜びでアキュア聖王国に帰っていった。


はた迷惑な話である。


エルアルドは全国遺跡管理組合本部にいくことになり今からうんざりしている。


なにはともあれ今日もシレルフィール遺跡はにぎやかである。


本日の商品


地図アプリ『あんなインコ』

ダルソーアプリ㈱

あなたの専用可愛い案内役♪

魔法の擬似オブジェクトファミリアーがあなたをご案内します。

あんなにゃんこ、あんなワンコもございます。

オブジェクトファミリアーには名前もつけられます。

本商品の目的以外のご利用はお止めください。


ご購入ありがとうございました。

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