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本日の商品 『一人でお料理できる本』

おかあちゃまだいじょぶかな?

グーレラーシャ傭兵国王女、愛黎(アイリ)・グーレラーシャは思った。


ギシギディル大陸のモタマチムイ遺跡国最大の遺跡、シレルフィールの城塞都市は今日もにぎやかだ。


「おかあちゃま、大丈夫でしゅか?」

愛黎は祖父の腕の中で言った。


「無理するでない。」

グーレラーシャ傭兵国先代国王、ウェティウス・グーレラーシャが言った。


「だ、大丈夫ですよ、きっと胃炎です。」

さっき気持ち悪いとはきかけてた、考古学者快黎(カイリ)・グーレラーシャが言った。


愛黎にとっては母親、ウェティウスにとっては息子の嫁である。


「そんなこといってしばらく、しっかり、食事をとっていない、グーレラーシャに帰って病院にいったほうが良いのではないか?」

ウェティウスが言った。


「大丈夫です、遺跡が呼んでるんです。」

超遺跡大好き考古学者はそういってヨロヨロと借りている宿の一室から出ていった。


「まったく、困ったもんだ、愛黎、甘いものでも食べにいくか。」

ウェティウスが言った。


グーレラーシャ人にとって甘いものは朝食後でも別腹のようだ。


シレルフィール遺跡に町のようになってい区域がある。

そこのあるダルシアス食堂は安い早い旨いをコンセプトに営業しているようだ。


「甘くないな、愛黎。」

ウェティウスがハニートーストを愛黎にあーんしながら言った。


当然のように愛黎は膝上ダッコである。


「甘くないでしゅ」

愛黎も言った。


こんがり焼けた厚切りパンに切れ込みを入れバニラアイスとブルーベリーの上にランダーネフ花国産ハチミツがかかった、明らかに甘そうな一品である。


「甘くないですかねー?」

ダルシアス食堂店主兼料理人ダルシアス・ハーミルは言った。


「パンにもハチミツ砂糖を塗って焼いた方がよかった。」

ウェティウスが言った。


「そうですか?」

ダルシアスは言った。


研究熱心なダルシアスは後日、試作したそうだが、甘すぎて食べきれなかったそうだ。


国民総員超甘党と言われている、グーレラーシャ人に聞くのは愚の骨頂と言えよう。


「でも、おいしいでしゅ、おかあちゃまも食べられれば良いのに。」

愛黎が言った。


「快黎先生、食欲ないの?」

ダルシアスに聞いた。


いつでも考古学最優先の快黎は

研究熱心なゆえに食事を抜くことはなかった。

体力勝負の職業だからである。


「そのようだ、医師に見せたいのだが。」

ウェティウスが優雅に紅茶に砂糖を入れながら言った。


先程から大盛で10杯はいれている。

口がジャリジャリしそうである。


「うーん、先生、異世界出身だから、食事が合わないんですかね、まして家庭じゃないから好みも調整出来ませんし。」

ダルシアスが言った。


冒険者(いせきたんさくにん)や考古学者にも自炊派もいるが快黎は外食買い食い派だ。


「そうだな、それもあるやもしれんな。」

ウェティウスは愛黎に砂糖をさらに足したハニートーストをあーんしながら言った。


日本人な快黎にとって確かに

マタマチムイ遺跡国のパン文化はきついかもしれない。

煮物までこってりしているのである。


「おじいちゃま、めいせいやしゃんにつれていってくたしゃい。」

愛黎が言った。


なにか思い付いたようである。


シレルフィール遺跡の前に万屋明正屋と言う店舗がある。

携帯食料から下着、謎の商品、カタログ通販、人材派遣(守護戦士限定)、お取り寄せまで行う本当に万屋な店である。


「店主しゃん、あいりきたのでしゅ。」

愛黎がウェティウスの腕の中から言った。


最近孫を手放せないウェティウスである。

伴侶の環境調整師、律・グーレラーシャが仕事で一緒にこれなかったのがよほど寂しかったのであろうか?


「愛黎ちゃん、いらっしゃい、何のご用ですか?」

店主がニコニコ言った。


可愛いお客さんに自然に顔もほころぶのであろう。


「おかあちゃまに食べられるものくだしゃい。」

愛黎が言った。


明正屋は快黎と同郷の異世界人店主が経営している。

そこにいけば、何かあると思ったのである。


「快黎さん、どうしたんですか?」

守護の女神トゥーセリアがまるでハニータルトスナックを食べながらやって来た。


「おかあちゃま、さいきん気持ちわるいのでしゅ、なにかたべられるものないでしゅか?いちぇきがよんでるのでしゅ。」

愛黎が言った。


「愛黎ちゃんに心配かけちゃダメですよね。」

トゥーセリアが言った。


ついでに愛黎にハニータルトスナックをあーんした。


「守護の女神様、申し訳ない。」

ウェティウスが言った。


「ありがとうでしゅ。」

愛黎が言った。


「可愛い。」

トゥーセリアはニコニコと愛黎の頭を撫でた。


「…おじやとか、お粥の保存パックしいれてないですし…まったり軽食セット?」

店主が呟いた。


「かていのあじなら大丈夫なのでしゅ。」

愛黎が言った。


家庭の味、ダルシアスの受け売りである。

わかっているのであろうか?


「家庭の味か…お祖父様は料理はされますか?」

店主が言った。


「できるが、野戦料理の上、グーレラーシャ料理だ、異世界料理はできない。」

ウェティウスが言った。


先代国王陛下は即位前と退位後に対ファモウラ軍国戦にでていたので野戦料理はできるのである。


即位前はグーレラーシャ傭兵国の王太子

『グーレラーシャの獅子』として。

退位後は最強クラスの傭兵。

『クロウサギのおっさん』として

活動していたのである。


戦争が終わった現在は明正和次元の

五十嵐道場で修行中なのである。


「うーん、愛黎ちゃん、お料理に興味あるかな?」

店主は可愛いピンクの本を出した。


「お料理でしゅか?やってみたいでしゅ。」

愛黎は言った。


子供でしかも王女な愛黎はどうあっても料理はさせてもらえない。


常々、ケーキ作り等やってみたいと思っていたのである。


「あのね、このご本の通りに作ればできるんだけど、やってみる?」

店主が言った。


ピンクの本には可愛い女の子がヒラヒラのエプロンをつけて包丁を持ってる絵がかかれている。

題は『一人でお料理するの♪』だ。


「愛黎、頑張るのでしゅ。」

愛黎は言った。


「まあ、娘につくってもらったものならば残すまい、その本とこの菓子をもらおう。」

ウェティウスが染みハニーを5袋カウンターに置いた。


すべて食べるのであろうか?


「おじいちゃま、材料もかってくだしゃい。」

愛黎が言った。


「ああ、店主殿頼む。」

ウェティウスは店主に丸投げした。


異世界料理に使うものなどわからないからである。


かくして祖父と孫は宿の厨房を借りて

おじや擬きを作った。

さすがにチビ幼児の愛黎一人ではできないのである。


「おかあちゃま、食べてくだしゃい。」

愛黎が言った。


ホカホカと湯気がたっている。


「………愛黎、ありがとう…。」

快黎がウルウルした。


「しっかり食え。」

ウェティウスが言った。


「美味しいよ…美味しいけど…気持ち悪いのー。」

快黎が一口食べて流しに駆け込んだ。


「おかあちゃまー?」

愛黎が心配そうに言った。


「遺跡の医師に往診を頼むか?」

ウェティウスが通信機を手に取った。


かくしてよばれた遺跡の医師フティア・バーカワは検査後言った。


「御懐妊です。」


その瞬間世界が終わったような顔をした快黎である。


気持ち悪いのはつわりである。

夫でグーレラーシャ傭兵国、王子アルティウス・グーレラーシャがこのところ頻繁に来ていたので当然の結果と言えよう。


考古学者、快黎・グーレラーシャは当分、苛酷な考古学研究生活からおさらばするようだ。


早速よばれた夫、アルティウスに抱き抱えられて快黎はグーレラーシャに帰っていった。


当然愛黎とウェティウスも帰国したのである。


愛黎はよっぽど料理が愉しかったのであろう、今度はケーキを作ると嬉しそうに本をよんでいるのである。


今後の愛黎の人生によい影響を与えたようだ。


愛黎は料理のできる考古学冒険者(コウコガクいせきたんさくにん)になると今のところいっているようだ。


本日の商品

一人でお料理するの♪

オイエナ出版

お子さまの料理への好奇心を

キャラクターのりんごちゃんと一緒におてつだいします。

包丁や火を使うときは大人が必ずついてください。

乱丁はおとりかえいたします。

ご意見ご感想お待ちしております。

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