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本日の商品 『モミモミわんこ・オプション』

ああ、動きにくいです。

ラファネイ・ピリカは思った。


キシギディル大陸のモタマチムイ遺跡国にある、最大の遺跡シレルフィールの城塞都市は今、新人のラッシュである。


コロロ小人国からきた。

ラファネイも、シレルフィール遺跡管理組合員の新人の一人だ。


「またですね。」

先輩遺跡管理組合員キャリサ・ダータンスが部屋を覗きにきて言った。


ラファネイがなかなか食堂に降りてこなかったので心配で来てみたのだ。


ラファネイは見事にベッドに埋まりこんで動けないようだ。


シレルフィール遺跡には今までラファネイのような小人族は居なかったのでみんな大きい人用なのである。


ちなみに、ここは遺跡管理組合が借り上げている遺跡内にある、宿屋である。


「ハアー、何とかしないといつも先輩に迷惑かけちゃいます。」

ラファネイが宿で一番小さいカップから

ストローでお茶をのみながら言った。


「まあ、気にするな。」

遺跡管理組合主任エルアルド・アーチが小皿にラファネイが食べられるように定食からに取り分けながら言った。


気にしないわけにいかないのだ。

一人前の遺跡管理組合員になるためには

迷惑をかけられ続けられない

とラファネイは思った。


気張りすぎである。

なにはともあれ仕事である。


守護の女神トゥーセリアの祠をキャリサとラファネイはとりあえず磨くことにした。


これも、立派な仕事である。

特に小さいラファネイは祠の細かいところまで磨けるのである。


「キャリサおねえちゃん、こんにちは♪」

愛黎(アイリ)・グーレラーシャがやって来た。


母親の考古学者快黎(カイリ)・グーレラーシャに会いに来たのである。


「愛黎ちゃん、一人ですか?」

キャリサがあわてて言った。


金髪の美幼児な愛黎が一人で危ない遺跡をうろうろする。

恐ろしいと思って当然であろう。


「おじいちゃまと一緒です。」

愛黎がミツアミ金髪の美貌の中年男性を指差した。


グーレラーシャ傭兵国、先代国王、ウェティウス・グーレラーシャである。


「愛黎、疲れないか?」

珍しく、伴侶の律・グーレラーシャを抱き上げてない、ウェティウスが言った。


環境調整師の律は仕事がどうしても

抜けられず、シレルフィール遺跡に訪問できず、ウェティウスが愛黎と訪問となったのだ。


いつも、ほとんど腕に抱き込んでいる律がいないので寂しくて、手持ちぶたさのウェティウスは、可愛い孫の愛黎でそれを解消しようとしているようだ。


「おじいちゃま、愛黎、歩けるのです。」

愛黎が可愛く笑った。


そして、祠を覗きこんだ。


「お人形さんが動いてるのです?」

愛黎が言った。


ちょうど良い大きさでラファネイが祠の中を磨いていた。


「ああ、コロロ小人国の小人さんですよ。」

トゥーセリアの祠に供える染みハニーを準備しながらキャリサが言った。


「おじいちゃま、愛黎のドールハウス出してください。」

愛黎がキラキラした目で言った。


「ここでか?べつにかまわないが。」

孫に甘いウェティウスが差し入れ小袋から

豪華なドールハウスを出した。


いわゆる、グーレラーシャ傭兵国の王宮ミニチュア版である。

もちろん、ウェティウスが可愛い孫の愛黎のために作らせた特注品だ。


「小さい、おねえちゃま、この中に入ってください。」

ニコニコと美幼児は言った。


リアルお人形遊び感覚なのであろう。


「せ、先輩。」

ラファネイはたじろいだ。


「ラファネイさん、入ってあげてください。」

キャリサが言った。


キャリサも女の子なのでちょと動く人形(といっては失礼だが)いりのドールハウスがみてみたいと思ったのだ。


ラファネイは仕方なく、ドールハウスに入った。


さすが、王宮ミニチュア版である。

ドールハウスといえども重厚で豪奢で中は広い。


「でも、久しぶりに落ち着いた気がします。」

フカフカのソファーに座りながらラファネイは呟いた。


「おじいちゃま、可愛いです、あんなお人形さんが欲しいです。」

愛黎がウェティウスに抱きついて言った。


「そうか…そなた、そこで住んで愛黎の遊び相手に雇われる気はないか?」

可愛い孫にメロメロの祖父は孫を抱き上げて言った。


「…あの、私、遺跡管理組合員なので、それはちょっと困ります。」

ラファネイは言った。


憧れのシレルフィール遺跡管理組合に入れたのだ。

当然の答えである。


「…そうか、愛黎、諦めよ、グーレラーシャに帰ったら、すぐにコロロ小人国に求人をかけよう。」

ウェティウスが微笑んだ。


恐ろしい孫ばかっぷりである。

もちろん、伴侶の律にとめられて

計画は頓挫するのであるが。


「おじいちゃま、大好きです。」

愛黎に言われて夢ごごちのウェティウスは

ドールハウスを回収しわすれて遺跡の奥に愛黎を抱えて去っていった。


「……どこかに置いておきましょうか。」

キャリサが言った。


「そうですね、あと、私もこんな豪華じゃなくていいのでなんか、考えます、箱に布とか敷けばいいのかな?」

ラファネイが腕組みした。


それでは本当に高級人形の収納であろう。


「明正屋で相談しましょうか。」

キャリサが染みハニーを供えながら言った。


シレルフィール遺跡のすぐ前に万屋明正屋という店舗がある、携帯食料から、医療品、下着、人材派遣、お取り寄せ、カタログ通販まで行う何でも屋状態になりつつある店である。


「ハア、ドールハウスですか。」

店主が言った。


さすがの明正屋もドールハウスは置いてないのであろう。


「ドールハウスでなくてもいいのですが、ラファネイさんに合うベッド無いですか?」

キャリサが言った。


「……ああ、小人族用ではないんですが、ヘリウスがみいってたので取り寄せたグッズがたしか。」

店主が言った。


冒険者(いせきたんさくにん)ヘリウス・ジエルキスは店主の婚約者である。


人形遊びの趣味はないはずだが?

店主はほとんど、仕事のときいがい抱き上げられているが。

蜜月のグーレラーシャの男として当然であろう。


「これです、モミモミわんこオプションなんです。」

店主が言った。


カウンターの上にちょうどラファネイが使いやすいサイズのベッドやソファー、テーブルがある。


「モミモミわんこ、ユーザーのもっとうちのわんこを可愛がりたいという欲求にメーカーがこたえて作ったようです。」

店主がカタログを見せながら言った。


カタログにはモミモミわんこ、モミモミにゃんこ用のグッズが沢山のっている。

洋服まであるようである。


マニアの購買意欲に訴えかけるラインナップであろう。


「高いですよね。」

ソファーに試しに座りながらラファネイがため息をついた。


新人ラファネイに資金力は無いのである。


「ラファネイさん、ここにあるのは中古品なんです、だから、安くしますよ。」

店主が言った。


といってもヘリウスが少し自分のモミモミわんこを乗せてみただけだが。


「ええ?いいんですか?」

ラファネイは言った。


「ええ、中古品でもうしわけないので、このクッションもつけてますね。」

店主がこの前貸したクッションもつけた。


新人はみんなで育てるものである。

その姿勢がシレルフィール遺跡全体に

行き渡っている。


なんて、いい環境であろうか。


「ありがとうございます!」

ラファネイは店主があえて、中古品と言ってくれたことはわかったのである。


良いところに就職できたとラファネイは思った。


「ああ、埋まらず起きられる幸せ、たまりません。」

ラファネイはベッドから起き上がった。


今度は気持ちよすぎて、寝坊が心配なラファネイであった。


まあ、しっかり、仕事をしてもらいたいものである。


ちなみにヘリウスはモミモミわんこのオプションを再び注文したそうである。

マニア恐るべしである。


本日の商品

モミモミわんこオプション

リオース商会

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新製品続々発売中です。

お子様の手の届かないところでご使用ください。

ご購入ありがとうございました。

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