幕間 店主、冒険者(いせきたんさくにん)の実家へ挨拶にいく。
ヘリウスさんのご家族に会うなんて、緊張します。
万屋明正屋店主、天見 舞は思った。
キシギディル大陸とヒデルキサム大陸にまたがって、グーレラーシャ傭兵国と言う大国がある。
そこの首都ラーシャは基本的に二階建てか三階建てまでの建物しかない。
しかも、建物の大半は中庭を有している。
なぜなら、戦闘民族なグーレラーシャ人にとって、家は最後の砦、最終決戦の場だからである。
「ヘリウスが恋人を連れ帰るなんてなぁ。」
ギーデル飴店、店主、イェウス・ギーデルが笑った。
実家に帰る前に二人はギーデル飴店によったのである。
冒険者ヘリウス・ジエルキスのたっての願いである。
両親が忙しく、二番目のヘリウスはけっこうな割合でこのギーデル飴店にあずけられていたので、第二の実家?状態だからである。
イェウスは兄のような存在で、妻子もちだ。
舞は当然、いつものごとく抱えられっぱなしである。
まあ、グーレラーシャ傭兵国では、けっこう女性が男性に抱えられて甘甘しいことが多々あるのをみたのでいつもよりは恥ずかしくないのであるが。
「ああ、可愛いだろう、イェウス兄ちゃん。」
ヘリオスが笑った。
つまり、ヘリウスにとってイェウスはお兄ちゃん感覚なのである。
「おまえみたいなおとなしいやつが求愛行動とるなんてな、人生捨てたもんじゃないな。」
イェウスが言った。
そう、実はインテリのヘリウスは本(主に遺跡の本)ばかり読んでる子供だった。
ま、グーレラーシャ人で戦闘能力がある以上、傭兵学校にいき戦闘能力をつけるのは、仕方ないことである。
実は昔から、冒険者か考古学者にヘリウスは成りたかったのである。
「アティウスおじさんはいないのか?」
ヘリウスが言った。
アティウス・ギーデルは先代店主で斬新な飴製作の名手として知られている。
その影には親友『戦闘文官』が不思議な味覚を持っていたからと言えよう。
ともかく、グーレラーシャ人以外の観光客が安心して買える唯一の飴店と言えよう。
「親父なら、イリエにせがまれて、ソートンに買い物いっちまった、すぐに帰んないんだろう?またこい、それより、紹介してくれねーのか?」
イェウスが笑った。
イリエはイェウスの娘である。
「ああ、そうだな、オレの婚約者でシレルフィール遺跡で万屋明正屋の店主をしている、天見 舞だ。」
ヘリウスが愛しそうに店主を見ながら言った。
「はじめまして、天見 舞です…スパイスキャンディーはお世話になりました。」
店主がヘリウスの腕の中で頭を下げた。
「そうか、あのときの店長さんか…オレは、イェウス・ギーデルだ、ヘリウスの幼馴染みの兄ちゃんって言うところか?よろしく頼む。」
イェウスが言った。
「イェウス兄ちゃん、結婚式の飴タワーは任せたからな。」
ヘリウスが言った。
飴タワー、結婚式に新郎新婦の象徴をモチーフにしたものである。
沢山作られる、主催者側も用意するが、招待客もお祝いに持ってくる人が多い。
帰りに引き出物のひとつとして分けるのである。
最近の大ヒットは先代国王の時の
金の獅子が黒いウサギを抱き込んでるものである。
しばらく、ウサギモチーフ流行したようだ。
「ああ、任せておけ、いいの作ってやる。」
イェウスが笑った。
なにはともあれ、結婚式は御家族にあってからであろう。
「舞、オレの長兄のラーシオスだ。」
ヘリウスが言った。
黒地にエキゾチックな水紋模様のグーレラーシャ人の正装をした、背の高い赤毛のミツアミ優男風がラーシオス・ジエルキス、貿易会社勤務である。
「はじめまして、舞さん、こちらは私の妻のサーティアです。」
ラーシオスは言った。
小柄な青い髪の女性がラーシオスの隣頭を下げた。
「はじめまして、よろしくね。」
水人族の専業主婦、サーティア・ジエルキスが言った。
貿易会社員なラーシオスが
トレシガーナ水洋国で品物を仕入に言ったとき二人はであったのである。
サーティアはマーマン族が端正込めて作った繊細な工芸品を専門に扱う会社はたらいていたのだ。
マーマン族は器用な海洋生物で姿形は耳のヒレのような形以外ほぼ人間である、ただし、細かい鱗が全身おおっている。
ほとんど、人間とかわらない水人族とは同じ海中集落で暮らしていて、商売上手な水人族に器用な手で作った繊細な工芸品の販売を頼むのである。
ちなみに下半身がさかなの人魚族は戦闘民族である。
グーレラーシャ人も結婚して何年もたてば落ち着くのだ。
それでも、手をつないでいるところがグーレラーシャ人である。
「はじめまして、天見 舞です。」
店主は丁寧にお辞儀をした。
「アポロニュウスは通信機で話した事があったな。」
ヘリウスが言った。
「直接は、はじめまして!」
王宮警護官アポロニュウス・ジエルキスが言った。
「よろしくお願いします。」
店主がお時儀した。
赤い長い髪に茶色の瞳の細い優男風なアポロニュウスはかつてのヘリオスと瓜二つである。
幼いころはよく、ヘリウスを替え玉に遊びにでて怒られたのが良く分かるそっくり具合だったのであるが
今はヘリウスに筋肉が付いた上、髪も短いので似てる程度である。
「ラーシオス、変じゃないかしら…いやだ、もう、来てたの?」
ヘリウスの母親、オリビア・ジエルキスがおしゃれをして出てきた。
赤毛に茶色の目の感じのよいおばさんな容貌である。
気合は入りまくっている。
まあ、息子の嫁(予定)と初めてあうのだから当然と言えよう。
ちなみにヘリウスの父タイシウスは対ファモウラ戦で亡くなってる為母親しかいないのである。
「母のオリビアだ、舞。」
ヘリウスは言った。
「はじめまして、天見 舞と申します、ヘリウスさん、おろしてください。」
店主が言うと仕方なさそうにヘリウスはおろした。
「よろしくお願い致します。」
店主がふかぶかとお時儀した。
お姑さんとのファーストコンタクトである。
最初のイメージは肝心である。
「こちらこそ、よろしくお願いしますね、ヘリウスが…お嫁さん連れてくるなんて嬉しいわ。」
オリビアは嬉しそうに笑った。
かつて、おとなしい子供だったヘリウスが心配だったのだ。
そのヘリウスが結婚…あとの心配は遊んでばかり(仕事はきちんとするが)のアポロニュウスであろう。
「もう、抱きあげてもいいか?」
そういいながらヘリウスは店主をだきあげて抱き込んだ。
グーレラーシャの男なんてこんなもんである。
「まあ、ヘリウスったら。」
オリビアは本当にうれしそうに笑った。
なにはともあれ、店主とヘリウスの結婚は秒読みのようだ。
あとは、店主、天見 舞の両親に挨拶するだけである。
ぜひ、上手くやってもらいたいものである。
本日の商品
店主と冒険者が里帰り中の為なし。
参考商品
結婚祝い飴タワー
ギーデル飴店
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予算、大きさ等、ご相談うけたまわります。




