本日の商品 『女性雑誌kyukyu』
一樹さんはどんな女性が好きなのかしら。
砥ぎ師、アリスディア・ピゼシダは夢想した。
キシギディル大陸、モタマチムイ遺跡国、最大の遺跡はシレルフィール城塞都市と言って今、大盛況の遺跡だ。
「なかなか、こんなところで恋愛なんかできないですかね。」
アリスディアが言った。
できれば一樹に抱きあげて貰いたい、恋人になりたい、グーレラーシャ人なアリスディアである。
一樹の体格的に可能であるが…日本人な一樹には無理な相談であろう。
「そうよね、私も葉月さんに迫ってみたんだけど、守護ロボットのせいでかわされちゃったのよね。」
女装の考古学者、ギアルデス・ハナウアズが両手を頬に当てていった。
ギアルデスも葉月と恋人になりたいのであるが…。
なかなかうまくいかないのである。
「先生、葉月さんに迫ったんですか?」
冒険者ロシュルア・ニノミが言った。
ロシュルアは特に好きな人はいないが恋バナは女子の好物である。
「ええ、そうなのよ、この間、守護してもらったときに壁際に追い詰めたのよ、もう少しでキスできそうだったのに。」
ギアルデスが赤くなっていった。
それなのに後ろからきた守護ロボットに気がついた葉月が反応して守られてしまったのだ。
格好いい葉月を見られて嬉しいが、ちょっと残念なギアルデスだった。
「なんかいい、指針がないですかね。」
アリスディアが言った。
この間から手作りのグーレラーシャの伝統菓子ハチミツタルトをさしいれたり
さりげなさを装って会ったりしてるのだが効果が無いのだ。
ちなみにハチミツタルトは他国人には甘過ぎて、ラーシャ族な守護の女神トゥーセリアが
ほとんど食べたのは内緒である。
「恋占いとか見たいですね。」
ロシュルアが呟いた。
「雑誌も明正屋にあったわよね。」
ギアルデスが言った。
「いってみましょうか。」
アリスディアが言った。
彼女らは今、遺跡内の町の公園?でガールズトーク中でだったのである。
シレルフィール遺跡の前に万屋明正屋と言う店舗がある、謎の商品から、下着、携帯食料、人材派遣(守護戦士限定)カタログ通販、人材紹介(砥ぎ師?)、お取り寄せまで行っている、なんでも屋状態店舗である。
「占い雑誌ですか?」
店主が言った。
「今日、告白してもいいかとか。」
アリスディアが言った。
それは予言であろう。
「季節の着こなし術、マストアイテムとかもいいわね。」
ギアルデスが言った。
「パワースポットとかもいいですね。」
ロシュルアが言った。
そんな雑誌あるのであろうか?
「では、これで、占い充実と評判の女性雑誌、kyukyu (キュキュ)です。」
店主が言った。
綺麗な女性が表紙で笑っている。
「まあ、綺麗ですね♪」
アリスディアが言った。
モデルが華奢で綺麗だったのだ。
グーレラーシャの女性は引き締まっているが
華奢ではない人が多い。
「占いが充実してるんですよ、キユリがやってる占いもあって。」
店主がページを開けた。
今日のあなたの運勢、モモヤ・リンライとある。
パーウェーナ世界なので明正和次元人な店主以外ぴんとこないだろうが、キユリの町の指導者、最高の正解率を誇る占い師、当代赤のキユリである。
「そうですか、一冊ください。」
アリスディアが言った。
仲間とガールズトークのネタにしても楽しいし、一樹にアタックするヒントがあるかもしれないと思ったのである。
さっそく、明正屋の軽食が食べられるコーナーのテーブルに陣取って三人はみ出した。
「まあ、アピールポイントは遺跡ですのね。」
ギアルデスが言った。
「私もパワースポット、遺跡です。」
ロシュルアが言った。
「遺跡で告白…。」
アリスディアは呟いた。
遺跡といってもどこもかしこも遺跡である
どこで告白すれば良いのであろうとアリスディアは思った。
「こんにちは、店長さん、染みハニーありますか?」
シレルフィール遺跡管理組合員、キャリサ・ダータンスがやって来た。
守護の女神トゥーセリアのお供えものを
買いに来たようである。
「はい、どうぞ。」
店長が染みハニーを箱で渡した。
「沢山ですね、キャリサ先輩。」
キャリサの足元から声がした。
みんな、えっとあたりを見回した。
「あ、紹介します、新人のシレルフィール遺跡管理組合員のラファネイ・ピリカさんです。」
キャリサがそっと床に視線を向けた。
そこにはシレルフィール遺跡管理組合と書かれた、ハンカチを巻いた、5センチほどの小人族がたっていた。
コロロ小人国からきたのである。
「はじめまして、ラファネイ・ピリカです。」
ラファネイは挨拶した。
「可愛いわ。」
ギアルデスは言った。
「一緒にいかがですか、キャリサさん。」
ロシュルアが言った。
「恋バナには縁がないので、ラファネイさんは皆さんと交流していてください。」
キャリサが言った。
「ええ?エルアルドさんにロンリーハートとかいわれませんか?」
ロシュルアが言った。
「あのセクハラ主任はそんな事いいやがったんですか?」
キャリサが言った。
面倒見のよさは天下一品のシレルフィール遺跡管理組合主任エルアルド・アーチだが
デリカシーのなさも天下一品のようだ。
「そんなことより、たのしい雑誌ですね。」
ラファネイが言った。
美味しいスイーツの店まで掲載されていたのだ。
「まあ、このクッションにでもどうぞ。」
店主がテーブル上で立って覗き込んでいたラファネイにクッションを差し出した。
サイズがぴったりである。
「ともかく、遺跡で実行あるのみです。」
アリスディアは言った。
後日、アリスディアは二級守護戦士花山一樹を例の人工の泉のそばに呼びだした。
「なんの用ですか?」
一樹が微笑んだ。
「あの…私、花山さんが好きです!付き合って下さい!」
アリスディアが言った。
グーレラーシャ人は女性も情熱的である。
「あの…まだ、僕はあなたの事を知らないので、友達からでいかがですか?」
一樹が言った。
内心はどきまぎしていたのである。
今までこんなにストレートに好きといってくれた人はいなかったのだ。
「…お友達…せめて親友スタートでお願いします!」
雑誌の占い欄に押して押しまくれと書いてあったのだ。
「分かりました…親友と言う事で…これから色々知り合って行きましょう。」
一樹は微笑んだ。
あの占い、いいかもあの雑誌定期購読しようかな?
女子力アップにもつながるし
とアリスディアは思った。
なにはともあれ、良い結果につながってもらいたいものである。
本日の商品
女性雑誌『kyukyu』
ハルカワ書店
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旬のマストアイテムも掲載中。
占いページは当代赤のキユリが担当してます。
おしゃれなメンズ雑誌『renren』をはじめ多彩の
本を出版しております。
ご愛読ありがとうございました。




