幕間 守護戦士は遺跡マニア。
運がよかったよ、遺跡を堂々と見られるよ。
准一級守護戦士、五十嵐葉月はおもった。
キシギディル大陸、モタマチムイ遺跡国最大のシレルフィール城塞都市遺跡は空前の観光客の来襲にさらされていて、人手不足だった。
その対策で葉月たち、守護戦士が雇われたのである。
「葉月、はめはずすなよ。」
幼馴染みの宇水耀太准二級守護戦士が言った。
耀太はこれから二級取得のための実務研修中なのである。
「まあ、葉月さんもわかってますよ。」
二級守護戦士、花山一樹は言った。
一樹も実は准一級取得のための実務経験をつむためにきたのだ。
ちなみに二級以上は一人前で単独業務可なのである。
まあ、大体組んでやるのだが。
「五十嵐守護戦士、ギアルデスさんの護衛お願いします。」
シレルフィール遺跡管理組合員キャリサ・ダータンスがいった。
うしろには女装の考古学者ギアルデス・ハナウアズがたっている。
「はい、守護業務ですね。」
葉月は言った。
例え、遺跡マニアな守護戦士でも
仕事はきちんとするのである。
「壁の修復作業に美術修復の専門家が入ってるのね。」
感心したようにギアルデス言った。
かつていたチアスア古城遺跡は修復したのはいいが妙に新しくなってしまい、つまらない遺跡となったのでシレルフィール遺跡にきたのだ。
遺跡修復業者、ハイッラ・ヴィオラはその点シレルフィール遺跡を愛しており無駄な修復、余分なあたらしさはつかないように修復しているのである。
「素晴らしい遺跡ですよね。」
葉月が言った。
葉月は三次界の日本国の守護戦士の本家五十嵐家の当主文月の妹である。
よって、葉月は常に守護戦士となることを期待されてきた。
この成熟度(若青年、女)で准一級は本来驚異の世界なのである。
葉月が遺跡を愛するわけは近い親戚で年上の考古学者五十嵐 快黎とその母親、考古学者の希沙がいたからと言えよう。
「中央城塞にいきたいのよ。」
ギアルデスは言った。
「え?立ち入り禁止ですよ。」
葉月は言った。
「ええ、近くでみるだけでいいの、チアスア古城遺跡の防衛システムに影響を与えたのみたいのよ。」
ギアルデスは言った。
「わかりました、一人だとまずいので耀太を呼びます。」
葉月は端末で耀太をよんだ。
「向こうで合流します。」
葉月は言った。
例え遺跡マニアな変態でも守護戦士な葉月のみのこなしはいい。
「シンニュウシナイデクダサイ、コウソクシマス。」
中央城塞についたとたんギアルデスは守護ロボットに遭遇した。
なんて綺麗なロボットなんでしょうチアスア古城遺跡の防衛ロボット違うわ
とギアルデスは見とれた。
「下がってください!」
葉月がギアルデスをかばって前に出た。
戦扇を開いて守護ロボットの攻撃を受ける様はどこか優美で美しい。
「ボウガイシナイデクダサイ、タイホシマス。」
守護ロボットが警棒らしきものを出し殴りかかってきた。
葉月は華麗によけて、守護ロボットの頭を飛ばした。
頭を失った、守護ロボットは少し動いたあとゆっくりと倒れた。
戦扇が素早く閉じられる。
「なんて、綺麗なの。」
ギアルデスは今度は葉月に見惚れた。
あんな美しい戦闘みたことがないと思ったのである。
まあ、彼いや彼女は戦扇戦闘ははじめてみたのである。
チアスア古城遺跡にも防衛ロボットがおり冒険者がいるのだが優美とは程遠く、ロボットもめちゃくちゃになることが多いため綺麗と思ったことは無かったのである。
「しまった、破損したよ。」
一方葉月は守護ロボットの頭を飛ばした事を悔いていた。
シレルフィール遺跡の冒険者はあまりロボットを破損させずに停止出来るノウハウがあり、葉月も教えてもらっていたのであるが。
とっさのことで対応しきれなかったのだ。
「おい、葉月、なんで守護ロボットが破損してやがる。」
タイミング悪く?耀太までやって来た。
「しかたないじゃない!とっさで力加減が出来なかったのよ!」
葉月は言った。
まあ、仕方ないのは確かであろう。
「…守護戦士、恐るべしですね、主任、どうやったら守護ロボットの固い装甲を切り裂けるんですかね。」
通信機で呼ばれたキャリサが言った。
「ああ、ヘリウスより、ある意味すげーな、たしか、こいつら天鉱合金だったはずだ。」
同じく呼ばれた、シレルフィール遺跡管理組合主任、エルアルド・アーチは腕組みした。
天鉱合金とは天鉱と言う鉱物と
他の鉱物を配合して強化した鉱物で
鋼鉄の数十培は強固な金属だ。
「すみません、怖い目にあわせてしまって。」
葉月がギアルデスに頭を下げた。
「いいえ、私の方こそ、わがままいってごめんなさい。」
ギアルデスはそういいながらも葉月から目が離せなかった。
ひとつひとつの動作にもキレがあり美しい。
「まあ、オレも間に合わなかったけどさ。」
耀太が言った。
途中観光客に道を聞かれて
なれない耀太は通信機を頼りになんとか
管理組合員の居るところまで案内したのだ。
「今度は、飛ばさない!なんか考える!」
葉月は遺跡マニアな守護戦士なので
遺跡が傷つく事は基本嫌なのだ。
仕事の都合で傷つけても気持ちが痛むのである。
「おまえなら、舞扇でも下手すりゃ、飛ばせるよ、この戦闘一族!」
耀太が言った。
言い過ぎである、いくら、葉月でも舞扇では頭は飛ばせないはずである、多分。
「耀太はいいよね、戦扇でも威力うちばだしね。」
葉月はため息をついた。
じつは、耀太も武器は戦扇なのだ。
「まあな。」
耀太は言った。
「じゃ、明正屋の店長さんに相談したらどうですか?」
キャリサが守護ロボットを回収しながら言った。
最近、ある意味万屋状態な店主である。
「あの人、戦闘のプロじゃ無いですよね。」
葉月は言った。
「ええ、でも、いい案はいつも店長さんから出るし、ヘリウスさんも店長さんの恋人なので。」
キャリサは言った。
なるほど、機械停止のヘリウスに一度、師事すればコツがつかめるかも知れない
葉月はそう思った。
シレルフィール遺跡の前に万屋明正屋と言う店舗がある。
謎の商品から、お菓子、携帯食料、医療品、カタロク通販、最近では人材斡旋業(守護戦士限定)まではじめさせられた店である。
「舞、グーレラーシャの家族に会ってくれないか?舞を紹介したいんだ。」
店主を抱き上げた、冒険者ヘリウス・ジエルキスが言った。
完璧プロポーズである。
「え?いいの?嬉しい。」
店主、天見 舞が微笑んだ。
可愛すぎてヘリウスが舞に口づけたところで
勢いよく扉が開いた。
「すみません!守護ロボット停止方法の件で相談がありまして!」
葉月である。
そして、キスしあう二人をみて固まった。
「い、いらっしゃいませ!」
店主は動揺した。
ある意味、蜜月時はこんな状態と割りきっているヘリウスは平然と店主を抱き込み続けているが。
「舞、もう一度。」
ヘリウスが口づけだ。
グーレラーシャの男なんてこんなもんである。
「……わー、お邪魔虫かな?」
葉月は呟いた。
「ご、ごめんなさい、何かご用ですか?」
しばらくして、店主が言った。
顔は赤い、まあ、仕方ない話であろう。
「あの、じつは戦闘の威力を押さえる方法を探していまして。」
葉月は言った。
「どういう訳なんだ?」
ヘリウスも興味を引かれたようだ。
葉月は事の顛末を話した。
「戦扇で守護ロボットの頭を飛ばしただとー?」
戦闘民族なグーレラーシャ人もビックリである。
まだ、高等戦扇士が出ていないグーレラーシャ傭兵国人では想像のつかない話であろう。
「守護ロボットはな、胸のところにスイッチがあってだな…今度教えてやる…その代わり、その戦扇の技一度見せてくれ、興味がある。」
ヘリウスはどこか目をキラキラさせながら言った。
何だかんだいっても戦闘民族グーレラーシャ人なのだ。
「さて、オレは…。」
ヘリウスが店主を再び抱き込んだ。
「ヘリウスさん、は、恥ずかしいです。」
店主が抗議の声をあげたところで口づけをするヘリウス。
グーレラーシャの男なんてこんなもんである。
「お邪魔しました。」
葉月はそそくさと帰っていった。
機械停止の仕方をしっかり学んで遺跡を傷つけないようにしてほしいものである。
今後の葉月の活躍に期待したい。
本日の商品
店主をヘリウスが独占中のためなし。
本日の被害
中央城塞にて守護ロボット一体破損。




