本日の商品 『守護戦士?』
最近、遺跡現場に駆り出されることが多い、人手不足ですよね。
シレルフィール遺跡管理組合員、ボブエル・カーランドは思った。
キシギディル大陸、モタマチムイ遺跡国、最大のシレルフィール城塞都市遺跡は空前の観光ブームにさらされている。
通信機ネットで今一番いきたい遺跡となった他、たなばた祭り企画等観光客のアピールに成功したせいともいえよう。
「事務処理が終わらない…収入は上がってるはずなのに、収支報告書が終らない…。」
ボブエルは大型通信機の前でぼやいた。
久しぶりの事務作業だが、連日の現場駆り出しの為滞っていた。
ボブエルは実はシレルフィール遺跡管理組合の収支決済と事務の担当で本来あんまり現場に出ない立場なのである。
いつもなら、遺跡内にあるシレルフィール遺跡管理組合事務所に引きこもり事務仕事メインの仕事なのだが…。
「ボブエル!観光客の案内を頼む!」
シレルフィール遺跡管理組合主任エルアルド・アーチが事務所に飛び込んできた。
「人手、増やしてください、冒険者もです。」
ボブエルは魂の叫びを発した。
「冒険者は増えてるんだが…まだ、つかえないレベルなんだよな…。」
エルアルドは頭をかいた。
そうなのである、シレルフィール遺跡のネームバリューにあこがれて、新人冒険者も増えているのである。
新人なので今後に期待レベルでまだまだ、使えないレベルなのだ。
逆にベテラン冒険者は一度定めた遺跡から動きたがらない。
管理組合から抜けるのは容易であるが、自分の地位が確定しているので、挑戦しづらいのであろう。
「まあ…ヘリオスとは言わなくても、ニルザードレベルのがもっといるといいんだが…。」
エルアルドが言った。
冒険者ヘリオス・ジエルキスは機械停止のヘリオスと呼ばれる高等槌士ニルザード・デーランは祖父ハルアードの跡を継ぐ二代目で中堅の冒険者である。
たしかに彼らのような冒険者がいれば、ボブエルも駆り出される回数が減るだろう。
「いっそ、明正屋にでも頼むか?冒険者売ってくださいって。」
冗談めかしてエルアルドが言った。
「そうですね、そうだんしてみます。」
ボブエルは真顔で言った。
「おい、本気にするなよな。」
エルアルドが笑った。
まじめな人は案外一直線なものである。
シレルフィール遺跡のすぐ前に万屋明正屋と言う店舗がある。
こじんまりとした店舗には、謎のグッズからお菓子に文房具、下着等数多く扱っている。
カタログ通販までやっているのである。
「店長さん、遺跡良かったですわ。」
うっとりとした様子で女装の考古学者ギアルデス・ハナウアズは言った。
彼…いや、彼女は最近シレルフィール遺跡に移ってきたのである。
「そうですよね。」
考古学者快黎・グーレラーシャが言った。
移ってきた彼女と今、遺跡を見てきた所なのだ。
「みんなの遺跡への愛がこもっていますから。」
店主は微笑んだ。
「店長さん、ご相談したい事があるんですが。」
ボブエルがやってきたようだ。
「なんですか?」
店主が応じた。
最近、シレルフィール遺跡の関係者の相談役になってるなと思いながら。
「あら、良い男ね。」
ギアルデスは言った。
「ありがとうございます、店長さん、中堅の冒険者斡旋してください。」
ボブエルが真剣に言った。
「え?心当たり何てないですよ。」
店主がたじろいだ。
彼女は万屋だが、別の意味での万屋=何でも屋のように人材派遣までしてないのである。
「適度な戦闘能力と守護能力が必要なんです。」
ボブエルが主張した。
守護ロボットや戦闘ロボットから考古学者や観光客を守るために必要なのである。
「守護か…守護戦士なら、大丈夫かな?」
快黎が言った。
「守護戦士ですか?いいかもしれませんね。」
店主が言った。
「守護戦士ってなんですか?」
ボブエルが聞いた。
実は守護戦士じたいはとっくの昔にこちらの世界で活動している。
グーレラーシャ傭兵国の傭兵ギルドで頼めは派遣は可能なのだが、モタマチムイ遺跡国の方まではその名前で知られてないのである。
「守護戦士は青服の傭兵…青の指揮官って知ってる?」
快黎が言った。
彼女はかつて夫でグーレラーシャ傭兵国王弟アルティウス・グーレラーシャと対ファモウラ戦の戦場近くにいたのでよく知っているのだ。
まあ、それだけではないのであるが。
「知ってます、ファモウラ戦を終わらせた英雄ですよね。」
ボブエルが目をキラキラさせて言った。
通信機の会議の映像配信に貼りついてみた口である。
絶対に終らないと思われてた戦争を終わらせた人…。
不可能を可能にした人はあこがれの対象となっていたのである。
「あのね、青の指揮官って私の実の姉なんだ、私は才能ないけどお姉ちゃんは守護戦士一級なんだよ。」
快黎が暴露した。
まあ、しる人はしっているのであるが。
「で、ではつてがあるのですね。」
ボブエルが言った。
あんな凄い人の妹が快黎とは信じられないが。
あんな凄い事が出来る青服の傭兵がいるのなら雇ってみたいのが人情だろう。
「うん、うちは五十嵐本家…三次界の守護戦士の本部だから…。」
ついに快黎がゲロした。
そうなのである、快黎の旧姓は五十嵐なのである。
本家にきわめて近い五十嵐家の出身なのだ。
「ぜひ紹介してください!」
ボブエルは言った。
専門職を入れればそれだけ事務業務が滞らないからだ。
「うーん、私、料金交渉出来ないから…店長さんやってくれる?」
快黎が言った。
彼女は遺跡脳なのでそれ以外はからっきしなのだ。
「お願いします、店長さん、仲介料お支払いしますから。」
ボブエルは言った。
金の余剰はあるのである、何ぼでもはないが。
「…自信ないですけど…シレルフィールの仲間としてやってみますね。」
店主は言った。
かくして、快黎の端末で明正和次元の三次界の五十嵐本家に連絡がとられた。
「文月お姉ちゃん、そういうわけだから店長さんと代わるね。」
快黎はいった。
『うん、わかった。』
現五十嵐本家当主五十嵐文月が言った。
濃い紺色に白抜きの護モチーフのマークの作務衣は守護戦士特級の証である。
「天見 舞ともうします。」
店主が代わった。
かくして、交渉により適正料金により守護戦士が派遣されることになったのである。
『研修生を受け入れていただければ安くします。』
文月はニコニコ言った。
実は対ファモウラ戦が終わって以来研修できるところを探していたのだ。
もちろんボブエルは了承した。
エルアルドに確認済みである。
お金の支払いは少ない方がいいに決まってるのである。
『お姉ちゃん~!丁度守護業務終わったから私いくね♪』
背後でハイテンションな当主似の女性が言った。
紺いろの服はどうみても准一級守護戦士のようだ。
『とりあえず、明日から三名ほど送ります。』
文月がため息を付きながら言った。
かくして、やって来た守護戦士たちは
信じられないくらい素晴らしい実力であったようだ。
詳細はいずれ語ろう。
ボブエルはゆっくりと収支報告書に取りかかられて満足のようだ。
今後も守護戦士と付き合いは続くのであろう。
本日の商品?
守護戦士?
全国守護戦士協会三次界五十嵐本部
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