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本日の商品 『構造解析君』

なんて美しい壁なんだろう。

ケレスケトル職人国からの

観光客ハイッラ・ヴィオラは思った。


キシギディル大陸のモタマチムイ遺跡国、最大のシレルフィール城塞都市遺跡は今いきたい遺跡ナンバーワンとなっている。


それもこれも、シレルフィール城塞都市遺跡の遺跡管理組合及び関係者たちの努力のお陰である。


ハイッラはここ最近、毎月のようにシレルフィール遺跡に足を運んでいる。


目的はシレルフィール遺跡を飾る美しい繋ぎ目が少ない壁である。


場所によっては精緻な絵が描かれ、

崩れたところさえ雰囲気がある。


ケレスケトル職人国でのウサを忘れる美しさである。


「ああ、もっと天井際までみたいです。」

ハイッラは呟いた。

「脚立じゃ危ないですしね。」

この間迷惑をかけられた新人シレルフィール遺跡管理組合員、デービット・エワスケスが言った。


彼は常連の観光客となったハイッラの担当である。


しっかり、案内するように遺跡管理組合主任エルアルド・アーチに厳命されているのだ。


「脚立じゃ危ないですよ、本当に。」

ハイッラは言った。


シレルフィール遺跡の天井は案外高い。


第一一々登り降りして見るようではいつまで経っても全体のようすがわからないのである。


壁の全体像がみたい…。

かつて、どんな状態だったのか?

ハイッラはそう思った。


ハイッラはケレスケトル職人国で美術品の修復をしている。

シレルフィール遺跡に興味を持ったきっかけはモタマチムイ遺跡国からきた遺跡嫌いな同僚の話に興味を持ったからである。


彼が古臭い、ロボットがさ迷い出てくる、胡散臭い連中がうろうろしてる。

というたびに行きたい、見たい衝動が強まるのである。


小手調べに最近有名なシレルフィール遺跡に来たら、見事にはまったハイッラである。


「万屋、明正屋に何かあるかも。」

デービットが言った。


この間の時空凍結符で、まだまだ月賦払い中のデービットは直ぐに思い付いた。


「明正屋?入り口にあるお店ですよね、いってみます。」

ハイッラは壁を見ながら言った。


シレルフィール遺跡のすぐそばに

万屋明正屋というお店がある。


謎のグッヅや携帯食料、文具にお菓子、はては下着までおいてある最近ではカタログ通販も取り扱っている。


「こんにちは、あの、こちらに遺跡の壁の上の方を安全に鑑賞できる方法があるかもって聞いたのですが。」

ハイッラは言った。

「いらっしゃいませ…はい、こちらはいかがですか?」

店主がカタログをカウンターに出してきた。


若い女性が店をしてるのにハイッラは驚いた。


「あの、お一人なんですよね。」

ハイッラは言った。

「え?お一人って…店舗は確かに一人でしてますが。」

店主は怪訝そうに言った。

「心細くないんですか?」

ハイッラは言った。


遺跡見たさに、ここに店を出したけど心細いと思ったことはない

…シレルフィール遺跡はみんないい人ばかりだからかな?

と店主は思った。


当然、出店前にリサーチして遺跡管理組合がしっかり、機能しているシレルフィール遺跡にしたのだが

…人付き合いはそのときにならないとわからないのである。


「心細くないですよ、いい人ばかりです。」

店主は微笑んだ。


そういえば、デービットさんもいい人だな、最初も上から目線だったけど、親切だったし。

とハイッラは思った。


「こちらは、建設業の方がつかうのですが、いかがですか?」

店主がカタログの中から指し示した。


丸い水晶のような球状のものの写真がある。


「構造解析君Rです、建築業者さんがつかうんですけど…。」

店主は言った。

「どうにつかうんですか?」

ハイッラは言った。


「通信機に構造解析君専用アプリをダウンロードしてもらってそれを起動して使います。」

店主がカタログの説明のページを開けていった。

「そうですか。」

ハイッラは答えた。

値段も手頃である。


「あくまで構造解析なので生体は映りません、動力源は魔晶石なので手軽です。」

店主が言った。


犯罪に使われる可能性は排除しないといけないのである、

こう言うフライングカメラはきちんと防御しないと裁判沙汰になるのである。


「注文したいのですが?」

ハイッラは言った。

「はい、お取り寄せになります。」

店主が言った。


店には特殊商品はおいてないからである。


「来月には来てますか?」

ハイッラは聞いた。

「明日の夕方には来ていると思います。」

店主が答えた。


明正屋はソウトントン便を使っているのではやくくるのだ。


「では、明日とりにきますね。」

ハイッラはニコニコした。


やっと壁が見られるのである。


丸い水晶のような球体が壁際を漂いシレルフィール遺跡の壁の映像を映し出す。


「素晴らしいですね♪」

ハイッラはニコニコした。

「ええ、相変わらず、明正屋はすごいですね。」

シレルフィール遺跡管理組合員ボブエル・カーランドは言った。


今日はデービットが公休日なので

彼が頼まれたのである。


「しかし、大分劣化が進んでいる…どうしようかな。」

ボブエルはため息をついた。


遺跡修復費はたしかに入場料や国からの援助で出ているが、やはり専門家を入れると費用が膨らむのである。


しかし、観光客が増えてきた以上、事故が起こらぬように対策をたて、遺跡修復作業は早急の問題である。


「……私、修復出来ます!やらせてください!」

ハイッラは天恵を得た。


今まで、仕事をしながらもこれが本当に私の天職なんだろうかと思っていたのである。


遺跡修復作業!

考古学者でも、冒険者(いせきたんさくにん)でもないハイッラが遺跡にかかわれる素晴らしい仕事だ。


「あの、貴女はいったい…。」

ボブエルは戸惑った。

「あ、申し遅れました。」

ハイッラは話し出した。


つまりハイッラ・ヴィオラは

老舗の美術品修復会社ヴィオラの

跡取り娘で『天恵のハイッラ』と

いわれる天才修復師だったのだ。


当然反対はあったが

新境地開拓ということで

ハイッラはシレルフィール遺跡修復プロジェクトを任されることになった。


遺跡を愛する、ハイッラなら余分な修復はしないことだろう。


ぜひ安全な遺跡観光が出来るように

してもらいたいものである。


構造解析君Rも本来の目的で活躍しそうだ。


本日の商品

構造解析君R(レギュラー)

ハナビラスガーデアン㈱

建築物の構造解析にご使用頂けます。

映像は専用アプリ『構造解析君』で

端末及び通信機でご覧になれます。

(10台までアプリのダウンロードにより映像を共有出来ます。)

本品は犯罪抑制のため生体は映りません。

不正改造は犯罪になります。

お買い上げありがとうございました。

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