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幕間 グーレラーシャ傭兵国視察団の訪問

なるほど、たしかに、グーレラーシャ人ですね。

視察団長アルティウス・グーレラーシャは思った。


キシギディル大陸のモタマチムイ遺跡国の

最大の遺跡はシレルフィールの城塞都市という。


その遺跡の南城塞地域に

守護の女神トゥーセリアの祠がある。


その祠の複製がシレルフィール遺跡のすぐ前にある、

万屋明正屋の隣に建っているのである。


「こんにちは!染みハニーありますか~?」

その赤毛の女性はのんきに明正屋に入っていった。


だが、視察団のみんな、見ていた。

そのなんのへんてつもない普通のグーレラーシャ人は祠の中から出現したのを…。


間違いなく人ではない神であると確信した瞬間だった。


まあ、魔法使いであればいくらでも出来る技であるが、グーレラーシャ人は基本魔法オンチなので思い付かないようだ。


「挨拶にいってきます。」

アルティウスは言った。

「はい、殿下。」

アルティウスは先代国王陛下の息子で当代国王陛下リエスディアの弟なので王弟殿下なのである。


関係ない話だが。


明正屋は謎のグッツから下着、携帯食料、お菓子等取り扱っている店舗だ、最近カタログ通販まで始めた。


「トゥーセリア様、今日はおめかししてますね。」

店主が言った。


たしかに今日のトゥーセリアは

いつも以上に気合いをいれた格好をしている。


「ええ、シレルフィール遺跡管理組合の人はじめ沢山の人が寄付してくれて。作ってくれたんです。」

ニコニコとトゥーセリアが言った。


当然の事ながら、店主も寄付したのであるがその事をおくびにも出さない。


「今のラーシャ族はすばらしい衣装を着ているのですね。」

トゥーセリアは衣装をみながら言った。


ローズバイオレットに銀糸刺繍の立襟の長そで足首丈の衣装は戦士だった

トゥーセリアの為に真ん中スリットしている。

ズボンは細身の白いズボンだ。

かんざしも新しいものでトゥーセリアの象徴をかたどっている。


神々しい女神様御降臨である…染みハニーをつかんでいなければだが。


「失礼いたします、こちらに守護の女神トゥーセリア様がおいでになられてると思いますが。」

アルティウスが声をかけた。


本当ならばシレルフィール遺跡の正面門でグーレラーシャ傭兵国人の

冒険者いせきたんさくにんヘリウス・ジエルキスに案内されて、南城塞の祠の視察予定だったのだが。

見てしまったものは仕方ないのである。


「え、はい。」

店主は答えた。


「店長さん、どなたでしょうか?」

物見高いトゥーセリアは顔をのぞかした。


麗しいグーレラーシャの王弟殿下は綺麗なグーレラーシャの礼をした。

さすがである。


「守護の女神トゥーセリア様、グーレラーシャ傭兵国より御尊顔を拝しにまいりました、長い間ご苦労をなさったと存じます、ぜひ、故国にも御降臨いただきたく存じます。」

アルティウスは言った。

「あのー、私そんなに大した身分じゃないんですよー。」

高貴な男性にひざまずかれて、本来庶民派なトゥーセリアはたじろいだ。


もちろんたいした身分だから王弟殿下が来たのである。

彼にはもう一つ目的があるが…。


「とりあえず、なかにお入りください、みなさんもどうぞ。」

店主は言った。


とりあえず、通信機でヘリウスを呼ぼうと思ったのである。


「アルティウス殿下、トゥーセリア様はかなり昔、まだ、ヒデルキサム大陸の一種族だった時の方のようです、グーレラーシャ(大きいラーシャ族)と呼ばれる前のあまり細かく歴史が残ってない時代です、興味深いです。」

一緒にきた民族歴史学者グラシウス・アイーファが言った。

「トゥーセリア様に失礼のないように聞きなさい。」

出されたお茶を優雅に飲みながら言った。


内心は砂糖が入ってないと思ったようだが。

顔に出さないのはさすがである。

グーレラーシャ人は極度の甘党でお茶もシロップなみに甘いのが普通である。


「迎えにあがりました。」

ヘリウスがやって来た。

「遅いぞ、ヘリウス。」

警護官でヘリウスの幼馴染ライテウス・ダファヤが言った。


今回も護衛で付いてきたらしい。


「悪かったな、舞、連絡すまん。」

ヘリウスは店主を抱きしめた。

「あ、あのヘリウスさん、人がいますよ。」

店主が言った。


人どころか自国の王族までいるが…。


求愛行動中のグーレラーシャの男なんてこんなもんである。

王弟殿下も平然としている。

自分がそうだからだろうか?


「ヘリウス…お前、いつの間に女性なんて!」

ライテウスは言った。


一番騒ぐのが幼馴染の男…そんなに気になることだろうか?


「ん?まあ、そう言うことだ。」

ヘリウスは言った。


信じられないものを見た。

ライテウスはそう思った。


「二人はやっと恋人同士になったんです。」

トゥーセリアはニコニコとお茶に砂糖を多量にいれながら言った。


その時点で店主は砂糖のいれ忘れに気がついた。


トゥーセリアやヘリウスは砂糖入れが机においてあるのを知っていて勝手に入れるが、グーレラーシャのお茶は先に入れてから提供するので、いれ忘れは不味いのである。


「すみません。」

店主はあわててアルティウスのお茶に砂糖を多量にいれた。

「いいんですよ。」

アルティウスは微笑んだ。


ああ、甘くなってよかったと思いながら。


ほかのグーレラーシャ人のカップにも店主は入れて回った。


恐らく、こんなに砂糖が大量消費される日が来ることは考えられない事だろう。


「すみません、このシレルフィールの城塞都市遺跡のガイドブックをください。」

グラシウスは目をキラキラさせて言った。


いままで、自国の歴史にしか興味がなかったが。

トゥーセリアがここまできたということで

シレルフィール遺跡にも興味をもったようだ。


彼はここから、古代ラーシャ族の移動と超古代文明の関わりという有名な論文を発表するのだが、またそれは違う話である。


その後、南城塞遺跡の祠に行った一行は

その遺跡の素晴らしさと

トゥーセリアがいかに信仰されていたか

シレルフィール遺跡管理組合員キャリサ・ダータンスから聞かされたのだった。


まあ、防衛システムにトゥーセリアと名付けるくらいだから古代人の信仰の度合いがわかるというものだろう。


「さて、仕事は終わったし、快黎(カイリ)たまには、夫婦のふれあいでもしましょうか?」

アルティウスが考古学者快黎(カイリ)・グーレラーシャに言った。


思い出していただけただろうか?

彼らは夫婦なのである。


「え?いいよ、私、忙しいし。」

快黎は言った。

「なにいってるんですか、さあ、行きましょう。」

アルティウスはそういって快黎を抱えあげた。


そしていずこへと去っていった。


まあ、グーレラーシャの男なんてそんなものである。


快黎が次の日出てこなかったことは言うまでもない。


何はともあれ、

守護の女神トゥーセリアは

グーレラーシャ傭兵国で祭られるようだ。

めでたいことである。


本日の商品

シレルフィール城塞都市遺跡ガイドブック

シレルフィール遺跡管理組合編

シレルフィール遺跡は歴史ある遺跡です。

遺跡は世界の宝物です。

この本の収益金はシレルフィール遺跡の管理修繕費として使われます。

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