表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/44

本日の商品『白雪ふんわりエビ一千』

 私、このまま死んじゃうのかな?

 考古学生、デリア・ミーミアは遺跡の壁を見上げた。


 キシギディル大陸のモタマチムイ遺跡国の最大の遺跡シレルフィールの城塞都市は迷路のようになっている、城塞都市ゆえに敵の侵入を防ぐために複雑な構造に加えて遺跡なので崩れた箇所があり更に迷いやすいのである。


 「あーん、ここどこー? 」

 デリア・ミーミアは遺跡の壁を見上げた。

 ピンクブロンドのクルクル巻毛に青い瞳の少し太めの愛らしい少女の瞳に涙が浮かんだ。


 いつも見慣れた遺跡の通路が今日は恐怖心を煽る。

 迷っちゃったよ、どうしようとつぶやいている


 「私、ここで終わりかな? 」

 悲観的な気持ちで思わずデリアはつぶやいた。


 デリアは考古学者のカイリ・グーレラーシャに師事する学生である。

 本来はモタマチムイ遺跡国の王立考古学院の学生なのだがカイリのシレルフィール遺跡の論文を読んで押しかけて弟子になったのである。


 なんだかんだと仲の良い師弟だが師のカイリは考古学の研究となると寝食を忘れるたちでもしかしたら探してもらえないかもしれないとデリアは不安に思ったようである。


 「お菓子食べ放題してから死にたかったよ。」

デリアも若い女性なのでお菓子が大好きだ。

 思い浮かぶのはパティスリーイシカワのシフォンケーキとかチーズケーキ、サファイア・ルーサのプリンパフェ……そんなことばかりだ。


 「そう言えば、明正屋でお菓子買ったんだった。」

 デリアはショルダーバッグをあさった。

 沢山荷物が入るの気にいっている。


 最近できた万屋明正屋に可愛いハンディーマッサージャーを買いに行ったはずが、珍しいお菓子に目を奪われて()()()()()買ってきたデリアである。

 「これこれ。」

 やっとお目当てのものが見つかったようである。

 お菓子の入った時空保存パックを空けると香ばしいエビの匂いがしたスナック菓子のようだ。


 不安を紛らわすようにお菓子の封を破り口に運んだ。


 「なにこのお菓子?美味しい……買ってよかったよ、今度は違う味も買おうかな。」

 デリアはうっとりお菓子を味わった。


 思わず二度見したパッケージには白雪ふんわりエビ一千薄しお味と時空保存パックに書いてある。


 しばらくデリアは不安を忘れ、その場で座ってお菓子を食べるのに没頭した。


 「デリアちゃん、何してるのさ。」

 顔馴染みの冒険者(遺跡探索人)が壁の影から顔をだした。


 ニルザード・デーランである。

 少年のようなあどけない童顔だが、実は立派な大人である。


 「あ、ニルザードさん、助けに来てくれたんですね。」

 デリアはニコニコと手を振った。

 お菓子はしっかりともう片手ににぎられている。

 「たすけるもなにも、発掘現場、右の通路いけばすぐだよ、なに菓子食ってんのさ、先生が探してたよ。」

 ニルザードが頬をかいた。

 「え?そうだったんですか?」

 デリアはきょとんとした。


 世界的な遺産の床にはデリアが食べ散らかした

 白雪(シラユキ)ふんわり海老一千(エビイッセン)薄しお味の食べかすが散乱していた。


 完璧にお菓子タイムとなっていたようである。


 「あとで掃いておかないと遺跡管理組合のオヤジどもに文句言われっぞ!」

 ニルザードがそう言いながらも大きめのゴミを拾ってやっている。

 マメな男である。

 「あーん、余分な仕事増やしちゃったよ。」

 デリアは泣き真似した。


 お菓子を食べこぼしたのはデリアである。

 それでもデリアちゃん可愛いと鼻の下を伸ばしたニルザードはもう、男のサガと言えよう。



 数日後、デリアは明正屋にやって来た。

 「店長さん!この間のお菓子美味しかったです〜」

 デリアは嬉しそうに微笑んだ。

 「そうですか、よかったです」

 店主は愛想笑いを浮かべた。

 「もう、帰れないと言う絶望感が一瞬で楽しい気分になれました。」

デリアは指を組んでうっとりとした。

 「そ、そうですか、それはよかった」

 どんな場面でお菓子を食べたのだろうと想像がつかないと店主は思った。

 「他の味とか買っておきたいです、もっとバッグが大きければいいのに~」

 デリアはお菓子棚を物色し出した。

 お徳用とかファミリーサイズもあるけどデリアさんの健康のために黙っていようと店主は思った。

 「それより、迷子対策グッツ購入した方がいいんじゃ、まあ、今度紹介しようかな」

 浮かれながら、棚を物色中のデリアを見ながら、店主は新作のお菓子と迷子グッズを仕入れようと心に決めた。


 「店長さん!この生シュータルトって美味しいですか?! 」

 デリアが嬉しそうに時空保存パックを手にもった。

 「天濫(テンラン)製菓の新作です、生クリームとカスタードクリームの二層シューがミニタルトにのってて、美味しいです、時空保存パックに個装だからもちますよ」

 「あーん、この白雪ふんわりエビ一千 季節限定トマトカレー味も気になるのです〜」

 デリアはもう一つ袋をもった。


 うーん、やっぱりファミリーサイズは仕入れない方向でと店主は伝票にチェックを入れた。


 デリアの異世界お菓子熱は当分続きそうである。


 本日の商品

 『白雪ふんわりエビ一千薄しお味』

 天濫(テンラン)製菓

 海老を贅沢に一千匹つかっております。

 豊かな海老の風味口に広がります。

 甲殻類アレルギーの方はご賞味をご遠慮くださいませ。

 消費期限内にご賞味ください。

 ご購入ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ