本日の商品 『腰椎バンド』
時代は変わっただと、わしはこの遺跡探索の南城塞の防衛システムを停めたんだぞ!
元冒険者ハルアード・デーランは思った。
キシギディル大陸にあるモタマチムイ遺跡国最大の遺跡シレルフィールの城塞都市遺跡は今、空前絶後の観光ブームにわいていた。
「ふん、わしらのときは落ち着いて仕事ができたもんだが。」
ハルアードは言った。
「お祖父ちゃん、なんでミル・キシグ古王国から来たわけ?」
ハルアードのまご冒険者ニルザード・デーランが言った。
ハルアードがどうしてもかつての職場
シレルフィールの城塞都市遺跡をみたいとごねたので付き添っているのだ。
ハルアードはしばらく前から
福祉事業が充実している
ミル・キシグ古王国のケアハウスに入っていた。
大型通信機の映像配信でシレルフィール遺跡が映り行きたいとケアワーカーさんに申請したようだ。
「トゥーセリア様の祠だって発見時大きく貢献したのはワシなのに。」
ハルアードはため息をついた。
ミル・キシグではみんな自分の事を単なる年寄りだと思っている。
ワシは凄腕冒険者だったんだ。
とハルアードは思った。
「お祖父ちゃん、まだ見て回るの?」
ニルザードが言った。
「中央城塞はまだまだ、システムが生きているようだな。」
ハルアードはかつての武器フレイルを持ち上げながら言った。
祠のお参りでゆかにおいておいたのである。
そのとき、腰が…嫌なおとを…。
「うっ!!」
ハルアードはうめいた。
腰の激痛で立ち上がれない。
「お祖父ちゃん!?」
孫のニルザードは慌てて駆け寄った。
「こ、腰が…。」
ハルアードは声を絞り出した。
まごうことなくギックリ腰だ。
「おい、ニルザード!どうしたんだ!」
シレルフィール遺跡管理組合主任のエルアルド・アーチがちょうど通ったのだ。
「お祖父ちゃんが腰やっちまったみたいで!」
ニルザードが言った。
「先生を呼んでこい!」
エルアルドが若手管理組合員のデービッド・エワスケスに言った。
「はい!」
デービッドはかけていった。
「急性腰痛症俗称ぎっくり腰ね。」
遺跡内唯一の医師フティア・バーカワが言った。
やはりぎっくり腰のようである。
「いたた。」
ハルアードはうめいた。
「湿布の処方箋書くわ、あと…腰椎バンドは明正屋のがおすすめよ、薄いのに機能的なのよ。」
フレイル医師が言った。
「薬屋はこいつがいってくる、ニルザードは明正屋にいってくれ。」
エルアルドが言った。
ここからは明正屋の方が近いのだ。
復帰したてのニルザードを気づかったのである。
「いってくるぜ、お祖父ちゃん。」
ニルザードが言った。
ニルザードが冒険者に成ったわけはベタな理由だ。
すなわち、ハルアードに憧れたからなったのである。
小さいときの英雄はハルアードだった。
お祖父ちゃんみたいな、冒険者になりたい。
それがかれの願いである。
シレルフィール遺跡のすぐそばに万屋明正屋という店舗があり、謎の商品から携帯食料、お菓子、医療品、下着等の販売や、はてはカタログショッピングまでうけおっている。
「店長!腰椎バンドをくれ!」
ニルザードが駆け込んだ。
「え?腰椎バンドですか?」
店主はあわてた。
案外出る商品なので各種揃えてるが
いきなりはビックリする。
シレルフィール遺跡は案外、腰を屈める狭いところも多いので腰痛持ちがそこそこいるのだ。
「お祖父ちゃんがぎっくり腰やっちまった、頼む!」
ニルザードは言った。
「あのー、サイズはいくつくらいですか?」
店主が言った。
「え?サイズ?」
ニルザードは戸惑った。
正しい腰椎バンドのサイズで固定しないと
腰椎はきちんと固定できないのである。
「一緒に来てくれ!」
ニルザードは言った。
「あの、私、遺跡内は迷子に…。」
店主がいいかけてとめた
ニルザードの焦った目を見たからだ。
「…すぐ、準備しますね。」
店主は言った。
かくして、店主はシレルフィール遺跡に足を踏み入れた。
行きはよいよい帰りは怖いである。
「うー。」
ハルアードは痛みに耐えながら思った。
昔は良かったと。
息子夫妻(ニルザードの両親)は一般的な職業についている。
それでも、ニルザードが怪我するまでは
冒険者稼業を継いだことを責められたことはなかった。
嫁の『お義父様のせいで、ニルは死にかけたんです!冒険者なんてもう、させたくないですわ!』というセリフが特にこたえた。
息子も同意見のようだ。
昔はシレルフィール遺跡でやりがいある
生活を考古学者の妻としていた。
なのに今、ケアハウスで一人ぼっちで部屋にこもる。
嫌気がさしてシレルフィール遺跡に戻ってきたのに。
激痛で気が遠くなりながらそうに思った。
「お祖父ちゃん!固定するぞ。」
ニルザードの声がする。
ワシにお迎えがついに…。
とハルアードは思った。
「お義父様がこんなに思い詰めてたなんて!」
ニルザードの母が言った。
「悪かったな、親父。」
ニルザードの父が言った。
部屋は粛々とした空気があった。
「お前ら、ワシはまだしんでない!なに、暗くなっとる、もう少ししたら復活するわ!」
ハルアードはトイレから帰りながら言った。
きちんと腰椎バンドをしているので
いたみがうちばだ。
「お祖父ちゃんはやっぱりすげいな。」
ニルザードが笑った。
うん、治ったらまた、遺跡にいこう。
ミル・キシグ古王国内にも沢山あるはずだから
腰に優しい遺跡にいこう。
とハルアードは思った。
懲りない男である。
ざんねんながら、ミル・キシグ古王国に遺跡と呼ばれるものはない。
現在も雰囲気を崩さないように改装して古い建物を使っているからである。
くれぐれも無理しないでもらいたい。
店主は案の定迷子になりヘリウスに回収されたそうだ。
本日の商品
腰椎固定ベルト
花作場義肢㈲
本品はコルセットではありません。
腰椎固定以外の用途にはご使用にならないようにしてください。
装着方法確認後正しいサイズで装着してください。
サイズ 小人サイズSS S M L LL XL 人サイズ SS S M L LL XL ドラゴンサイズ SS S M L LL XL
その他ご希望によりサイズ調整いたします。
御利用ありがとうございました。




