本日の商品 『万能傷薬X』
なんで、私ってこんなにドジなのかな?
冒険者ヴィアセリナ・ウエルアスは思った。
キシギディル大陸のモタマチムイ遺跡国、最大のシレルフィールの
城塞都市遺跡は最近観光客が増えている。
落書き事件の解決方法や守護の女神トゥーセリアの
出現などが拍車をかけて
今、一番行きたい遺跡ナンバーワンに通信機ネットでなったせいもある。
「痛い!」
ヴィアセリナは言った。
「大丈夫ですか?」
考古学生デリア・ミーミアが言った。
指から血が出ている。
発掘途中の石畳からガラスの破片が出ている。
「これは大昔にここで捨てられた、ゴミ?」
考古学者快黎・グーレラーシャは拾い上げた。
「たぶん、違うんじゃないですか?」
デリアが言った。
マナーの悪い観光客が投げ込んだ現在のガラス瓶である。
「なんで、発掘途中の地域まで入るのかな?」
快黎は言った。
「さあ?死にたいんじゃないんですか?」
ヴィアセリナは冷ややかに言った。
よくみると、そこかしこにゴミがある。
しばらく、居たようだ。
「それの膝のキズもゴミでついたの?」
快黎が聞いた。
指の処置と一緒に処置しなおそうと出したのである。
「これは昨日発掘時にこけたキズ。」
ヴィアセリナは言った。
ヴィアセリナは運動能力は高いのに
動きすぎなのかよく、転んだりする。
「守護ロボットに追いかけられた時ね、旦那さんやめろって言わないの?」
快黎はいつでも夫に帰ってこいと言われている。
「う…うん、うちはもうだめだから、旦那にも彼女いるらしいし。」
ヴィアセリナは言った。
旦那とは故郷のミル・キシグ古王国で一緒に育った幼馴染みである。
結婚して何年も経たないのに。
この間、うちにかえったらものみごとに濡れ場に遭遇したのだ。
「やっぱりほっといたのがいけないのかな?」
ヴィアセリナは呟いた。
冒険者はヴィアセリナの幼い頃からの夢だ。
小さい頃から秘密の冒険だの未知への遭遇にワクワクした。
通信機の冒険特集でみた
冒険者の姿が忘れられず。
その当時から周囲は許嫁呼ばわりされてた
旦那の反対を押しきって
全国冒険者ギルドの
冒険者養成学校試験を受けて、
うかったため冒険者学校に入った強者だ。
その後、全国冒険者ギルドの資格試験もクリアして
ついに念願の冒険者になったのである。
「シレルフィール遺跡で仕事するのは楽しいけど、旦那の濡れ場は見たくないな…。」
キズ薬を塗りながら呟いた。
ヴィアセリナも女性なので
そういうことは嫌なのである。
「いっそ、別れちゃえば?」
快黎が無責任な事を言った。
「そうだよね、濡れ場見られたのになにもいってこないし。」
ヴィアセリナは言った。
「そうですよ、集中力がきれて大怪我する前に慰謝料もらって別れた方が良いですよ。」
デリアが言った。
余計なお世話である。
まあ、一理あるが。
浮気が本気か確かめる必要があるだろう。
「あ、終わっちゃった、キズ薬買ってきます。」
ヴィアセリナは言った。
「今日は遺跡町?の薬屋さん休みだったから、明正屋に行けば?」
快黎が言った。
シレルフィール遺跡には町みたいなところがある。
そこに生活に必要なものが揃っているのであるが。
薬屋の店主は昨日から風邪で休んでいた。
なんとかの不養生である。
「明正屋いくのなら、私もいこうかな?」
デリアが言った。
「デリアちゃんはダメここの発掘が終わってから。」
快黎が言った。
デリアが行ったらお菓子選びに夢中になって
帰ってこないのは必至であろう。
「じゃあ、いってきます。」
ヴィアセリナは言った。
シレルフィールの城塞都市遺跡のそばに
万屋明正屋と言う店がある、
謎の商品から携帯食料、下着に医療品など多彩に揃っている
最近では、カタログ通販まで始めたらしい。
「傷薬ですね。」
店主はそういいながら
カウンターに薬をだした。
「この、万能傷薬Xがおすすめです。」
店主が言った。
「どんなキズでも治します、切って張り付けてください?」
ヴィアセリナは箱の説明書をよんだ。
「シート状になっていて手で切れるようになってるんです、皮膚がわりになって保護にもなりますよ。」
店主が言った。
そして、ヴィアセリナの指に貼った。
指先は敏感なのでいつまでも、痛みがとれないものだが。
貼ったとたん痛みが取れた。
スゴい薬である。
「痛くない。」
ヴィアセリナは言った。
「なおるまでそのままでいいです、まあ、汚れたら交換ですけど。」
店主が言った。
「……この傷薬みたいに、心の痛みがすぐ消える薬があるといいな。」
ヴィアセリナは言った。
「心のいたみに効く薬なんて、万屋ごときじゃ取り扱ってないですよ。」
店主は言った。
まあ、そんな都合によい薬があるかどうかであるが。
「店長さんは彼氏とかいますか?」
ヴィアセリナは聞いた。
「…いませんよ?」
店主は言った。
今、店主も微妙な感情の状態なのである。
気になる男性ヘリウスはいるけど、
まだ、明確に好きかわからないのである。
「私、離婚するかも知れないんです。」
ヴィアセリナは言った。
「そ、そうですか。」
店主はたじろいだ。
「あの、アホ旦那!浮気しやがって!」
ヴィアセリナは叫んだ。
「ヴィアセリナさん、まだ、居るか?」
そのとき店の扉があいてヘリウスが来た。
誰か連れてきたようだ。
「え?ええ、いますよ。」
店長が言った。
「ヴィア、良かった、会えて!」
平々凡々を絵にかいたような水色の巻き毛の男性が言った。
ギリシャ風の格好をしている。
「レアンドロス!なぜここに!」
ヴィアセリナが言った。
くだんのアホ旦那の登場である。
「君が誤解してるってやっと、お義母さん聞きだしたんだよ!」
レアンドロスは言った。
「誤解じゃない!あなたのうえにあの女があられもない格好でいたわ!」
ヴィアセリナが言った。
「僕は、あの日、外交の仕事で忙しくて終わったあと、酔って寝てたんだ、彼女はそれを利用して君が帰るのを見極めて僕にあられもない格好で絡み付いたらしい。」
レアンドロスが言った。
実は、ウエルアス家はミル・キシグ古王国の
貴族の家系で、外務官をレアンドロスはしている。
ヴィアセリナも実家は当然貴族なのだが、
冒険者をしている嫁を気に入らないレアンドロスの叔母が別れさせようと親戚の娘を焚き付けたらしい。
レアンドロスを落とせば、ウエルアス本家の
奥さまになれると。
レアンドロスもそれを望んでいると。
かくして、一番効果的な日にちが選ばれた。
忙しいレアンドロスにヴィアセリナが帰ってくる日を確認させず、
女にだけに知らせたのである。
「つまり、僕たちははめられたんだ、叔母さんにはきつくいっておいた。」
レアンドロスは言った。
「……私が単身でシレルフィール遺跡にいるからいけないのよね。」
ヴィアセリナが言った。
「その事なんだけどね。」
レアンドロスはいいかけた。
「私、ミル・キシグに帰るわ。」
ヴィアセリナが言った。
冒険者は夢だけど、
この心の痛みには代えられない。
「帰るのか、寂しいな。」
ヘリウスが言った。
ヴィアセリナはヘリウスにとって年下の先輩である。
「その事なんだけど、ヴィア、僕はモタマチムイ遺跡国に大使として就任したから。」
レアンドロスがいった。
「え?どういう事?」
ヴィアセリナは聞いた。
「アイテール宰相と国王陛下に交渉して派遣してもらったんだ。」
レアンドロスが言った。
つまり、レアンドロスはヴィアセリナと暮らすために
国を出たということである。
仕事こみだが。
「じゃ、レアンドロス?」
ヴィアセリナが言った。
「うん、一緒に大使館で暮らそう、ここからそんなに遠くないし、通えるよね。」
レアンドロスは言った。
「レアンドロス!」
ヴィアセリナはレアンドロスに抱きついた。
「可愛いヴィア。」
二人はだきあって何度もキスをした、
勝手にしてくれである。
「ああ、逆上せてきたぜ、舞?」
ヘリウスはカウンター内で両手をほほに当てる店主をみた。
「…なんか、あついよ。」
店主は呟いた。
まだ、刺激が強いようだ。
夫婦喧嘩?に他人は巻き込まないでほしい
ものである。
そして、発掘作業はぜひ、安全第一でお願いしたい。
本日の商品
万能傷薬x
水ぐも四国堂製薬
本品は当製薬会社特許の繊維
みずぐもーるに傷薬を含ませて作ったあります。
万が一湿疹等肌にトラブルが出たら
直ちに中止して医師にかかってください。
お子様の手に届かないところにおいてください。
用法容量を守って正しくお使いください。




