本日の商品『モミモミわんこ』
新連載ですが
不定期開催ミニコーナーです。
そして、作者にしては
珍しい三人称(出来ているんでしょうか?)
よろしくお願いいたします。
古代遺跡で有名なキシギディル大陸のモタマチムイ遺跡国の最大の遺跡のシレルフィールの城塞都市の真ん前に、最近小さな店ができた。
『万屋明正屋』とシンプルな黒い文字の看板で何を売ってるかわからないと冒険者たちと考古学者たちの噂されてるとかしないとかである。
なにせ時空保存食ありますとか魔晶石ありますとかよくわからない張り紙が貼ってあるからである。
雑貨屋のたぐいであろうと落ち着いたようある、今のところ客は入っていない。
完璧不審店舗扱いである……店主の容貌もそれに拍車をかけているようである。
そんな店にもついに、客がやってきた。
そのがたいのいい筋肉質の身体の赤毛の男性は、ベテラン冒険者らしい。
大きな槌を杖代わりによたよた歩きながら腰痛でもあるのかやや前屈みになりながら腰をおさえて新しい店の扉を開いた。
カランカランと入り口の新しい鈴がなった。
「いらっしゃいませ」
黒髪に琥珀の瞳でシンプルな白いブラウスと紺のズボンに水色のエプロン姿の若い女性が愛想笑いを浮かべ新しい木のカウンターの前で振り向いた。
おお、聞いた通り若いなぁと男性はつぶやいた。
それに可愛いと男性は思った。
噂のもとは、もちろん何を売ってるんだろうということもあるのだが、それ以上に若い明らかにこの国の住人でない女性が、どうしてこんな辺境に謎の店出してるんだろうと言うことである。
届けを受けたシレルフィール遺跡組合の組合員たちも首をひねった程である。
モタマチムイ遺跡国はもちろん、観光地化された遺跡も多い、しかしどう見ても、シレルフィール遺跡は考古学者とか冒険者か遺跡組合くらいしこないし、いない……まあ、ちょっとした店舗はあるが……本当に注目されてない辺境遺跡なのである。
男性もそんな、遺跡を愛する冒険者の一人だ。
シレルフィール遺跡はまだ生きているところが多い大昔の古代帝国の城塞都市遺跡である、よって侵入しづらいところも多く、狭いところも多いため腰痛持ちも多い。
男性も腰痛持ちせ、もう少しでぎっくり腰をやりそうな痛みにたえ、いつも湿布を買う雑貨店にいったら、店主が孫の子守をするからしばらく休みますという貼り紙に絶望してやっと思い出してやってきたに過ぎない。
雑貨屋なのだから何かあるのだろうとおもいだしたのだ。
「こんなところに店が出来たんだな」
男性、冒険者ヘリウス・ジエルキスはごまかすように辺りをキョロキョロ見回すと、いつもの雑貨店よりよほど品揃えがいいようだ。
しかも店の外見より広い気がする。
広い一枚板のカウンターの向こうには沢山の商品が置かれている棚が一面にある。
カウンターの下のガラスケースにも色々ディスプレイされているようだ。
カウンターより手前のスペースにも棚があり、お菓子があったり謎の機械があったり、ぬいぐるみがあったり、色々ある、そして爽やかな香りがただよっている。
「今月オープンでございます、ごひいきにお願い致します」
営業スマイルにはお金はかからないと若い女性、店主の天見 舞は微笑んだ。
「う……まあ、湿布あるか? 」
ヘリウスは明言は避けて腰をなでた。
いつもの雑貨店の老人にも義理立てしないといけないと思ったのである。
余談であるが雑貨店の老人はその後娘夫婦と同居となり遺跡の店をたたんでしまい万屋明正屋がこの遺跡唯一の雑貨店のようなものとなるのであるがこの時、ヘリウスは知らない話である。
腰をさすりながらもう一度辺りを見回すと店内には下着類からお菓子、医薬品、携帯食料など多種多様なのに分かりやすく並べてある。
店の手前の方には座りやすそうな椅子とテーブルが軽食メニューとともにおいてある。
だが湿布は見当たらない。
「あります……少々お待ちください」
店主はカウンターの後ろの棚を探った。
まだ商品の場所を把握しきってないようである。
「良く効くのを頼む」
苦痛表情を浮かべながらヘリウスは腰をおさえた。
「こちらの『エントールS』は消炎鎮痛作用がよく……効くみたいです」
店主が棚から保存袋を出し効能を読んだ。
「ああ、それでいい、10袋くれ」
「は、はいただいま」
店主は慌てて商品を袋に入れようとカウンターの下を探った。
肩こりにも効くよなとつぶやきながヘリウスは待ちながら肩を回した。
「肩もこってるんですか? えーとこちらはいかがですか? 」
店主は棚をまたさぐって手のひらサイズの可愛い犬のリアルな ぬいぐるみを出してきた。
手のひらサイズの黒いラブラドール犬のぬいぐるみにあった大きさのオレンジ色のわんこベッドに座っている。
「おい、ぬいぐるみなんて欲しがる歳じゃないぜ」
ヘリウスが肩を叩きながら顔をしかめた。
「お試しください」
店主は少々強引に犬のぬいぐるみをヘリウスの肩においた。
ぬいぐるみはちっちゃい手足で肩をもみだした。
「いやだいやだいやだいやだいやだいやだ」
とかわいくいいながら可愛い肉球をピンポイントに肩の血行の悪いところに適度な力加減で押し込んでいく。
「気持ちいいな」
肩の凝りがほぐれてヘリウスはフウと気持ち良さそうにため息をついた。
「疲れたの」
マッサージが終わるとわんこベッドに自動的に戻って丸まって眠りだした。
愛らしさバツグンで可愛い寝顔にうっとり見入ってヘリウスは少し考えた。
まあ、出して使うもんじゃないし……それに肩がものすごく軽いからな……
「……それももらおう」
「ありがとうございます。」
店主はにっこり微笑んだ。
おすすめ商品が売れて嬉しかったのである。
「動力源はどうなっている? 」
ヘリウスはそこが気になるようである。
遺跡では直ぐに充電できないからである。
「わんこベッドが充電器になっておりまして、こちらクッションの下に魔晶石入れ替え口があります」
店主はそっとわんこが眠るクッションを持ち上げると小さい魔晶石が入っていた。
「そうか、その魔晶石も少し購入しよう」
ヘリウスは財布を出した、買う気まんまんである。
「かしこまりました、どの子にしますか? 」
店主がカウンターから籠を出した。
籠の中には犬型が10種類。それよりも小さいピンポイントマッサージャーの人差し指の長さくらいの猫型が5種類入っていた。
「その犬型がいい」
ヘリウスはデモ器と同じ黒いラブラドールを指差した。
「ありがとうございました、収納バッグと回復符サービスします。」
店主がニコニコ商品を袋にいれた、ついでに試供品の回復符もいれる。
次につなげるためにサービスは必要なのである。
いい店を見つけたとヘリウス・ジエルキスはそう思った。
じいさんの雑貨店に無さそうなもんもあるし店長は可愛いしたまには来るかとこの時は思ったのである、しかしエントールSの効きめの速さに湿布は明正屋で買うと決めたのは貼った直後である。
モタマチムイ遺跡国が誇る大遺跡通称シレルフィールの城塞都市は迷いやすいことで有名なくらい複雑で広大なので中にも冒険者や考古学者たちが休める町みたいなところがある。
遺跡内に町は遺跡保護の観点から作れないのであくまで町みたいなものであるが……
その一画の公園みたいなところの誰がおいたかわからないベンチによりかかりヘリウスはもみもみワンコで肩をマッサージしていた。
「いやだいやだいやだいやだいやだいやだ」
可愛い声と肉球にうっとりとしたゴツい筋肉男はある意味不気味である
「あー、なにそれ! 可愛い! 」
ややぽっちゃりとした可愛い娘がはしってきた。
「デリアか……」
騒がしい声にヘリウスは薄目を開けた。
デリア・ミーミアは考古学の学生だ。
考古学者のカイリ・グーレラーシャの弟子で良く一緒に潜っている。
「もみもみしてる~」
デリアが可愛い〜と言いながらつんつんした。
「ハンディマッサージャーだからな」
おい触るなとヘリウスがにらんでもどこ吹く風である。
「疲れたの」
そのうちワンコは肩から降りてヘリウスの膝の上のわんこベッドに戻って丸まった。
「いやーん、欲しい! どこで買ったの~まさか発掘品じゃないよね」
デリアはわんこベッドごと持ち上げた。
ちっちゃい手足をつまんでみたりしてる。
「万屋明正屋だ、やらんぞ」
ヘリウスが軽く睨んで手のひらをデリアに伸ばした。
「私もいってみようかな」
デリアはケチ〜と言いながらもワンコをベッドごと大きい手のひらに戻した。
「で、なんか用か? 」
ヘリウスはウエストバッグにワンコをいれながら立ち上がった。
「うん、東城塞地区の発掘だからヘリウスさんに発掘の協力依頼だよ、先生から」
デリアは本来の目的を思い出したのか両手をポンと叩いた。
おいおい忘れるなよとヘリウスはため息をついた。
妙に抜けてるのがこの娘の特徴? である。
「また腰を痛めそうなところだな」
ヘリウスはそう言いながらウエストバッグを見た。
城塞は敵を避けるためか天井がものすごく低いところが多々ある。
しゃがんでの作業はやはりきつい。
「こいつの出番が増えそうだな」
収納バッグの中のモミモミわんこマッサージャーをみながらヘリウス・ジエルキスは一人言を呟いた、まあ……痛くなったらまた明正屋で湿布とか仕入れるか……
店長さんも可愛かったしな……
そう思いながら方向音痴のデリアにそっちじゃねぇぞとひとこといって遺跡の奥へ戻っていった。
本日の商品
『モミモミわんこハンディマッサージャー』
リオース商会
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