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大食い地獄  作者: 夏北 沖冬
お笑い芸人の場合
7/50

アフリカ(2)

 翌朝、目を覚まし部屋の窓を開けると、ホテルの玄関前の道路は、群衆でごった返していた。この近くで、食料の配給でもあるのだろうか。出発までは、まだ2時間近くある。ゆっくりコーヒーでも飲もうと、1階のカフェへ下りた。番組スタッフの3名は、すでに集まっており、プロデューサーの中倉氏が、携帯電話を片手に声を荒げていた。

「命の保障はできないって、どういうことですか?今すぐ、警察に保護してもらえるように要請して下さい」

 電話を切った中倉氏は、グラスの水を飲み干すと、頭をかきむしりながら、事態を説明し始めた。

「加藤さんからの情報によると、昨晩のニュース番組で、お二人のことが放送されたそうなんです。シゲさんの、アジア・ナンバーワンのコメディアンだというホラ話が、そのまま流されたらしいんです。そして、お二人の活躍を紹介するために、ネットの大食い映像が放送されちゃたんです。その後、ニュースキャスターが『日本という国は、自国で食料を生産せずに、外国から食料を買い占めておいて、このように浪費している。だから我が国には、高い価格を払っても食料が入ってこないんだ』というようなことを解説したんです。このニュース番組が放送された後、加藤さんの元に、知人や各マスコミから事実関係を問い質す抗議の電話が、引っ切り無しにあったそうです。とにかく、群衆の騒ぎが治まるまで、ホテルから一歩も出ないよう言われました」


「それじゃー、今日のロケは中止ですね。今後の対策を練る前に、とりあえず腹に何かを入れて、落ち着きましょう」

 唯一、英語の話せるマネジャーの大山が、手を挙げてウエイターを呼んだ。しかし「ホテル周辺の道路が混雑していて、食材が届かず用意できない」と断られた。 

 しばらくすると、ホテルの支配人が、こちらにやって来た。

「1時間後の、午前9時までにチェックアウトして下さい」

「残り2泊の予約が入っているはずですよね」

 中倉氏が、2本の指を立てて詰め寄ったが、支配人は首を横に振ると背中を向け、スーツの襟をピシャリと正して立ち去った。ホテルとしては、我々を滞在させていることで、面倒なトラブルに巻き込まれることを避けたいのだろう。

 


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