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大食い地獄  作者: 夏北 沖冬
お笑い芸人の場合
4/50

いつもの撮影にて(4)

「よっしゃー、デザートだー、ゴールが見えてきたー」

 7月の早い夜明けで、窓の外がうっすらと白み始めた頃、運ばれて来た杏仁豆腐を見て、、「ハウメニートリオ」の3人はハイタッチをして喜び合った。幾多のチャレンジ経験のある残りの4人は、うわべだけの笑みを浮かべ、決して気を緩めなっかった。

 3種類のアイスクリームが出された後、大皿に盛られた湯気の立つ料理が運ばれて来た。

「うそだろー、そりゃーないぜー」

 「ハウメニートリオ」の3人は、頭を抱えて後ろへ倒れる。ノブは、座布団の下に頭をうずめて、しばらく動かなかった。

 このデザート後に出て来る、ファミリーセットのパターンに慣れているベテラン4人は、不満気なリアクションをとった後、すぐに各自の小皿に料理を取り分けた。それを見た「ハウメニートリオ」の3人も、ようやく観念したようで、不貞腐れながらも食べ始めた。量や値段の異なる6種類のファミリーセットを食べ終えて、今回の挑戦は午前9時に終了した。


 「本当に全部、食べているんですか?、うまいこと編集しているんでしょう」

 帰りのタクシーの運転手さんから、そう訊かれた。この質問を何度されたことだろう。食べる量をごまかせるなら、どんなに楽か。しかし今のネット時代、ごまかしをすると、撮影店舗のスタッフあたりから、瞬時に情報が漏れ、叩かれることになる。

 

 「お帰りなさい」

 帰宅すると、妻のエミがパンをおいしそうに頬張りながら迎えてくれた。結婚当初、低血圧気味の妻は朝食を摂らなかったが、出産をしてから食欲旺盛となった。家事をしている以外は、常に何かを口に入れている印象がある。それに対して俺の方は、家ではほとんど食事をしない。

 新婚当初は妻の手料理が楽しみで、仲間の誘いを断って早く帰宅していた。 しかし大食いの番組が始まって以来、食べること自体が苦痛になってしまった。焼肉、お寿司、カレーライス、ラーメンなど大好物だった物を無理矢理、口に入れ続けているうちに、目にするのさえイヤになってきた。できることなら全く食べないで普段の生活をしたいが、胃が小さくなると番組の収録の際に困るので、豆腐、ヨーグルト、ゼリーなどで腹を膨らませている。


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