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大食い地獄  作者: 夏北 沖冬
ある女子大生の場合
21/50

大食いの行き着く先(2)

 仲の良かった大学の友人達は、帰省してしまい、生まれて初めての一人で過ごす年末年始は、寝ている以外、ひたすら食べまくった。上京してから今日まで、一度も自炊をしてこなかった私は、カップラーメンやスナック菓子を大量に買い込んで、食べるしかない。それらを食べ終えた容器や袋で、たちまち部屋は、ゴミ屋敷になってしまう。

冬休みが終わり大学へ行くと、これまで親しくなかった人達からも、気安く話し掛けられた。

 たくさんの学友やその家族から、写真撮影やサインをねだられ、一躍人気者になったものの、肝心の自分の家族とは音信不通のままだった。

 そればかりか、1月末にあるべき仕送りの銀行振り込みもない。今月分の家賃を支払ったら、賞金もほとんどなくなるため、そろそろアルバイトを探さなければなるまい。そう考えていた矢先、番組プロデューサーからの電話が掛かる。

「先日の大会は、お疲れ様でした。ところで、急な話で申し訳ないんだけど、来週の番組収録にゲスト出演をしてくれないかな?」 

「実は、内緒でテレビに出たことで、家族を怒らせてしまい、勘当同然の状態なんです。だからもう、テレビに出るのはよそうかと・・・」

「そこをなんとかならないかなー、戸辺ちゃんの食べっぷりが視聴者に大好評でさあ。また見たいーっていう要望が、局の方にもたくさんきてるのよ。ギャラの方も、この前に稼いだ賞金分くらいなら、はずめるんだけど・・・」

「えー、20万円も頂けるんですか?、や、やります、是非よろしくお願いします」

 再び家族に迷惑を掛けてしまうことも、頭によぎったが、仕送りまで絶ってきた親の仕打ちに対する反発心が、ふつふつと沸いてきた。

(こうなったら家族のことになんて、構ってられないわ。生活費を稼ぐためには、恥も外聞も気にしちゃいられない。自分の得意なことを発揮して、何が悪いのよ。狭い町に住んでいる田舎の連中は、華やかなテレビの世界に出演している私のことが、うらやましくて妬んでいるだけなのよ。あんな陰気な所になんか、一生帰らないわ・・・)


 前回は大会参加者の一人だったが、今回はゲストという扱いだけあって、ヘアメイクさんにきれいにセットしてもらった。化粧もテレビ映えするように派手目にしてもらい、あまりの出来栄えに、鏡の中の自分にうっとりしてしまう。

 番組収録は午後11時から始まり、私を含めて6名の出演者で、ファミリーレストランのメニューを順番に食べ尽くすという挑戦だった。

 ハンバーグやステーキ、チキングリルなどのメインメニューにはじまり、オムライスやカレー、丼などのご飯もの、各種のパスタ類、サラダやポテトフライ、スープなどのサイドメニュー をこなし、最後のデザートに至るまでを食べ終えたのは、午前7時を過ぎた頃だった。 たくさん食べることは全く苦にならず、私が半分以上を平らげたのではなかろうか。

 しかし普段寝ている時間に食べるという行為が、心身ともにつらく、午前2時以降は睡魔との闘いになった。

「戸辺ちゃんに頼りっ放しで、悪かったね。おかげで2時間くらい早く終われたよ。できれば、また出演してほしいな」

 「キングダム」のシゲさんを始め、出演者、スタッフ全員から、労いの言葉を頂いた。

 寝不足のまま大学へ行く気になれず、電車で帰宅した時刻は、午前9時をまわっていた。帰りにプロデューサーから渡された封筒を開けると、約束の20万円と共に、交通費として1万円が追加されていた。昨晩家を出てから戻るまでの12時間足らずで、21万円を稼いだことになる。

 1万円札をテーブルの上に、縦3列、横7列に並べて、しばらくの間、眺めながらにんまりした後、朝寝の床に就いた。

 


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