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大食い地獄  作者: 夏北 沖冬
ある女子大生の場合
13/50

大食いデビュー(1)


 

 きっかけは、大学に入ってすぐの新歓コンパだった。場所は、バイキング形式のイタリア料理店における90分、食べ飲み放題。

 簡単なサークルの活動紹介と、部長による乾杯のあいさつが終わると、それぞれの取り皿を手に、料理に群がる。

 まずはおしとやかに、生ハムとサラダを小盛りにして、席に着く。

 

 最後にまともな食事をしたのは、実家を出る前日の夕食で、すき焼きを腹一杯食べて以来だ。

 そのため、並べらた料理の数々は、どれもキラキラと輝いて見えた。

 野菜嫌いの私が、まず最初にサラダに手を付けるなんて、よほど身体が、ビタミンや繊維質を欲しているのだろう。

 

 四国から上京して2週間の食生活は・・・朝、メロンパンなどの菓子パンを食べ、昼は学食で一番安いかけうどん。帰りにスーパーに寄って、ポテトチップスなどのスナック菓子を買って帰り、夕食替わりにする毎日。

 まだ、ほとんどの引越し荷物は、ダンボール箱に入ったままであり、自炊のできる状態にない。とは言うものの、家庭科での調理実習以外、包丁を握ったことはないのだが。

 

 もともと、夏はテニス、冬はスキーを楽しむという、このサークルに興味なんてない。3日前の英語の授業で、隣に座ったレイコに話し掛けられ、強引に誘われて参加している。

 ちなみにレイコは、同郷の友人がこの大学にいない私にとって、会話を交わした記念すべき第1号の人物となった。

 本日の女子の会費は、2千円だけでよかった。しかし、親からの仕送りが月に5万円しかない私は、その2千円の支出でさえ渋っていた。そしたらレイコが、会費を出すから一緒に参加してくれと、手を合わせてまでして懇願してきた。私は、顔には仕方なさそうな表情を浮かべ、心の中では大きくガッツポーズをして、承諾したのだった。

 

 この3日間、今日の食べ放題だけを楽しみに生きてきたと言っても、過言ではない。当初は、この日まで絶食をして挑もうかと考えていた。しかし、胃袋が小さくなり過ぎて、食べられなくなっては元も子もない。胃袋の大きさを維持できる、安上がりの食事はないだろうかと、あれこれ思案した結果たどりついたのは、蒸しパンだった。

 ちょうど、学校帰りのスーパーにて、1個88円で安売りをしていた。ラップに包まれた三角形の大きな蒸しパンで、茶色の黒糖味と白生地の小豆入り、それぞれ3つずつと、牛乳を購入した。

 昼食は我慢して、朝・夕、1日2食、6食連続で、蒸しパンをかじり続けた。胃袋におさまった蒸しパンは、毎度一緒に飲んだ牛乳を吸い込んで、パンパンに膨れてくれた。

 


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