アフリカ(7)~第1章完
目を開けられず、体の自由も利かず、横たわったまま、暑さと肌寒い時間が、交互に繰りかえされた。
そのサイクルから察するに、約3日が経過した頃、頭上からパタパタと、大きな羽音がした後、体に重みを感じた。
時折、体のあちこちをつつかれている感触があったが、痺れたままなので定かではない。呼吸すらしているかどうかも、自覚がない。すでに肉体は滅んでしまい、思考だけが残っているのだろうか。
我々人類は、たくさんの生物を殺し、必要以上に食べるだけ食べておいて、いざ己が死んだら、火葬されて灰になるだけの存在になっている。今こうして、ハゲタカか何かの野生動物に食べられる方が、食物連鎖本来の自然な姿なのかもしれない。そんな達観したあきらめの境地になり、死にいく恐怖を感じることはなかった。
俺は飽食の時代に生き、これまで食べに食べてきた。特に、大食いの仕事をするようになって、ずいぶん醜い食べ方をしてきた。我が人生38年間で、アフリカの村人が一生に食べる量のゆうに10人分は、食べたのではなかろうか。
「おい、俺の身体をついばんでいるトリ君よ、しっかり栄養をつけて、子孫をたくさん残せよ。独り占めして、腹一杯食べるんじゃないぞ。腹八分目にして、他の仲間にも譲ってやれよ」
「わざわざ言われなくても、分かっているよ。食べ過ぎたら、体が重くなって飛べなくなる。飛べなくなったら、天敵に襲われて命がなくなる。そんな心配もせず、あきれるくらい食べて、ぶくぶく太っているのは、お前達人間だけだよ。脂肪が多くて、胸焼けがしてきたぜ。食後に、消化を助ける野草を食べるとするか。でも、お前さんの命、ありがたく頂戴したよ。ごちそうさま」
薄れ行く意識の中で、我が血潮の臭いとともに、最後にそんな声が聞こえたような気がした。
「いただきます」や「ごちそうさま」もろくに言わず、あらゆる命を無駄に食べてきた我が人生を思うと、「ごちそうさま」の感謝の言葉で送られる最期は、とても幸せな臨終に思えた。
<第1章完>




