超☆合☆金
…あたしは三里明美…よね?
多分…
ちらり、と目線をそっちに向ければ、オフィスビルの全面ガラス張りのそこには、あたしの姿…
…あたし…よね?
なんか、ほんの数十分見ないだけで、随分逞しくなったなー…って
ほら、顔の輪郭どころか、身体の輪郭まで、所々シャープっていうか
鋭角的っていうか
無機質っていうか
生き物っぽくないっていうか
太陽光を受けて、光り輝くっていうの…?
光沢があって…
背も高くなったし…
うん…あの…
巨大ロボ…とでも言ったらいいのかな…これ…
あれ…目から何か汁が…
黒いし…
…オイル?
「ナミダガおいる…カ……」
出た呟きは、あたしの声の筈なのに、どこか機械で作った合成音っぽい…
もう一度、オフィスビルを見る…
あぁー…なんか、ショボいデザイン…
もうちょっとカッコよく…いや、そういう問題じゃないんだけど…
なんかねぇ…泣けてくるのよね…
うぅ…
「ロボットカヨォォォォオオオオオ゛オ゛オ゛オ゛オ゛ッッッ!!!」
叫んだ瞬間、キュィィィイイイイイイイン!!とマイクでハウリングが起こった時みたいな耳障りな音が大音量で響き
ビルのガラスがビキィィイイイイイ!!と粉々に砕けた
ちょ、なによこれ、あたしゃ破壊神かよ!!
ぞっとして、ビルを注意して見てみたけど、とりあえず、皆さん避難してたみたいで怪我人とかはいないみたいだった…
良かった…と素直に思いたいところだけど、ビルを注視した時の、熱センサーを使ったのかな?というような視界に、若干欝度アップ…うぅ…
とりあえず、これ以上の被害を防ぎたいけど
一歩進んだだけで、街中では甚大な被害が出そうで、それもできない
あたしは、仕方なく 自衛隊にでも通報して、どうにかしようと思った…
警察とかは集まってきているみたいだけど、正直、彼らにどうにかできるとも思えないし…いや、だからって自衛隊だったらどうにかできるのか、って話だけど…
けど、この大きさでどうやって電話をしたら…?
…この身体、通信機能とかついてないのかな…うぅ…
解剖…いや、軍用に改造とかされたらどうしよう…
ってゆうか、人間に戻りたい…
何がどうなってこんなことに…
切なくなりながらも、どうにか連絡がとれないものかなー、と思っていたら
頭の中でプルルルルと電話の呼び出し音が聞こえてきた
すごい、思ったこととか無意識に実行されるんだ…あまり嬉しくないけど
≪はい、こちら防衛省≫
「ア、アノ…アタシ、三里明美ト申シマス」
≪はい、どのようなご用件でしょうか?≫
「アノ…アノ…今、都心二巨大ナろぼっとガ現レテ、オ忙シイト思ウノデスガ!」
≪…はい≫
「アノ…アタシガソノろぼっとナンデス!!」
≪…≫
「信ジラレナイトハ思イマスガ、何ナラ逆探知シテクダサイ
アノ、大型ノへりカ何カデ吊リ上ゲテ移動サセテモラエナイデショウカ…」
≪それはまた、何故です?≫
「コノママデハ、周囲ノ人タチに被害ガ及ンデシマイマス
ソンナコトニナレバ、アタシモ辛イシ、何ヨリ家族を悲シマセタクナイデスカラ…」
≪…そうですか、今すぐそちらへ向かいます≫
「シ…信ジテイタダケルンデスカ…?」
≪勿論です、逆探知の結果からも貴女の言葉が嘘ではないことは分かっています≫
流石防衛省、仕事が速い
なんとか早期解決するといいな…うぅ…
≪しかしそれよりも貴女のその哀しそうな声…
今すぐこの胸に抱きしめて慰めてさしあげたい≫
「ハ?」
え? なぐ…? …は? …ぇえ??
ピコーンッ
え?
ピコーンッ
え?なに??
ピコーン…ピコーン…ピコーン…ピコーン…
ピコンピコンピコンピコピコピコピコ!!!
な、なに、なになになになにえ?!
潜水艦が登場する映画でこんな感じの効果音聞いたことあるよ?!
えっ、魚雷?! ぎょ、いや、水の中じゃないから、え、ど、ぇええ?!
なんかわかんないけど近づいて来る!!
物凄い勢いで何かが近づいて来るぅぅううううう!!!
その瞬間、背中からシュゴッ!!っと何かが吹き出るような感じがして気がついたらあたしは空へ……
マージーでーかぁぁぁああアアアア゛ア゛ア゛ア゛ッッ!!!
空も飛べるとかもう笑うしかないわ、あっははははは!!!
やば、頭おかしくなりそう、とか こんな時こそ冷静に!!
とか、現在あたしの頭の中にはなんだか何時ものあたしらしからぬキャラが、うわ、これ多重人格とかいうやつだったらどうしよう!
などとぐるぐる考えつつも、しかし今はどこへ向かうのか自分でも分からず、兎に角空を真っ直ぐ真っ直ぐ飛ぶあたしの背後から何か追いかけてくるぅぅううううう!!!
そこへ頭の中に突然、ピローンとか電子音が…!
≪突然どうしたんですか可愛い人、
怯えることは何もありません、さぁわたしの胸に飛び込んできて下さい≫
ひぃ! もしかしてさっきの防衛省の人?!
気付きたくなかったけど後ろにも視界っていうかカメラがあるらしくって、それ、え、戦闘機だよね?!
それ戦闘機だよねぇぇえええッッ??!!
「イヤァァアアアアアアアッッ!!!」
背後でドゴォォオオオオオン!!とか、これ知ってる! この音知ってる!!
前にテレビで見たもん、これ音速の壁を破った時の衝撃音でしょ絶対そうだよ!!!
≪どうしたんですか突然…は!
もしやこれが噂に聞く渚で恋人と追いかけっこ?!≫
違いますっ!
ちーがーいーまーすぅぅぅぅううううう!!!
≪ふぅむ、こういう時の科白は…
思い出しました「ははは待て待てこいつぅ☆」ですね!≫
「ギャァァァアアアアアアアッッ!!!」
その後、彼らの姿を見たものはいな…いや、世界中で赤裸々に目撃された
おしまい。