真夜中の公園で 第四話
ペンダントは、天界人さんに取り上げられてしまった。
あれがないと、移動魔法が使えないよ。
ぼくは天界人さんの腕の中でしょんぼりとうなだれた。
「隊長」
天界人さんでもノアくんでもない声が、近くで聞こえた。
「全員揃いました。そろそろ……なんすか?そのちまっとした物体は」
「よく見ろ、アラン。獣の赤ん坊だ」
また別の声が、聞き捨てならないことを言った。
赤ちゃんじゃない!
ムッとして、声のしたほうを見る。
(ぼくはとある出来事のせいで、その単語に敏感になっているのだ。
トラウマになっている、と言ってもいいだろう)
そこには、きらきらした人物がふたり立っていた。
髪の色がそれぞれ金と銀。性別不明のおとなのひとだ。
初日に見学した街で、このひとたちによく似た彫刻や絵画をたくさん
見たような気がする。
離れたところに、同じようなきらきらのひとたちが整列しているのも見えた。
全員天界人に違いない。
オーラだけでも眩しいのに、黄金の鎧ようなものを身につけていて、きらきら度が
半端ない。
うぅ、眩しい!
「……隊長。その赤毛のガキは何者ですか?」
金色のひとが、腰の剣をスラリと抜いたのでギョッする。
銀色のひとも、いつのまにか弓と矢を手にしていた。
ふたりはその武器をノアくんに向けた。
「フギャアッ!!(やめて!!)」
「アラン、ジェローム、そんなものは仕舞え。この子が怖がるじゃないか」
ぼくがわめくと、凛とした声が響いた。
天界人さんだ。
『隊長』って呼ばれているから、このひとも軍人さんなのかな?
剣より楽器のほうが似合いそうだけど……。
「しかし隊長。このガキ、すごい殺気放ってますよ?
公園中に満ちている魔も、こいつの仕業では?」
剣はおろされたけれど、ぼくはその金色のひとをキッと睨みつけた。
ノアくんにそんなとんがった剣を向けるなんてひどい!
金色のひとがぼくを見て目を瞬き、フイッと逸らした。
「どうした?アラン」
「…いや、あの獣の赤ん坊、俺のことジーッと見てるんだ。懐かれたらどうしよう。
ほら、隊長って心が超狭いだろ?」
「シッ!聞こえるぞ!
それより、あの隊長が小さい獣を愛でてるなんて、ちょっと怖くないか?」
「ああ、あんな蕩けた顔してても、頭の中ではどす黒いことを考えてるんだろうな、
なんせ隊長だから」
金色のひとと銀色のひとはヒソヒソ声で話しているけど、
ぼくの猫耳はしっかりとそれをキャッチした。
ノアくん、助けて!!