表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/16

真夜中の公園で 第二話

『バカッ!戻るんだ!』

らしくない乱暴な口調が気になったけど、ぼくはシーツおばけに近づいた。


「ナー?ニャニャ?(ひとり?何でこんなところにいるの?)」

おばけに向かって問いかけたけど、返事がない。

くり抜いてあるふたつの穴から、瞳が覗いていた。

綺麗な緑色、やっぱり、あの子だ!

「フミー?ニャアーミャアー(ぼくのことわかる?ほら、おまつりで君と同じ格好してた)」

そこまで言って、はっと気がついた。

そうだ、ぼく、今、猫なんだっけ。

ひとに戻らないと、言葉も通じない!

急いで呪文を唱えようとしたら、からだがふわっと浮き上がった。

「おにいちゃん?おにいちゃんなの?」

ぼくを胸に抱いたシーツおばけが、ふしぎそうに尋ねてくる。

「ナー(そうだよ)」

しっぽをふって返事をすると、ギュウッと抱きしめられた。

ぐ、ぐるぢい……。


「ミズキくんを抱き潰すつもり?」

ノアくんの声が聞こえた。

腕の力が弱まり、ほっと振り返ると、ひとの姿に戻ったノアくんが立っていた。

怒ったような顔でぼくたちを見ている。

「あの街で、ぼくたちとずっと一緒にいた子だよね?怪しいと思ってたんだ」


いやいや、ここで怪しいのはぼくたち魔界人なのでは?

思わず首をふるふる横にふると、ノアくんの眉がますます寄った。

「ミズキくん、この子は人間じゃない。

小さな子どもが、なぜ真夜中にひとりでこんなところにいる?

あの遠い街からどうやって短時間でここまで来た?

どうして、君の正体を見破ることができたんだ?」

? ? ?

そう言えばそうだ。

もしかしたら、この子は………。

ほんもののおばけ?

「フミャア!ニャッ!(わあ!おろして!)」

おばけの腕の中でジタバタ暴れていると、フッとシーツの感触がなくなり

柔らかい布の感触と甘い香りに包まれた。

あまりの心地よさに力が抜け、くったりとしてしまう。

「何もしないよ。暴れないで?」

聴いたこともないような、うるわしい声が上から聞こえた。

ん?

顔をあげると、宝石のような瞳がぼくを見下ろしている。

小さい子どもおばけに抱っこされていたはずなのに、

なぜかおとなのひとに変わっていた。

白い服に身を包んだ、性別不明のとても綺麗なひとだ。

緑色の瞳がきらきら煌き、黄金色の長い髪がふんわりと風になびいていた。

あれれ?ぼく、夢を見ているのかな?

こしこしと目を擦っていると、そのひとが、ぼくのその手(前足)を掴んだ。

「こんなにかわいい姿も持っているんだね」

ぼくの肉球をふみふみ押しながら、音楽のような声で囁いた。

このひともジャン先輩に負けず劣らずの美声で、再び力が抜けそうになる。


そのひとはぼくの首にぶらさがっている魔石のペンダントを手にとった。

「あの街をパトロールしていたら強い魔を感じて、ずっと見張らせてもらってたんだ。

毎年この日は、君達の仲間がシャレにならない悪ふざけをしてくれるからね。

困ったもんだよ」

やれやれとため息をつかれ、ぼくは腕の中で小さくなった。

……すみません。

耳としっぽをしゅんとさせ、お詫びのポーズをとる。

修学旅行生が、羽目を外してはっちゃけてるんだろうな。

気持ちはわかるけど、ひとさまに迷惑をかけちゃいけないよね。

……ところで、このひとは何者?


「天界人か」

はて?と首を傾げていると、ノアくんが答えをくれた。

ああ、なるほど!

天界人なら、このきらきらした容姿も魅力的な声も納得できる。


すごい!初めて天界人を見たぞ。

声まで聴いちゃった!それもこんな近くで!

魔界に帰ったら、みんなに自慢しようっと!


「ミズキくんを返してくれませんか?」

ミーハー気分で天界人さんをウットリ見ていたら、ノアくんの尖った声が聞こえてハッとした。

おそるおそる振り返って見たノアくんは、笑顔だけど目が笑ってない。

「おいで、ミズキくん」

にっこり。

「ミ、ミャ(う、うん)」

ぼくはこくんと頷き、ノアくんの伸ばした腕に飛び移ろうとした。

すると、天界人さんの手がぼくのその動きを封じた。

ええ!?なんで?



「君を天界に連れて行きたいな」


天界人さんが、澄んだ旋律のような声で、ぼくに囁いた。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ