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招かれざる客ふたり 第一話

「すみずみまで見たけど、やっぱり真っ白だよ?黒い部分はまったくないな」


ノアくんはわきの下(?)に手を入れて、ぼくの体を持ち上げた。

「ミャオン…(うう…)」

失望と疲労でグッタリと力が抜けてしまう。


試験のあった翌日の晩。

ぼくは再び『変身魔法』で猫の姿になっていた。




昼休み。

ぼくは『変身魔法』のレポート30枚を提出するため、

教官棟のサム先生のところに行った。

サム先生はレポートをパラパラ捲り、すぐに大きい花丸スタンプを押して返してくれた。

(嬉しいけど、寝ないで仕上げた力作なのにそんなにアッサリ……うう、複雑だ)

お礼を言って戻ろうとしたぼくを、先生が呼び止めた。

そして、微笑みつきでこう言ったんだ。

『高等部に上がる前に、昨日の“変身魔法”の実技はマスターしておくように。

もし手こずるようなら、ここに来なさい。特別に手とり足とり教えてあげるから』

ぼくはゾッとして部屋を飛び出し、廊下で待ってくれていたノアくんに相談した。



で、今に至る。

夕食の後、ノアくんは『変身魔法』の特訓に付き合ってくれた。

なのに、何度やってもなぜか白猫に変身してしまう。

諦めの悪いぼくは、黒い部分が少しでもないかと、ノアくんに体中確認してもらったんだ。


「呪文は合ってる。試験前の練習の時もできたんだよね?」

「ナー…。(うん…)」

ぼくはノアくんに抱き上げられたままうなだれ、力なくしっぽを揺らした。

「まだ時間はあるよ。気を落とさないで?

たくさん練習すれば、きっとできるようになるって」

ノアくんが慰めるように言ってくれた時、

コンコンとノックの音が聞こえ、ふたりでドアの方を見た。


返事もしていないのに、静かにドアが開く。


「学生寮はペット禁止の筈だけど?」

そう言って入って来たのは、高等部の制服の金髪と白銀ふたりだった。

どちらとも話したことはないけど、有名なので顔だけは知っている。

金髪に蒼い瞳のひとは、去年中等部の生徒会長だったエル先輩。

白銀短髪で褐色の肌を持つのは、同じく体育委員長だったジャン先輩だ。


ノアくんは、急いでぼくを胸の中に抱きこんだ。

「白猫?……ははあ。それでか」

エル先輩が、ぼくを見て納得したように頷いた。

「あの。

エル先輩と、ジャン先輩ですよね?ぼくたちに何か御用でしょうか?」

ノアくんが戸惑ったような声で、先輩達に尋ねた。

ひとの言葉を喋れないぼくは、ただおとなしくノアくんの腕の中にいるだけだ。


「暇つぶしに、注目のふたりの顔を見に来たのさ」

そこで初めてジャン先輩が口を開いた。

女子生徒に大人気の、男らしい低い声だ。

「注目?何のことですか?」

ぼくとノアくんは同時に首をかしげる。


「おや?まだ知らないのかい?」

エル先輩が、楽しそうに蒼い瞳を煌かせた。

「試験部屋の前の廊下に、高等部進学試験の結果が貼り出されたんだ。

総合点の上位30名」

それは知ってる。

どうせ、エリートのAクラスのひとたちが独占してるんだろ?

ぼくもノアくんも関係ないので、見に行かなかったんだ。

「それから、科目別の上位10名。

まあ、ほとんどの顔ぶれは総合と変わらないらしいが」

エル先輩は、ぼくたちふたり(?)をじろじろと見比べながら話し続けた。


一方、黙っているジャン先輩の視線は、ぼくだけに向けられているように思える。

さっきからずーっと無表情だから怖いよう。

寒くもないのにぷるぷる震えていると、ノアくんが優しく撫でてくれた。


「サム先生の『変身魔法』」

エル先輩のそのひと言に、ノアくんの手が止まる。

「他の科目は上位10名までの発表なのに、

その科目だけは、なぜか最下位の氏名も貼り出されていたんだよ」


なんだってえ!?

全身の毛がザッと逆立ったのがわかった。

ノアくんの腕の力も強くなる。


「『変身魔法』の第一位はノアール・フラム。満点だ」

ノアくんに向かってそう言った後、エル先輩の視線が下がった。

「それから、最下位はミズキ・アソウ。……仔猫ちゃん、君だよね?」

「……………………」

「あれ?違うの?」

「…ミャ(…そうです)」



サドせんせい!!!



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