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真夜中の公園で 第十話

空に稲妻が走るのが見えた。


「ウニャッ!(ひゃっ!)」

張り裂けるような恐ろしい音がして、前足で頭を抱え込んでしまう。


「ミズキくん、どうかした?」

ど、どうって、今の聞こえたでしょ?天界人さん!

こんな、広くてなんにもない所にいたら危ないよ!安全な場所に避難しないと!

「雷が怖い?そう言えば、魔獣が現れた時も震えていたね。

うーん、やっぱり君は、天界のほうが合うんじゃないかなあ。

むこうはいいよ?静かでのんびりしてて。

君を煩わせるものは何もないし、三食昼寝つきの快適な暮らしはこの私が保証する。

どうかな?」

天界人さんのセールストークに、プルプルと首を振った。

ぼくはノアくんと一緒に魔界に帰るんだってば!

その前に、早くここを離れないと!雷が落ちてきちゃうよ!

身振り手振りしっぽ振りで、みんなに必死に訴えていると、サム先生がスッと手を上げた。

すると驚いたことに、雷鳴がだんだん小さくなり、集まってきていた雲がサーッと散っていく。

きらきら集団が再びどよめいた。


わあ、すごいっ!すごいよ、先生!もう安心だね!

ぼくは前足を合わせ、尊敬のマナザシで先生を見つめた。


ノアくんがぼくを見て、次にサム先生を見た。

「カッコつけて……ずるいぞ。アレ、自分で呼んだくせに」

「なっ……偶然です」

「ふん、どうだか。あんなこと言われてムカついたんだろ?

ひとには説教しといて、私情全開じゃないか」

「何を仰ってるのかわかりませんね」


ふたりとも、いったい何の話をしてるんだよ。

今は仲間割れしている場合じゃないでしょっ!

もう……………………………ぐー……………………………はっ!今、ぼく、寝てた?

だってだって、今日は朝早かったし、移動も多かったし、いろいろあって疲れちゃって……。

ドキドキしながらこっそり顔を上げると、ふたりはまだ睨み合っていた。



そして数分後。

「本人もその気はないようだし、勧誘は諦めてください。

何よりその子は、彼の大切な友人なんです」

ようやく現状を思い出してくれたサム先生が、天界人さんに言った。


「友達?」

「獣の赤ん坊が?」

「…おい」

「ああ…」

「…やっぱり孤独なんだな」

「かわいそう…」

「アラン。泣くなよ」

「うるせー!目にゴミが入ったんだよ!ううっ…」

しんみりとした声と空気が漂ってくる。

ノアくん、何か誤解されているみたい。


「この子を返したら、おとなしく引き上げてもらえます?報復とかナシで」

銀のひとの問いかけに、サム先生は頷いた。

「私が責任を持って連れて帰ろう。もちろん報復などない」

「本当に?絶対?……わあっ!ごめんなさい!信じますっ!」

先生に冷えた眼差しを向けられ、銀のひとはカチンと固まってしまった。

「ただ、まだこちらの仕事が残っている。それが終わってからでいいだろうか?」

「全然OKっす!」

固まった銀のひとに代わり、金のひとがハキハキと答えた。


先生は、お仕事でたまたま人間界に来ていたんだね。

偶然に感謝しなくちゃ!


「名残惜しいけど、お別れだね」

天界人さんがぼくの頭を撫で、それから地面に降ろしてくれた。

ようやく解放されて、ウーンと伸びをする。

ふう、緊張して肩凝っちゃったよ。

身繕いもしたいけど、今は我慢しようっと。


「ミズキくん」

さっそくノアくんのもとに行こうとしたら、天界人さんに呼び止められた。

「楽しかったよ。またいつか会おうね」

冗談じゃないよ!

ぼくはプルプルプルプルと高速で首を振った。

「つれないな。ああ、そうだ。これ」

天界人さんが手にしているものに気づいて、ハッとする。

「ナッ!ウニャッ!(ああっ!ぼくのペンダント!)」

「君と巡り合えた記念に貰っておくね」

「ミャッ!(返してください!)」

天界人さんに前足を伸ばしたと同時に、バサッと大きな音がした。


「フミギャアッ!(わあっ!)」


突然の強風に煽られ、ぼくの小さなからだが宙に舞い上がってしまう。

「ミズキくん!」

どこからかノアくんの焦った声が聞こえた。


そして

「大丈夫か?」

気がついた時には、サム先生の腕の中であおむけにひっくり返っていた。

うわあ、最悪!

急いでからだを起こしたぼくは、目の前の光景にギョッとする。

だって、天界人さんたちの背中から翼が生えているんだ!ん?生えている…んだよね?

窮屈な場所から解放されるような『バサッ』という音と共に、次々と大きな翼が現れている。


「準備が出来たようだね。行こうか」

手を上げ、部下の人達に合図を送った天界人さんが、純白の翼を優雅に広げた。

「またね、ミズキくん」

ぼくに片目を瞑ってみせると、大きな羽音を立てて空に舞い上がって行く。

それを追いかけるように、金のひと銀のひとが飛び立ち、きらきら集団が続いた。


一行はきれいに隊列を組み、一番のっぽのビルよりも高く高く飛んで、

やがて見えなくなっていった。


………天界人さん。

「フミャア~(ぼくのペンダント返してよお~)」


真夜中の公園に、ぼくの悲しい鳴き声が響いた。


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