真夜中の公園で 第六話
漆黒の髪に、金色の瞳の男の子。
彼は黒い軍服のようなものと、同じ色の長いマントを身に纏っている。
その立ち姿はとても堂々としていた。
この子は誰!?ノアくんはどこ?
なんて、とぼけたことは言わない。
きっとあれが、ノアくんのほんとうの姿なんだ。
試験のことがなかったら、信じられなかったかもしれないけど。
「ナー…?(ノアくん…?)」
おそるおそる呼びかけると、男の子は小さく頷いたように見えた。
「なるほど、黒に金色。見た目は情報通りだな」
天界人さんが、ぼくの顎を撫でながら、感心したように言った。
うう…くすぐったい。
「なあ。あれって、もしかして……」
「うん。色は合ってるな」
「でも、なんでこんなところに?」
「本当に本人か?若すぎない?」
「色以外の情報が、ほとんどないもんねえ」
「ふうん、けっこうカッコイイね。将来が楽しみ」
「隊長より、優しそう……」
ぼくの猫耳に、天界人集団のさまざまな声が入ってくる。
そして、
その中に唸るような声や荒い息遣いがだんだん混じって聞こえてきた。
さっきよりもずっと近い。
ぼくたちは、芝生の広場にいた。
昼間、ひなたぼっこやピクニックをする人間が集まる場所で、
周りにはたくさんの木々が生い茂っている。
その木立の間から、一匹の黒い獣がのっそりと姿を現した。
そして、また一匹。
まるで木の間から沸いて出るように、次から次へとそれは現れる。
その黒い獣は、狼の形をしていた。
グルグルと喉をならし、眼を光らせ、獣の匂いを撒き散らし、
ぼくたちのいる場所に近づいてくる。
異様な光景に、またからだが震えてきた。
ぼくだって魔界人のはしくれなのに、情けないよう。
でも、ぎりぎり中学生のぼくにはハードすぎるよ!
数え切れないほどの狼が、ノアくんの後ろに集まってきていた。
まるで兵隊のように、きれいに並び始めている。
大きい狼がノアくんの隣に立ち、ノアくんはその背中に手を乗せた。
ノアくん……。
それを見ていたら、なんだか胸がチクンとした。
カチャリと、金具の鳴る音が耳に入った。
天界人さんの集団が、剣や弓などの武器を用意している。
「おい、ジェローム。おまえの剣貸せ」
「えー?やだなあ……」
「いいから貸せって!おまえには自慢の弓があるだろうが!!」
近くでは、金のひとと銀のひとが揉めていた。
そして、天界人さんはというと
ノアくんたちに涼しい顔を向けたまま、ぼくの背中を撫で続けている。
「隊長」
金のひとが、キリッとした顔でぼくたちに近づいてきた。
手にはまっすぐな長剣を持っている。(貸してもらえたんだね)
「手は出すな」
「しかし……」
「心配するな。向こうからは何もできないさ。この子がいるからね」
天界人さんはそう言ってぼくに笑いかけた。
え~?ぼくって人質……もとい、猫質?
すごくおおげさなことになってきちゃった!どうしよう。
「あのう、ちょっといいですか?」
前足で頭を抱えていると、銀のひとが手を上げて発言した。
「この獣の赤ん坊、あの少年のペットかなんかなんでしょ?
詳しい経緯は知りませんが、今のこの事態はこの子が原因なんですよね?
獣を速やかに向こうに返却したら、まるっと治まるのではないでしょーか!」
「ニャッ!(賛成!)」
ぼくは銀のひとの意見に賛同し、右前足としっぽをまっすぐ上げた。
「申し訳ありません、隊長!勘弁してください!!」
銀のひとが、いきなり上半身を90度以上に折りまげた。
「まだ何も言ってない」
「だって…だって、目がコワイ……」
銀のひとは金のひとの後ろにササッと隠れた。
「バッ!俺を盾にするなよ!」
天界人さんは揉み合っているふたりをスルーして、
前足を上げたままのぼくを見下ろした。
「君はどう思う?」
「ナ?(え?)」
「このまま君を彼に返すとする。それで事態がスッキリ治まると思う?」
天界人さんの質問に、前足を下ろしながらオズオズと頷く。
「ミャー…?(思いますけど…?)」
「甘いな、ミズキくん」
天界人さんは、首を振り、憐れむ様な目でぼくを見つめた。




