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補色

作者: qmmkruz
掲載日:2026/06/09

企画用に書いた短編です。

色の比喩で、距離と温度の話をしています。


あの人は藍色。調和と平穏の人。

私の色は…。



「どうした。もしかして…」


「はい。実装の誤りを見つけてしまって、少し。

 気が付いたら終電を逃してたので。

 まー、ちょっとやってくかって。

 すみません」


てへっとおどけたポーズを演出してみる。


「そっか。じゃ、朝礼の後に頼む」



「お・ま・た・せ。じゃ、聞かせてくれ」


隣の椅子に腰かけた。コロンが揺れる、ほんのわずかに。

隣席の同僚、今日は終日外出だ。


「ええと、まずですね…」


鋭い目付き。

こういうときに、この人はこうなる。

その人相の悪さ、ちゃんとわかっているのか心配になる。


いくつかのやりとり。午後イチには作業は完了するだろう。

機械的を装って論理的に話した、つもりだ。


「なるほど、わかった。よく纏まっている。

 調査結果をまとめて、あちらにも送っておいてくれ。

 午後イチか…、コアタイムが過ぎたら速攻で帰れ。

 徹夜なんて、効率を落とすだけだ」


おっしゃる通り…あれ、寄ってきてる?

香りが、近い。

小声、ささやき。


「コアタイムなんぞ待たないで帰ってもいいぞ。

 打刻忘れで、な」


うなずく。それしかできなかった。

これ以上の迷惑はかけたくない。でもかけたい。


「いつもありがとう。でも無理すんな。先は長い。

 まさに、”♪ The long and winding …”って。

 そんな古い歌、知らんよな。

 何かあったら言ってくれ。よろしく頼む」


知っています。知りました。ここへ来てから。


赤色、かもしれない。何となくそう思う。


6色のアラベスク。

距離を置いて眺めたのなら、それは無彩色となるのだろうか。

知ってみたい。でも知りたくは、ない。


ただ私は、あの人の、オレンジ色に、なりたい。


読んでくださり、ありがとうございます。

補色という言葉の持つ“寄り添い方”を、少しだけ借りました。


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