3話
「それじゃ、軽く質問させてくれ」
詰め所の中、指示された椅子へと座った新太に、門番の男はそう言って向かい合う。
石造りの部屋の中には窓が無く、明かりは壁に付けられたランプのみ……どことなく重苦しい雰囲気だ。
「まずは名前、年齢。それから出身地は……東の島国だったな」
「あ、ああ。名前は新太、年は15だ」
黒髪、黒目という特徴的な出で立ちに、門番の男は新太の言った“東の方”というのを、イイ感じに“東の島国”と思い込んでくれていた。
実際には、新太は“東の島国”がどんな国なのかはおろか、名前すら知らないのだが……。
「アラタ、15……と。じゃあアラタ、ブルーミングに来た理由はなんだ?」
「理由は特にないな。強いて言えば……ここに街があったから、か?」
「なんだそりゃ?」
記入していた書類から顔を上げ、門番の男は不思議なモノを見るような目で新太を見る。
しかし、見られた当の新太自身も困ったような顔を浮かべているだけであり、詰め所の中にあった重苦しい雰囲気はどこかに飛んでいってしまっていた。
「ま、まあいいか。ひとまずは旅の途中で立ち寄った、という形にしておく。いいな?」
「あ、ああ。それでいい」
「次はだな……」
そこからも、滞在期間であったり、有事の際の連絡先であったりと、様々なことを訊かれたものの、新太には何一つ応えることが出来ず、調書の中身はほとんど門番の男のアドリブで埋まっていった。
そのため、調書を作り終えた頃には、新太よりも門番の男の方が疲れているという、不思議な状況になっていた。
「次が最後だ……。この調書に記したことに嘘はなく、ブルーミングの街に被害を及ぼすようなことはしない、よな?」
「ああ、しない。門番のおっちゃんにこれ以上迷惑をかけるわけにもいかないしな」
「よぉーし! これで終わりだ! これでアラタもこの街に入れるぞ」
そう言って、門番の男はアラタの前に“ブルーミング滞在許可札”と書かれた木の札を出してくる。
そして、それと一緒に丸めて紐で縛ってある紙もアラタへと渡してきた。
「その札があれば、10日間はこの街に滞在できる。その後も滞在したいなら、期日までに身分証を作って、門の詰め所で通行税の支払い後、正式な許可を取ってくれ」
「ああ、分かった」
「俺のおすすめは、どこかのギルドに所属して、ギルド員になることだな。この街には冒険者ギルドや商人ギルド、職人ギルドがあるから、時間と金が出来たら入っておくといい」
「了解」
「あと宿だが、俺の知り合いがやってる安宿に話を通しておいてやる。2日くらいは面倒をみてくれるはずだ」
「えっ!?」
「宿の場所は、その紙をアガロに渡せば案内してくれるはずだ。アガロはこの部屋を出たら壁沿い左の方に行けば良い。会ったやつに訊けば教えてくれるだろう」
いったいいつ準備したのか……あまりにも手際よく伝えられた内容に、新太は頭を混乱させつつも、「じゃ、ブルーミングの街を楽しめよ、アラタ」の言葉に、勢いよく頭を下げた。
そうして、「何から何まで、ありがとう!」と門番の男に伝え、詰め所の外へと足を向けたのだった。
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