2話
ブルーミングへの道すがら、新太は残った1ページに目を落としていた。
なぜならそこには、今までのページとは違い、文字がびっしりと書かれていたからだ。
「黒目黒髪は目立つが、いないわけじゃない……か」
びっしり書かれた文字の中で、新太は自分が“15歳ほどの黒目黒髪の少年”として転生していることを知った。
15歳ほどの男として転生していたことは最初のページに書いてあったが、黒目黒髪という情報はここにしか記されていなかったからだ。
そして、それがこの世界……もとい、今いる大陸?では珍しい特徴であることも。
「あーでも、東の出身って言や勝手に勘違いしてくれるみたいだな」
と、至れり尽くせりといったように、その特徴のごまかし方まで記載してくれてるのは、まさに入門書にふさわしい。
他には成人年齢が15歳であることや、結婚なんかも15歳でできること。
そういった細々としたこの世界の“常識”のようなものも記載されていた。
なんともありがたい本である。
「なんの意思かは分からんが、上手いこと活用させてもらうとするか」
そう思考をまとめて、新太は歩みを早める。
森を抜け、ブルーミングの街が見えてきたのだ――
◇◇◇◇
ブルーミングの街は、2階建て程度の塀に囲まれた、それなりに大きな街だった。
門は新太の倍くらいの高さがあり、ワゴン車くらいなら上に荷物を載せてても余裕で通れそうな大きさがある。
まさにアニメや漫画、ゲームなどでよく見るファンタジー世界の街……といった感じだ。
「おい、お前。街に入るのか?」
はぁ~……と目の前の街に謎の感動を覚えていた新太は、横から掛けられた声に、我を取り戻す。
どう新太に声を掛けたのは、門番らしき装備を身にまとった男で、装備の隙間から見える二の腕は、筋肉でとても太く見えた。
「街に入るなら、通行証か身分証を見せろ」
「身分証? いや、そんなのもって無いですけど……」
「なんだ、無くしでもしたのか? なら、通行税が必要になる」
「税、ですか?」
「ああ、滞在1週間で銅貨5枚だ。そのくらいなら持ってるだろ?」
そのくらい、と言われようとも、新太の懐には銅貨1枚すら入っていない。
そもそも、先ほど読み込んだ入門書には通行税はおろか、お金についての項目は一文字も書かれてはいなかった。
……どうやら入門書といえど、記載内容に抜けは多いようだ。
「申し訳ありません。こういった街に来るのは初めてなため、そういったことに疎く……」
「あぁ? 金のことも知らないとか、どんな田舎から来たんだよ」
「えーっと、東の方……ですかね?」
「そりゃ見りゃ分かるが……」と、門番の男は怪訝そうな顔を隠そうともせずに呟くと、わざとらしく大きな溜息を吐き、新太に「着いてこい」と門の横にある詰め所を指で示す。
不審者扱いになんともいえない気持ちになりつつも、ここで憤ったり逃げたりする方が不審か……と、新太は男の後に続いた。
NEXT.街に入ろう




