1話
落ちてきた本は、読む……というよりも開けば一目で分かる程度には、内容が簡素だった。
どうやら新太は“異世界”に来てしまったらしい。
それも、転移ではなく、15歳ほどの年齢で転生――という形で。
「お決まりのチートらしきチートはなし……。強いて言えばこの変な本くらいか」
表紙に“異世界入門書”と書かれたその本は、どうやら異世界転生において、新太に授けられたアイテムだと本の中に書いてあった。
新太にしか文字が読めず、横から中を覗こうとも白紙に見える……らしい。
らしい……というのは、現状それを確認するすべが無いためだ。
そのため、またそれは折を見て確認すればいいか――と思考に区切りを付け、新太は次のページを開く。
すると、そこには道案内レベルの簡単すぎる地図と、周辺の情報が載っていた。
どうやら、新太は今“ブルーミング南の森”にいるようで、地図にはそこから北の方に進めば“ブルーミング”の街に行けることが書いてある。
「この街に行くのが、最初のミッションって感じか。ゲームのチュートリアルみたいだな」
新太が勤めていた会社が光の無い漆黒になる少し前、まだ夜の闇くらいの黒さだった頃。
ほんの少しの余暇での趣味は“没入シミュレーション”と呼ばれるゲームをやることだった。
ほぼ無一文からゲームを始め、苦しい時代を乗り切り……事業や生活を良くしていく。
自らもそうなってやるぞ――と、まだ反骨心を持ってゲームをプレイしていた。
「……懐かしいな。高圧洗浄機を振り回したり、廃船を解体したり、農場を経営したり、重機を使ってビルを建てたり……いろんなゲームをやったな……」
操作性に癖があったり、妙に借金を背負わせてくるタヌキがいたりと、苦しい事も多かったが、新太にはどれもこれも楽しい思い出だった。
成り上がっていく快感だけではなく、めんどくせえ依頼に愚痴りつつも、達成したときに喜ぶ依頼主達や、住民達。
そんな自己満足でしか無い要因新太にはとにかく嬉しかったのだ。
勤めていたブラック企業では味わえなかった喜び……それを得られるゲームの中が、とても羨ましかった。
願わくばあんな人生を送ってみたいと――
「……送れるんじゃねぇか? 今なら」
新太に天恵が奔る。
図らずも、若い身体になり、時間を縛る仕事もなく、新たなる土地で生きることになった。
そう、これはチャンスなのだ!
「ふ……ふふふふふ……やってやる……ッ! やってやるぞ、成り上がり! 俺の求める、QOL高い生き方……最高の人生ってやつを!」
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