オマケ短編『日常』
タイトル『日常』
登場人物:幾久・比名琴・嶋関
新婚旅行の沖縄は、良い思い出になった。
邪魔な嶋関が居なかったので、甘い時間を思う存分……思い出しては顔がゆるんでしまう。
恋愛小説も連載が決定して、順調に原稿も仕上がった。
天気も良いし、昼から比名琴と散歩にでも行こうかな?
椅子から立ち上がり、伸びをする。
静かな環境は、比名琴と付き合っていた頃と変わらない。
もっと、騒がしさがあれば過去も変わったのだろうか?
ふっ。自分の愚かさに笑みが漏れ、今を大事にすべきなのだと再認識する。
ドアを開け、隣の部屋を覗いたが比名琴の姿は無い。
階段を下り、台所やリビングを見渡す。
あれ?外に出るとは、言っていなかったはずなんだけどな?
洗濯を干す時間でもないし。
庭を見ようと、窓際に近づく。
ソファーの影に隠れ、見えなかった比名琴の姿を見つけた。
声を掛けようとして覗き込むと、比名琴が気持ちよく眠っているので、慌てて口を押える。
疲れちゃったのかな?良い天気に、誘われたのかな。
幸せだな……比名琴の隣に座り、寝顔を見つめる。
起きて欲しいけど、起こしたくなくて落ち着かない。
ソファーにもたれて眠る比名琴を、起こさないように、そっと抱き寄せた。
昔を思い出す。
俺達に、こんな甘い時間がどれほどあったのか。
額に、そっとキスを落とし……髪を撫でる。
手に入れた幸せ。
「比名琴、愛しているよ。」
「ふふ。私も、愛しているわ。」
目を開け、頬を染めて微笑む比名琴。
「え?いつ、起きたの?」
驚きに心臓が、ありえない音を発している。
「んー。抱き寄せられたくらいかしら?心地よくて……ふふっ。幸せね?」
同じ思いに嬉しくなって、顔を近づける。
比名琴が、受け入れるように目を閉じた。
唇を、そっと重ね味わう。
手を、比名琴の肩から背に。腕を腰に移動させる。
ソファーから身体を離し、床へ押し倒す。
じゅうたんでは、痛いだろうか?
少しの時間……ちょっとだけ……柔らかい胸に顔をうずめ、甘い香りに酔う。
「比名琴……」
顔を上げ、キスをしようと視線を向けた。
その瞬間、自分たちに影が覆う。
まさか!?
比名琴が、抵抗を始めた。
そっと比名琴から離れ、視線を合わせようとしないので、嫌な予感が当たっているのだと確信する。
光を遮る物体に、視線を向けるのを拒否したい!
「比名琴、何を見たの?」
俺の質問に、比名琴は微妙な笑みで答える。
「窓って、防音にしたの?」
邪魔が入らないよう、手を尽くしたのに!
嶋関の野郎~~ふざけんな!!
end




