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【恋愛系集約】VS ~ 代償 ~  作者: 邑 紫貴
恋愛Sim★comp

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74/75

一瞬の光を見て……


久々の大学。

「蓬来、お前の彼女……大丈夫なのか?」

見知らぬ奴が、俺に近づいた。数人がその返事を待っている。

興味と言うより、本気で心配そうな雰囲気。

「ごめん、連絡が取れなくて……何が起きているか知っているのか?」

トラが来た後も、何度か電話があって……比名琴と連絡が取れないと言っていた。

ある意味、嘘ではない。

「ネットでの情報だよ。耳に入れないようにしてるの?」

「それもあるんだけど、教えてくれ。」

言いにくそうに、視線を逸らしたので不安が募る。

「実は、彼女……映画に出ていただろ?週刊誌の男は、誰だ?みたいになって……映画の批判が半端ない。彼女も……その……」

比名琴!!

俺は、比名琴の家に向かった。一歩手前……


「幾久!こっち……」

トラが俺の手を引いて、呼び止めた。

「……比名琴は?」

「待て、移動が先だ。」

トラは、反対方向の細い道に誘導する。

そこには、命・シュウちゃんに、文一ちゃんも隠れていた。

「幾久くん。今、週刊誌関係の人が囲んでるの。今行くと、混乱で……コトの状況を悪化させるかも。」

シュウちゃんの真剣で早口な説明に、腕を引かれ歩き続ける。

……自分のしてこなかった何か……逃げていた距離を憎んだ。

畜生……俺は、一体……


すぐ近くの一軒の家に入る。

「私の家なのだ。夜まで親はいないので、お気にせず~。」

文一ちゃんの案内で、リビングに皆で座り落ち着く。

「幾久。あの写真の相手は、誰だ?」

命が怖い顔で尋ねる。

え?

「あの男は、俺の知り合いか?」

……??

「幾久、今回の騒動は……お前も関係しているんだぞ?」

……。

全員が俺を見て、うなずいた。

「へ?」

俺の……写真の相手??

「胸元が開いていて、美味しそうだったので美人な担当さんだと思われます!」

トラがいい笑顔で叫んだ。

もちろん、文一ちゃんが口元をひねり……笑顔に怒りマークが見える。

……。あれ……かあぁ??

「いや、トラの来た日……駅の方向を教えて欲しいと、外まで一緒に出て……よろけたのを支えた。」


「怪しい!」

……。

突然の叫び声に、皆の時間が止まった。

「ぎゃ!?」

「し……嶋関さん??」

皆の輪に、いつの間にか入り……真剣な顔で興奮している。

「遅くなりました!この、嶋関……頑張りますよ!!」

「……文一……いつ、呼んだの?」

トラは複雑な顔で、文一ちゃんに尋ねた。

「呼んでないのだ。」

またも、嶋関の暴走。

「さて、比名琴ちゃんの相手は俺!幾久くんの相手は椎原さん。これを弁解できれば、すべて解決です!!」

中心で立ち、叫んでいるが……今、何と??

「ん?どうしました??皆さん……俺を見つめても、何も出ませんよぅ~~♪」

緊張感の無い笑顔の嶋関。

「嶋関ぃ~~!!比名琴の相手がお前って、どういうことだぁ?!」

叫ぶ俺の腕を、皆が押さえた。

襲い掛かる俺に、嶋関は笑顔のまま言う。

「この写真を見てください。」

そこには、泣いて鼻水を垂らした嶋関を慰める比名琴。

……。

「あぁ、これ……大学で捕まった日の夜??」

命が少し笑う。

……。畜生、使えない!!

「……~~~~ぐっ!!……はぁ。で、比名琴は……どうしてる?どうなるんだ?」

言いたい事だらけだが、呑み込んだ。

嶋関のことより、今は比名琴が大事だ……

「明日、記者会見があります。そこに、一般人を侵入させる経路を確保したという情報もあるんだ。」

マトモな答えが、嶋関の口から出ていた。

「ん?どうしたのぉ~??編集長の情報だよ??」

……思っていた以上に、読めない人だと知る。

編集長もだが、嶋関……底知れない……

「映画の評判を守るのです!!」

「いや、守るのは比名琴だけど?」

嶋関は不思議そうな顔。

無視……。

比名琴の危機を助けられるのは、俺……だ。

「幾久、頑張れよ。」

「コトを助けて……」

全員がそれを望んでいた。

嶋関が比名琴のところに行ったのも、俺が別れると言ったから。

嶋関を担当から外し、椎原さんが担当になったのも……俺の我儘だ。

写真は、誰の意図にしても……比名琴を追い詰めたのは、俺だ。

「明日、記者会見の場に行く。比名琴を守る……助けるよ!!」


俺達の恋愛は、常に普通ではなかった。

比名琴……君の心は、俺にあるだろうか?


記者会見の数分前、比名琴が会場に姿を見せた。

編集長の情報の通り、一般……いや、悪意のある者が雇われたかのような罵声。

その間を押し退け、くぐり……記者の大勢見守る中に飛び出した。

「比名琴!俺と、結婚してくれ!!」

……。

あれ?俺、今……何を言いましたか??

会場は静まり返る。

比名琴は、立ち上がって涙を浮かべた。

返事は、頂けないのでしょうか……

周りのどよめきが、心音と重なり……目が回りそうだ。

「待ってください!荻原さんには、不倫の疑惑が!!」

一人の叫んだ記者に、二人が反応した。

「「えぇ??」」

「あいつ、結婚してたのか?」

「うそっ!!」

俺と比名琴の驚きに、会場がまた静かになる。

……。

「知らずに、付き合いを?それも、元恋人の知り合い??」

話がこじれそうだ。

最終手段の出番か……

「週刊誌に載った写真は、これだ!!」

嶋関の情けない写真を、大量にばら撒いた。

俺は、比名琴の近くまで進む。

生頼きせ 奥谷おくや先生は新恋人が報道されてますが?」

一人の記者の質問に、比名琴の表情が怒りに変わる。

「そうよ!私と別れて、あんな……胸をさらしたような……H!すけべ!変態!!」

比名琴……きついよ。皆の前で……

「変態だとは思うけど、俺が想像するのは比名琴の胸だけだ!!」

……。



「え~、それでは?婚約の記者会見に変更です!!」

遠くで、司会の声がする。

俺の腕の中には、比名琴がいる。

「……幾久、返事をしてもいい?」

「はい。」

「あなたへの愛を誓ったあの日から、私の心はあなただけを愛した。他の人を見ることもなく……奪われた心を捨てられるのかと、不安に生きた。責任を取ってください!」

「はい。一生を、比名琴に捧げる。この心に君だけを抱いて……」

周りも気にせず、比名琴の唇の感覚を味わう。

甘い……幸せに、酔いしれ……

「ごほっん!!失礼、では……新婚旅行は、どちらに?」

「当然、思い出の地!」

「沖縄です!!」




冠菜かんな!こっちに、いらっしゃい!!」

「やだ!パパ、抱っこ!!」

「ふふ……冠菜は、甘えん坊だね~。」

「パパ、大きくなったら結婚してね?」

「冠菜。何て、可愛い声で俺を惑わすのか……その声に……」

「ストップ!!幾久、冠菜の情操教育上……ちょっと?んん~~??いや、大分……問題があるような気がする。」

「そう?」

「多分?……冠菜。パパは、お母さんと結婚したの!だから、無理よ~~。」

「いやぁあ~~ん!!パパと、するの!!」

「……比名琴、別れてくれ。」

「殺すわよ?」

俺の肩にもたれ、言葉は怖いけど……笑顔の君。

俺達の子供、冠菜も笑う。

これは現実。シミュレーションじゃない……手に入れたいと願ったものがここにある。

そろったすべては……ノーマルコンプ。

現実の俺と比名琴の恋愛に、フルコンプはない。

幸せと辛いことが、必ずあるだろう……それでも、恋愛は続く。

「比名琴……愛してるよ。」

「私も……愛してる。」

「パパ、ママ……大好き!!」


「先生ぃ~~!!原稿はまだですかぁ~~??」

幸せを、いつも邪魔するのは……嶋関。

「嶋関、お前……子供、何人いた?」

「え?8人です!!ささ、先生には俺達を養って頂かないと!」

現実は、美しくも残酷。

夢のような文字の中、彩る文字を体感し……得る幸せに酔い、不安で闇に落ちる。

通じる心が欲しいのか、触れる体の温もりを求めるのか……相手を求め、必死で生きる。

これからも……恋愛を体験し……得ていくのだ。

失うものもあるだろう……それが、恋愛simulation★complete(シミュレーション★コンプリート)

Sim★comp……多くの人に、皆と同じではない恋愛が望みますように。



END

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