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【恋愛系集約】VS ~ 代償 ~  作者: 邑 紫貴
恋愛Sim★comp

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72/75

世界の孤独

時は流れ、周りの環境も変化する。

永遠を見た想いも、消えたわけではないのに……君は、今も……俺を好きだろうか?

俺は、流され……君を信じきれず……ただ、自分に言い聞かせる。

言い訳だ……君の世界は、美しい。俺は、それに相応しくない。

いつだっただろう……君がその言葉を出したとき、俺は笑った。

そんな世界に俺は、いないのだと……

それでも、君は今……そこにいる。

いつから?どうして?君の姿は見えるのに……君は、俺を見ていない。

君の声、君の言葉……聴こえるのは、テレビの中。

映画化が進み、君が採用された。

相手役は、俺ではないのに……君の人気が高まり、君は俺の知らない世界に入った。

どこにいても、どんな環境になっても……君も俺も変わらないと信じていたのに……




蓬来あらい 幾久いく。大学1年。

夢のように幸せな物語で有名な小説家は、もういない。

生頼きせ 奥谷おくやは、現実的な物語を書く。

恋愛から逃げ、サスペンスや脚本の一部を手がけるようになった。


荻原はぎわら 比名琴ひなき……彼女は、俺と付き合っていた……はず。

連絡も取る。彼女は公にしているし……俺の名を出し微笑む。

いつからだろう?それを、素直に喜べなくなったのは……

陰で会い、求めるのは心のはずなのに……足りなくて……触れる君に、現実を感じない。

俺は、何が壊れたのだろう?

「幾久……」

君の表情も、声も……不安が伝わる。

分かっている……ごめん……俺は、自信がないんだ。

「別れよう……」

「嫌よ。私があの世界を去ればいい。ね、幾久……」

「ごめん……」

残酷にも、時間は止まることもなく……陽は落ち昇る。

戻ることなどない。


「先生!」

聞き慣れた声に、安心を覚えるようでは俺も終わりかな?

昼食を、自分の分だけ用意して……

「嶋関さん。机の上は汚さないでください。」

汁物を零しているのが目に入る。

「比名琴ちゃんは、どうしたの?」

相変わらず、無神経な事を平気で訊くんだね。

「別れたよ……昨日。」

時間が止まる。

「ま、またまたぁ~~♪」

「本気。その名は言わないで……」

その名前を聞くだけで、涙が出そうだ。

テレビをこの家からなくした。新聞も週刊誌も見ない。

「ちょっと、出かけます。」

立ち上がった彼を、引き留めた。

「嶋関さん……ごめん。あなたの境遇は、編集長にお願いした。今日が、俺と最後の仕事だ。……原稿を持って帰って。今まで、お世話になりました。」

いつになく、嶋関は黙って去って行く。

何か言ってくれ……気が利き過ぎだろ?

それなのに、お約束のように……原稿を忘れていく。

嶋関……最後まで使えない。

はぁ……あなたは、俺と比名琴との思い出に係わりすぎた。

思い出が、痛い……

夢に酔い、幸せに浸り……永遠を感じたあの日を壊したのは、俺だ。すべて、俺の所為。

比名琴……比名琴……君の笑顔。

唇……温もり、匂い……この心。想い……過ごした時間が……苦しい……


俺はこの世界にいた。君に出会わなければ、ずっと……独りの文字の世界。

君が俺の世界を変えた。

そして、君が……いや、君から離れれば……俺は、この世界に戻るしかない。そんな生き方……


【携帯のコール音】表示に、命。

夏梅生なつめき みこと。比名琴の友達の彼氏。

彼も、比名琴との出会いが無ければ……

結局、出ずにコール音が止まるのを見ていた。

「……ひっで~。俺まで、無視かよ……。彪なら、しょうがないとしても。俺は相手をして欲しいぜ。」

……??

「命、どうして??」

2階の仕事場……現れた命に、驚いた。

今まで、来たことがなかったのに……

「嶋関さんが、鼻水垂らしながら大学の門番に捕まってさ~。」

……嶋関、どこまで俺の交友範囲を把握してるんだ??

仕事も、それぐらい……実は優秀??

「幾久、聞いてる?俺、友達じゃない?」

命の表情は、悲しそうだった。

「入って。話をしよう……」

多分、比名琴のこと……だよね?

「今更だけど、お邪魔します。」

命は、嶋関さんの零した汁を布巾で拭く。

もう、時間が経って乾いているのか……ゴシゴシと力を入れて。

「柊規から聞いた。」

三ツみつもり 柊規しゅうき。命の彼女。比名琴の友達だ。

「そっか……。怒ってた?」

「俺は、怒ってる。」

命の声が低く、怖い眼。

俺は視線を逸らし、うつむく。

「ごめん。」

ただ、何をどう言っていいのか……分からずに、心の痛みを我慢した。

「幾久……思っていることを、まとめなくていい。頭に浮かぶ言葉を吐き出せ。聞いてやる。不器用なお前を、放っておけない。」

「……命……。俺、比名琴が好きだ。」

「あぁ、十分知ってる。どんどん話せ。」

「俺達の始まりは、別れだ……こんな別れが待っているなんて、想像もしていなかった。彼女の住む世界は特別で、皆がいる……俺の世界は孤独だ。俺だけの彼女でいて欲しい。それは、間違いなのか?正しいのか?俺は……」

頭に浮かぶ言葉が交ざり、言葉にならず涙で消えた。

味わう感情に、言葉に出来ないのを更に情けなく……闇に落ちる自分が孤独だと……

「幾久。バカだね……俺がいる。彪も嶋関さんも……比名琴ちゃんの気持ちも……お前は、持っているのに。幾久……ちょっと、失礼……」

【バシッ】

俺の頭が軽く叩かれ、衝撃に顔を上げた。

涙目に、笑顔の命。

「孤独に囚われるのは、お前の心だ。解放するのも、お前の心……さ、出口は見つけられるかな?」

「これが、出口じゃないの?」

「多分、糸口だ……」


命を送り、仕事場の二階への階段。

途中の壁に傷……落書きが少し。

『地震は注意。引越ししたら?』

比名琴の字……いつ、書いたんだろう?

比名琴の思い出のカケラ……俺の知らない君の時間が、この家にある。

俺の仕事中……君は、何を見て、何を聞き……感じ、考え、思ったのだろう?

時間を、仕事で無駄にした?常に、普通の恋愛ではなかった……

本棚の前に立つ。

最近、君が読んだのは……どれだろう?

君は、嶋関とは違ってテレビをつけなかった。静かな時間だった。

君の動く、ほんの小さな物音……それに、幸せを感じた。

君との空間……一つの部屋……一緒にいるだけ。

言葉を交わすことなく、触れることなく……心が通じていると思ったのは、俺だけだろうか?

いつか、訊いたことがあった……

『暇じゃないのか?もっと、我儘言っていい。どこかに行こう……』

君は、言葉の途中……遮るように言った。

『嫌よ。ここは快適で、落ち着くし……お金がかからない。さ、仕事に集中して!』

微笑む君の笑顔が、本物だった……はずだ。

トラに相談したら、あきれた顔をした。

十代田とよだ とらは、俺と同じ高校だった。

比名琴の友達、鷹木たかぎ 文一ふみとちゃんと、今も付き合っている。

トラは、付き合って二週間で……した、らしい。

何度も、その話を俺に聞かせようとしたが逃げた。

興味が無いわけではない。

高校2年の沖縄旅行で、その展開も先に延ばした。

あの時に、しておけばよかった?……いや、何と言うか……チャンスを逃したのかな??

この家で、二人になることが多かったのに……格好をつけた俺は、手を出さないよ……みたいな??

確かに、未来が繋がっていると思ったから……急がなくていいと思った。

もちろん、妄想は……その、激しくて……

いや、誰に弁解をしてるんだ?俺……少し、落ち着け。

【ふぅ~~】

息を深く吐いてみる。

比名琴が芸能界のデビューをしてから、会う機会も少なくなって……この家も、出入りしなくなった。

映画のイメージもあったから……周りに、気を遣った。

比名琴……俺は、どうしたらいい?君は……


【携帯のコール音】編集長からだ。


「はい。……え?はぁ……お任せします。あの……いえ、では……」

嶋関の代わりの新担当の連絡だった。

どうやら、女性のようだ。

少し気になるが、我儘を言ったのは俺だから……しょうがないよね。

比名琴……別れてしまったのに、言い訳をするのもなぁ~~。

はぁ……淋しい……




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