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【恋愛系集約】VS ~ 代償 ~  作者: 邑 紫貴
恋愛Sim★comp

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71/75

寂しい……


美味しい夜ご飯を、タクシーのおじさんを含めて楽しんだ。

ホテルに着いて、お別れが淋しかった。

「今度は、新婚旅行においで。もっと、ロマンチックなところを案内するよ。」

俺たちは、笑顔を返すので精一杯だった。

嶋関は、大量のお土産をホテルに運ぶので精一杯。

おじさんを見送って、俺は比名琴の手を握る。

「また、来たいね。」

「……うん。」


ホテルに入ると、女性のスタッフが比名琴に声をかけた。

「本日、花火のイベントがあります。浴衣の無料サービスを利用されませんか?」

比名琴の目が輝いている。

「俺、浴衣姿……見たい。」

「じゃ……着ます!」

嶋関は、俺たちに部屋の鍵をそれぞれ渡してくれた。

着替えに移動する比名琴を目で追う俺の耳に……

「また明日、9時に迎えに来ますから。」

不思議そうな俺に、嶋関がニッコリ。

「……え?嶋関さん、このホテルじゃないの?」

「はい。俺は、ビジネスホテル♪お土産は、フロントで配達の依頼をしただけです。何かあったら、電話してください。すぐに飛んできますから。」と、ホテルから出て行った。

……。部屋は、別々……けど、夜のイベント花火は……二人きり。しかも、浴衣姿の比名琴?!

俺は部屋に入り、先に届いた荷物を開けた。

【コロッ】

鞄の横にあった紙袋が転がり、手に取った。

……?こんなのあったかな??

中は、箱……?!?!これは!!

顔が赤くなり、意識が熱でフラフラ……保健体育で一度だけ見たことのあるモノ。

編集長?!!

待て、落ち着け……部屋は別だし、明日は9時に嶋関さんが迎えに来る。朝食は、7時30分から……

何、時間の計算をしてるんだ?


【携帯の着信音】


「ぎゃっ!!」

心臓が、今までに経験したことがないぐらいに跳ねている。

はぁ~~はぁ~~

「幾久?」

比名琴の声に、体が反応する。

あぶねぇ~~、こんなの比名琴にバレたら……。

「ね、聴いてる?」

「はい?!……ごめん、ちょっと……荷物が落ちて、聞いてなかった。へへ……何?」

「うん。あのね……」

花火の時間には、まだ早いけど……浴衣姿を見て欲しいなんて、可愛いことを耳元で君は囁く。

実際は、携帯なんだけど……

「……じゃぁ……10分後に、屋上で。うん、楽しみにしてる。」

ベッドに座り、気持ちを落ち着かせる。

はぁ~~。編集長、比名琴は『しない』宣言をしているんです。

……けど、前に……比名琴が言った。心の準備……やべぇ!!


屋上。

特別なイベントに、大人たちが飲んでいる。美味しそうな匂いも沢山……。

さっき、食べたばかりなのに……匂いに誘われながら、比名琴を探す。

「……幾久?目の前にいるんだけど??」

俺の斜め前に、俺を見つめる美しい女性。

浴衣で、髪をアップにして薄化粧。少し短い髪が、誘惑するように揺れる。

「……比名琴?いつもより綺麗で……マジ??」

「へへ。綺麗?」

「うん……」

誘われるように、比名琴の元に行く。

「嬉しい……私、自分が嫌いで……ふふっ。こんな自分初めて。自分を見て欲しい……可愛くしたい……幾久が、どう思うかなって……くすっ。女の子みたいだね♪」

俺は、無意識に抱きしめる。

「比名琴……可愛い。綺麗な外見に、心が……内面が可愛くて……俺、おかしくなりそうだ……」

「幾久……私……」


【……ヒュ……ドォン】


「「……花火……」」

俺たちは顔を合わせ、微笑む。

「行こう。もっと近くで見よう!」

「うん!」

手をつなぎ、低いフェンスに二人並んで空を見る。

遠くに海が見え、花火を映す。

「……綺麗。」

そう言って見上げる比名琴が、とても色っぽく見える。

つないだ手が緩く……離れそうだ。

顔が熱くなる……少しの勇気……

俺は、指を比名琴の指に絡め……つないだ。

「……?!」

驚いた反応で、俺を見た比名琴……

けど、君は俺の必死な表情に微笑んだ。

「……いいよ?……幾久……へへっ、恥ずかしい……な?」

何て、可愛い!!

【きゅうぅ~~ん】

恋人つなぎで満足なはずなのに……足りない。貪欲になる。

ほんの少し……ちょっとだけ……いいよね?

俺は、顔を近づける。

比名琴は、目を閉じ気味に……俺の唇を待つ。

屋上の賑わいも、花火の音も聞こえない。

比名琴の唇だけを感じる。

柔らかい……甘い……感情のままに……求めたい。

軽く重ねた後、離れた俺を見つめ続ける比名琴。

もう少し、イケそう?空気の違う環境に心が踊り、調子にのってしまう。

比名琴も、少し……雰囲気が違う?

「……ね、舌……入れてもいい?」

「ばか……」

視線を逸らしたけど、ダメとは言っていない。

雰囲気的には、OK……な、気がする。

「比名琴……」

つないだままの手に、力が入る。

あいた手で、比名琴の腕を押さえた。

「……幾久……」

頬を染めながら、俺を受け入れる視線。

我慢できず、勢いよく吸い付いた。

「んっ……」

腕を押さえていた手は、比名琴の頬に移動し上を向かせた。

つないだ手は、比名琴の指に入り込んだ感覚……。

柔らかい唇が、俺の舌を通す。

【ビクッ】

君の反応は、驚き?拒絶?……それとも、感じた……の?

俺が感じたように……

潤んだ瞳で、苦しそうに……でも、応えるのに必死なの?

壊してしまいそうだ……

「はぁ……はっ……」

息の切れた比名琴が、こんなことをした俺に身を委ねるように、腕の中にいる。

愛しい……


屋外にいる。ざわめきが耳に入り、周りに人がいたのを意識した。

普段なら、比名琴も、俺も……こんな大胆なことはしない。出来ないだろう……。

編集長の罠にかかっている。

尚更、アレはない。ダメだ……流されると、比名琴を失いそうだ。

頭にある醜い自分の欲望を吐き出したら、君を汚す。

今のこの行為も、何処か……間違っている気がする。何故……?

「へへ……恥ずかしい、ね?花火も終わっちゃった……し?」

【ドク……ン】

いつもと姿が違うからじゃない。何か、雰囲気が大人びたように感じる。

比名琴が、これ以上綺麗になると……誰にも見せたくない。

閉じ込めておきたい。俺だけのものに……したい。

「幾久……どうして、悲しそう……うぅん、辛そう?ごめん……私……」

不安の表情。どうして……?

「……比名琴……やっぱり、俺たちの恋愛は……普通じゃないのかな?」

「普通だよ。」

……。

比名琴は、俺の目を見て断言した。

普通?

「……本当に?」

「うん。キスして、周りが見えなくなるぐらい好き。落ち着いたら、もっと普通になるわ。私たちに、別れが遠いのは……別れから始まったから。他の人より、近すぎただけで経験する可能性があった。」

「普通?俺の……この感情も?」

「……うん。多分……幾久……いいよ?」

俺の腕の中、頬を染めることなく……真剣な眼。

これは、夢なの?

「ダメだよ。まだ、駄目。君がそう言ってくれることが、どれほど嬉しいか……伝えないと、傷つくよね?比名琴……今、触れると大事に出来ない。後悔する……求めたい。もっと……深く……寂しい……」

「うん。淋しい……幾久、本当は……聞いてたんでしょ?文一のこと。」

「……だから、かもしれない。俺たちの時間は、これから沢山あるよね?」

「えぇ。……あるわ。」

「……比名琴……結婚してくれる?」

「幾久?それ……プロポーズ?」

「かな?体じゃなく、約束が欲しい。……比名琴との、未来が欲しい。確実な……つながりが欲しい。」

「嬉しい。はい……約束するわ。あなたとの未来を……出来るだけ続く永遠の絆……大好き。愛してるわ……」

「ふふ。先に言われちゃった。愛している……永遠を誓って……」

俺たちは、この南国の地に……また、来よう。

今度は、新婚旅行で……

重ねた唇は、優しく。

そっと、長く……幸せで……君との始まりのキスを思い出す。

これもまた……始まり。





end

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