別世界……
俺たちは経験する。
これは、本物の恋愛。
他の人と全く同じじゃない恋。俺たちの恋愛物語。
普通じゃない?
普通であってはいけない。
うん、トラと文一ちゃんも俺たちの恋と同じじゃない。
同じ恋の物語は存在しない。
この先……俺の恋は、何を経験するのか。
みんなと同じ……経験?
俺に心を赦して……キスを受け止める。俺に応え、反応する比名琴……。
手をつなぎ、指を絡めたら……
想像しただけで動悸が激しくなった。
実際に触れ、君が拒まなかったら……ゾクゾクする。
激しいキスも想像した。
軽いキス・吸い付くキス・角度を変えて、強く押さえた。
何度も繰り返し、味わうキスは甘く……酔いしれる。
貪欲に、どこまでも底なしの欲求。
舌を入れたら?絡めて、吸い付いたら……
はぁ……興奮する……
次の日、俺は寝不足だった。
「ふ……ぁ~~。」
眠ぃ……
「何だ?妄想のし過ぎで、眠れなかったのか?」
ニヤニヤしたトラ。何だか、すっきりした顔。
訊くのはウザイが、小説のネタだ。
「……いい事、あったのか?」
俺の質問に、気持ち悪いぐらいに緩んだ表情。
「くふふ。知りたい?……でも、むふふ……恥ずかしいし。」
ウザさの頂点。
「言わなくていい。」
「待てよ!訊きたいんだろ?いいぜ、くふっ。実は……」
押し退ける俺は、まとわりつくトラに拳を握った。
「うそっ!!」
大きな、比名琴の叫び声。
……?
初めて聞いた。
「あぁ~~あ。フミ、コトちゃんに言ったんだ。くふふ……あの反応だと、お前はまだだな♪」と、優位を示すような態度。
……??まだ?
「トラぁ~~。おはよう♪」と、文一ちゃん。
比名琴は、後ろで顔を真っ赤に固まっている。
……??まだ??
イチャイチャする二人を先に行かせ、道を戻る。
俺が距離を縮めると、後退った。
……?!
俺の足を止める。
「……比名琴?」
【ビクッ】
……身を小さくし、俺を見ない。
?!!何だ?あの二人が何をした?何を聞いたら、こうなるの?
はっ!!俺の昨日の妄想?いや、知られるわけが無い。よね??
【始業の鐘の音】
沈黙に、開いた微妙な距離で教室に向かった。
授業どころではない。
比名琴は、俺の視線を感じるのか……落ち着かない雰囲気。
トラと文一ちゃんは、授業中なのにウザイ雰囲気。
授業が終わると、二人はどこかへ消えるし。
比名琴も、俺を避けている。
俺は、シュウちゃんを捕獲した。
「……幾久くん?何……かな?」
何故か、赤面で訊く。
「トラ達、何があったの?どうして、比名琴は俺を避けるのかな?」
俺の質問に、涙を零して。
「知らない……ですぅ。お願いです、私に訊かないで……恥ずかしくて死にます!!」
何が?!!
「柊規!……お前。何、泣かしてんだよ!!」
おぉ!!修羅場っぽい!!
体験したことの無い場面に遭遇し、初めての体験にメモを取る。
俺の胸座にある手が緩む。
「……柊規、これ……コトちゃんの?」
「うん。コトが避けてるの……。例の話よ。」
俺は、殴られなくて済んだが……
「あぁ、シュウちゃんの彼氏さん?はじめまして、蓬来 幾久です。」
俺の自己紹介に、二人はため息を吐いた。
……?普通は、難しいようだ。
「はじめまして。夏梅生 命です。……柊規、外してくれる?」
「うん。」
屋上。
次の授業を、初めてサボった。何だか、ドキドキする。
「なぁ、俺までいいのか?」
「あぁ。作品の意見に、必要だと先生に伝えたらOKだったよ。」
俺の笑顔に、また……ため息。
「夏梅生くん。どうして、比名琴は俺を避ける……はっ、別れ話?!」
俺は、青ざめる。急に、血の気が引いたのを感じる。
そんな俺に、今度は苦笑い。
「無いよ!二人には。」
俺達には?
「ふっ。ホントに、普通じゃないよ。……羨ましいけどな。別れから始まって、恋愛を始めるなんて最強だ。最近、文一が別れたのは聞いた?」
「……あぁ。今はトラと付き合っている。」
何だろう、この会話も俺の世界が変わる。
トラと違った感化。
「俺は、この関係がいつか壊れるのか不安な時がある。傷つけて、嫌われたらどうしよう?って……」
壊れる時のこと?嫌われるかも……は、よく考えるけど。
「へへ……俺、あの本読んだ。泣いた……んだ。柊規も泣いた。俺は、自分のこと。でも、柊規はコトちゃんの悲しみに泣いた。……あれ?何が言いたいのか分からなくなった?とにかく、お互いを知るのに時間は足りない。求めるものが違ったりする。……君から学んだ。コトちゃんが逃げてるのは……」
夏梅生くんの言葉が止まる。
……?
「……え……?」
俺の目から涙が零れた。
感覚なく流れ続ける。彼の戸惑う様子が霞む。
「……ごめ、ちょっと待って。ははっ、嬉しい……比名琴のことが気になるのに。変だな?」
人として、欠けた何かを得た。
俺は、足りない感情を描いてきたことを後悔した。
狭い世界に、誰かの言葉を借りて共感もなく綴った文字……
出会いに感謝した。
落ち着いた俺に、言いにくそうに夏梅生くんは口を開いた。
「……言うタイミング、間違えたな。はぁ……。文一ちゃんは、トラくんと……その……お泊りをしちゃった……わけですよ。こほっ……あぁあ~~、何か俺が恥ずかしいのは何故だ!!」
顔を真っ赤に、座り込んで視線を逸らした。
……お・泊・り……??二人で~~??
【携帯の着信音……火サスのテーマ曲】
携帯の画面を見ることなく、サイドボタンで着拒!
夏梅生……ミコトと友達になり、屋上で別れた。
俺は、考えごとをしたくて屋上に残り町を見下ろした。
【同じ着信音】
そう、当然……“使えない”担当、嶋関。
ちっ!!いつも、邪魔するんだ!
「はい?何……」
「酷いですようぅ~~」
ウザさに、切りたくなった。
「スポンサーの方から、特別の招待で!!新設リゾートホテルの室内利用に、来ないかと!!」
「行かない。」
興味が無かった。
「うわぁ~~ん。待って、切らないで!!比名琴ちゃんの許可はもらったモンね!!」
……はぁ?いつ、比名琴の連絡先を?
いや、許可を取った??
「ちっ!!」
思いっきり、あからさまな舌打ちをしてやった。
……コロス、いつか!!
「お泊りだよ♪あ、もちろん部屋は別だけど。ふふ……くふふ。編集長が、比名琴ちゃんのお母さんに連絡してくれたんだ。沖縄だよ!!」
……。
沖縄・お泊り・母親の許可・編集長……何か、仕組まれてるよね?
「編集長に訊くから、切る!……締め切り以外でかけてくるな。」
携帯を耳から離すのに、声が聞こえる。
「酷いぃ~~……」
【プチ!】
はぁ……




