表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【恋愛系集約】VS ~ 代償 ~  作者: 邑 紫貴
恋愛Sim★comp

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

68/75

深く……


日曜日。思い出の喫茶店で待ち合わせ。

【カラ……ン】

優しい音色が響く。やっぱり比名琴だ。

遠い角の席から、手を振る。

音で分かったのが嬉しくて、口元が緩んだ俺に予想外の声。

「いやぁ~~らしい。何、にやけてるの?くふふふ。こんな表情が出来るようになったなんて、オカアサン、嬉しい!」

トラの長い台詞を冷めた目で見ながら、ついメモを取る。

「ごめんね、何か……その……」

「うふふ。私もいるのだ♪」

比名琴の後ろに、文一ちゃん??何故、トラと……え??

「へへっ。俺たち!」

「付き合うことにしました♪」

うわぁ~~。何か、最強……って感じがするのはどうして??

そして、嫌な予感がして比名琴を見ると……的中なのか、視線を逸らした。

「「さぁ!お花見にGOGO!!」」

こいつらぁ~~。

手をつないで歩くトラたち。俺たちの手は、離れたまま……

分かる。比名琴は、恥ずかしいんだ。そして、周りを気にしてるんだ。

分かる……悲しいぐらいに分かるよ?俺は、涙が出そうだ。

横を通り過ぎる人たちが、手をつないでブンブン振っている二人を見て笑っている。

その後ろで、手をつないだら?きっと、同じように見られるだろう。振らないけど……

俺の手が、寂しい……心も、淋しいと言っている。

昼間の桜も美しいが、夜桜の妖艶な美しさにとりつかれたあの夜が忘れられない。

もう、葉が出始め……桜吹雪は、風情を感じない。呆気なく落ちていく。

何故?別れの日を思い出すのはどうしてかな?

希望が無いように感じる淋しさ……比名琴を見ると、同じ気持ちなのか悲しげな微笑。

見なければいい……

俺は、比名琴の両目を塞いだ。そっと……

「幾久♪……って、何?いきなり……どうしたの?」

いつもなら、恥ずかしいと振り払うはずなのに。

俺は悲しくて……比名琴の目を俺の手から解放した。

君の見るものも……感じるものも……俺に制御できない。

心が……サミシイ……触れたい……足りない……

駄目だ。この感情は醜い。抑え、隠して消さないと……

「幾久……最近、あなたの言葉を聞いていない。」

「え?くすっ。少なくしてるだけだよ?」

俺を見透かしたように見つめ、読み取って睨む。

けど、言葉は優しい。

「気持ちが追いついたわ。すべて、吐き出して。私が足りないの……欲しい。あなたの言葉を聴きたい。聞かせて欲しい。幾久……こんな風に、あなたがした。責任、取って……ね?名を呼んで……」

俺たちの恋愛は、やっぱり普通じゃない。

何かを感じ、経験する度に思う。

「比名琴……比名琴……君を、解放したほうがいいのかな?俺が捕らえ、君を狂わした?君は、もっと自由な女性だったはずだ。」

「今の私は、嫌い?」

「違う。……俺の言葉の世界が、現実に通用しない。言葉をどう表現していいか分からない。作品は、留め処なく文字が並ぶのに……」

桜の木の下。風に負けて落ちる大量の花びら……それらが、周りの景色をピンク色に染める。

他の景色は見えない。目に映るのは、同じように俺を映す比名琴だけ。

時が止まる一瞬。静かな世界。

時を止めて……永遠に、続くことを願う……

「比名琴。好きだ……愛している。」

「うん。私も、好きよ。……愛しているわ。私を離さないで。」

俺の腕に抱きしめる。

「心も、あなたに囚われ放れない。……幾久……」


【ビュウ!】

突風に我に返った。

ここは、公園。そして……トラと文一ちゃんがいた。

固まった俺たちは、ゆっくり周りの様子を見る。

嫌な視線……池の向こうから、二人がデジカメと携帯を向け……ニヤニヤと手を振った。

空気を読めよ!!

二人は、笑いながら俺たち2人の見ている前でキスをした。長い……

遠いから分からないが……何か、負けた気がする。

はぁ……ため息が出た。

視線を戻すと、比名琴は冷たい視線で見ていた。

……。公衆の面前チュウは駄目ですか?

俺の視線に気づき、苦笑い。

「ね、比名琴。……手をつなぎたいな」

俺には、試してみたいことがあった。

「うん。はい……」

握手みたいに、軽く出された手。

俺は、その手の平をなぞるように指を滑らす。

「な……何か、エロイ!!」と、手を引っ込めた。

ちっ……勘づいたか?

「うん。実はね……恋人つなぎをしてみたいんだ。」と、微笑んでみた。

……。

反応がなく、思考が固まったようです。

「ダメかな?言葉が出ないから、つながりが欲しい。……深く……入り込んだような体験が欲しい。」

俺の思ったままを伝えた。

聴きたいと言ったのは君なのに……

「……エロい……Hぃ~!!」

何故?何か、矛盾に腹が立った。

桜の木に押し付け、両手首を捕まえた。耳元で囁く。

「エロい?よく分からないな。ふふっ。……言葉は、抑えなくていいんだよね。容赦しないよ?くすくすくす……ね、何がエロい言葉なのか、言って?俺、分からないよ?ね、言って……ほら……」

「やっ……耳元で、止めて……H……エロ吉!」

謝ったら、許してあげようと思ったのに……

「許さない。くすっ。当ててみようか?君に入り込んだような感覚が欲しい。深く……君の中に入りたい。感じたいな……」

【ガクッ】

急に、重みがかかって比名琴が地面に座り込んだ。しかも、涙目。

あちゃ~~、やりすぎたか?

顔が、真っ赤……ボロボロと涙が零れる。

泣き虫にさせたのも、俺だね?ふふ……

比名琴の横に腰を下ろして、抱き寄せる。

頬に伝う涙を軽く吸った。不謹慎だけど、嬉しいな。

「ごめん。ただ、本当に純粋に……手をつなぐのも、どう違うのか知りたかったんだ。文字の世界は、読んだだけで興奮した。つなぎ方一つで、君を深く知ることが出来るのかと……」

「うぅ~~。今度、耳元で囁いたら赦さない。……しばらく、何も許さない……。」

涙目で、優位を示した意地悪な笑顔。

「……参ったな。汚いよ、女の子が有利じゃないか。はぁ……」

苦笑いの俺の頬に、君からのキス。

「へへっ。今は、これで我慢してね♪」

可愛い……

「君は、俺を心臓麻痺で殺す気なの?息が出来なくなる。」

「私は、何度も経験したわ。もっと経験しなさい!不公平よ、私ばっかり……」

「俺の心は、君だけに反応するよ……」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ