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【恋愛系集約】VS ~ 代償 ~  作者: 邑 紫貴
恋愛Sim★comp

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64/75

結末は当然……


俺は知る。それが、君に逢える最後の日だったのだと。

正確には、言葉を交わし……君に触れる最後の日。

君は、何度俺の名を呼んだ?俺は、君の名を何度呼んだかな?

君の心は、俺のものだったと……失って知る。


俺が何をした?

君を傷つけた。キスしたかったのは本当だ。

愛しくて、切なくて……あんな言葉じゃなく、本当のことを言っていたら?

遅い……俺たちの恋愛は擬似恋愛。

終わった?始まってもいないのに?

始まりに気づいたのは、道が閉ざされた後。

編集長は言った。週刊誌が、匂いをかぎつけ……彼女を狙ったと。

手を打ったのは、護るためだと。

映画化?大金が動く?知らない。俺には関係ない。

俺は、すべてを捨てでも……君といたい。何故、赦されない?

普通の高校生。普通って何だ?自由は?


俺は、作品を仕上げた。

結末を書かずに提出した。君に想いを込めて。

君へのすべて。醜い感情も……愛しい気持ちも、後悔も自己嫌悪もすべてだ。

俺の実話。『恋愛を真似て』俺の作品。

すべて、俺の言葉。嘘は無い。信じて欲しい。

君の望む結末を書けなくて。

編集長を脅した。

君に逢うことを条件で、結末を書くと約束したんだ。

一目見たい……と願う。

君に触れることも、言葉をかわすことも無いその空間のその一時。

君の涙を拭ってやることも、名前を呼んであげることも出来ない。

謝る言葉さえ、君には届かないんだ……。

切ない。身を切り刻むような痛み。

愛しい君と出逢った事を後悔する。

君を苦しめる俺が、憎くて……。君は、俺に逢いたくなかったかもしれないのに……。

比名琴……愛している……



テレビ局のインタビュー後。

地下の通路に、昔使っていたラジオの収録室。

君がそこにいると、担当の嶋関が言う。

タイムリミットは、次の撮影の時間まで。

移動時間を引いた5分。

あの日から、10日経っていた。

君の心は、もう解放されているだろうか?

5分……防音ガラスが、俺たちを区切る。

通路は狭く、暗い。

近づくにつれ、泣きそうだ。


比名琴……

防音ガラス越しに、君との再会。

君は、涙を浮かべ……零す。

手を置いたガラスは冷たく、曇り止めが効いているのか……白くなることは無い。

俺の目の前で、気丈な君が涙を流す。

「泣くな。」

「比名琴……俺を見てくれ。」

声は届かない。

手を伸ばして、涙を拭ってやることも出来ない。

【ドンッ】左手で拳をぶつけた。

音は遮断されている。君に届かない……

「幾久君、そろそろ時間だよ!」

空気の読めない担当が、俺を急かす。

「比名琴!比名琴ぃ!!」

声が届くはずもないのに、君は俺を見た。

俺の両手に、手をガラス越しに重ね……額を当て、うつむいた。

俺は、その額にキスを落とす。

冷たい……無機質なガラス。

俺のキスに気がついて、微笑んだ。

愛しい……心が通う。俺も君も、目を細め……見つめる。

ガラス越しに、近づく表情が……想いを告げる。

「好きよ。」

「好きだ。」

ギリギリまで、目を開けたまま唇がガラスに触れる。

目を閉じた。多分、同時……。


「時間です。行きましょう……」

俺は顔を、目を閉じたまま背けた。

君を見ることなく……その場を去った。

君は、俺を見ただろうか?卑怯な俺を……君を最後に見つめることも出来ずに去った男を……



俺はこの数日、何を得た?

擬似恋愛は、非情だ。

俺は、映画の制作発表に招かれた。そこで、第三弾……君との実話が発表される。

そう、君との別れをそのままに……。

ごめん、君は物語だけでも幸せを願った。けど……俺は書けなかった。

感情の赴くまま……すべて、俺の気持ちを知って欲しかった。

心を注ぎだし、この世界から消える決意でいたんだ。

それなのに、君への想いが文字となって次から次に溢れて止まらない。

留まることを知らないんだ。止め方を知らない。

それが才能?いい加減にしてくれ……。解放して欲しい。

この会見が終わったら、君に逢いに行く。

告白するから、すべてを忘れて恋を始めよう?

お願いだ。悲しい想いをさせた償いをさせて欲しい。

比名琴……君の代わりなんていないんだ。

俺の心は、この華やかな世界にない。

見える光も空しく、うつろう意識は準備された現実に連れ戻される。


「花束を受け取ってください。」

大きな花束、渡す女の子の声は聞こえるが姿が見えないほどだ。

花を手に取り、傾けたそこに……君はいた。

花束が音もなく地面に落ち……俺は君を抱きしめた。

夢ではなく、俺の知らない結末をすべての人が見たんだ。


ガラス越しのキス。別れるシーン。

本当は、物語のために仕組まれていた。

「たまには、夢を試してみるのもいい?」

「準備された恋愛要素も、甘酸っぱいのね。ありきたり過ぎて、泣いたわ。」

君は涙目で笑う。

周りの音も消え、俺たちの物語の結末は公のキス。

「比名琴、俺と付き合ってください。」

「はい。よろしくお願いします。」

恋愛物語が始まる。本物の……


俺は、比名琴の手を取って会場を走り人をかき分ける。

この手は、俺の彼女の手。

大きなホテルを抜け、大きな道を走り小道を抜ける。

スピードを落とし、君を見つめ走る。

息を切らした君に、足を止めて抱きしめる。

「ね、その服可愛い。パーティードレスだよね?いつから知っていたの?俺、死にそうだったのに。携帯も繋がらないし……比名琴……比名……」

一気に言いたいことを述べていく。

足りないけど、腕にいる君に満足したんだ。

温かい。息を切らして、俺に重みをかける。俺に委ねるその信頼が、胸を熱くする。

感情に限界が無い。

俺の頭に浮かぶ言葉は、すべて君に捧ぐ。

受け入れてくれる君にすべてを語る。

覚悟して?俺たちは、普通の恋愛では無い。

言葉で君をいつも酔わせてあげる。

「愛している」






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