別れも突然に……
幾久side。
俺は、家に帰りメモを広げる。
内容は醜い感情と、とても純愛小説では描けない欲望の塊。
吐けどころのない、汚れた自分が比名琴に触れる。
君は知らない。俺の中で、君の姿は口に出来ない姿。
この間の風が、俺の妄想に拍車をかけた。下着姿なんて、見たことがない。
夢に見る君は、現実にはいない。魅惑的で俺を誘う。
夢の中で幻に溺れ、死にそうだ。
這い上がることが出来ず、その泥沼に心地よさを感じるんだ。
擬似恋愛は、俺をどこまで堕落させる?
このまま……消えようか?そんな勇気も、消えうせて。気が狂いそうだ。
比名琴……比名琴……抱きしめたい。
君に包まれ、死を望む俺よりは……まだ暴走したほうが人間らしいだろうか?
感情に涙が溢れ、狂いそうな人格が幾つも浮かんでは消すのに必死。
「幾久くん、大変だよ!執筆中止だよ!!編集長が怒ってる!」
使えない担当、嶋関が叫ぶ。
俺は、想いを連ね部屋中を原稿で埋めた。
内容は覚えていない。が、編集長の怒りを買う内容だろう。
もう……どうでもいい。そっとしておいてくれ。
気を失う中、俺の目に君が映る。
重症だ。これが、恋の病か?ふふっ。確か、薬も治療方法もないんだっけ?
気がつけば、病院だった。手には点滴と、鼻には病院の香り。
あぁ……何日、寝ていないのかな?学校も、行っていない。
母さんと連絡を取っていない。今、住んでいるのは借家だ。迷惑をかけて、大丈夫だろうか?
比名琴、心配してくれるかな?
俺は、現実を知ることになる。
君との契約がほとんど残ったこの時期に、“別れ”なんて考えてもいなかった。
夢の中、君の涙を手の甲に受けた。
優しく包む手の温もりも……そして「さようなら」を聴いた。
夢だよね?さよならをするには、早いよ?だって、まだ二月。
春の桜。梅雨。初夏。真夏日。紅葉に冬景色。君との景色は、まだ沢山あるよ?
君の誕生日。俺の誕生日。
お祭りに花火大会。キャンプに海。プール、カキ氷。食欲の秋に、読書……
ホワイトデーは?
一番近い、その日は……俺の計画をサプライズで考えた。
遊園地・映画館・ショッピング・旅行に……沢山の計画。紙に、いっぱい書いた。思いつく限り。
執筆中止?もう、書かなくていい?書いてはいけない?
君は、俺から解放されるの?俺は君に囚われて、すがって生きているのに?
それがいいのかもしれない。
けど、別れはまだ止めて。まだ……このまま……
ヒナキside。
あなたは知らない。体調を崩し、病院に運ばれたときのこと。
本当は、後一回だったの。あなたと会うことを赦された回数は……。
お別れは涙が出た。
最後の一回は、笑顔で過ごすわ。約束する。
今は、この涙をあなたに捧げるね。
あなたの知らない涙。“小説の私”が知らなくていいモノ。
お願い。物語だけは、涙なんかいらない幸せで閉じて。
「あなたが、幾久君の?お話しがあるのですが、お時間をいただいても宜しいでしょうか?」
こんな私に、丁寧に話す上品なおじさん。
分かる……幾久の仕事の人だ。とても偉い人。私たちの関係に、終止符を打つ人だ。
私の目は虚ろになる。
景色や眠るあなたの表情が涙でかすみ、見えない。
残された時間は、極端に減ったのに。残酷にも、時は刻み続ける。
話は、とても簡単。私が、仕事の妨げになっていると。
ふふっ。理解できる。ドラマなんかで、うそ臭いエピソード。
意地悪なマネージャーとか、担当の人が恋路を邪魔するの。
くすくすくす……恋路?私たちの間に、気持ちなんてない。通じる道なんかないのに?
ない道を閉ざされる。もう、逢ってはいけないと。
もう……言葉を交わすこともない。
忘れる?無理だ。いつのまに好きになった?
擬似恋愛に、深い水から引き上げられて地上に出た。
息も吸えない、苦しい環境に……幸せを味わった。
何がいけない?普通の片想いと、何が違うの?
私は、頼まれただけよ?それも、騙されたような形で……酷いわ。
葱を担がされ、火に向かう鴨。誰も食べる人がいないのに、火に飛び込んで焦げカスも残らない。
怨むわよ?
幾久……あなたは、才能がある。
その才能に、その容姿に……女の子が近づけなかっただけなのよ?
鈍感なあなたは、何を見てきたの?
文字の世界を、お姉さんは見抜いてた。
だから、亡くなるのが分かったときに……あなたをその世界に導いた。
相応しい、才能を生かした……生きられる世界に。
私のいないきらびやかな世界。
幸せを願うわ。そして成功を……
そして来る。最後の一日が……呪いの日。一生忘れない日だ。
その日より、憎む日がまだあるなんて……知っていたら……あなたに出会ったことを後悔しなかった。
想いは通じていたのだと知るなんて。
……残酷な世界に突き落とさないで……お願い……これ以上、あなたへの気持ちはいらない。
消えてしまいたい。
最後の日、言葉があなたに伝わる限り言うわ。
幾久side。
編集長に母親に怒られて、次の日には退院した。
夢の中の君は泣いていたけど、入院のことは黙っておこう。
同じように、現実で君に泣かれたら……胸が苦しい。君の笑顔を見ていたい。
編集長が、時間をくれた。
疑問に思うべきだった。俺には、自由があった。偉い人から許可をもらわなくても……。
浮かれた俺は、最後の日を時間の短い普通の日に選んだ。
君の電話の声は、落ち着いていて……女優だね。
そんな演技をさせたなんて、俺を殺してやりたいよ。
君は、その時間……何を考えた?
いくら思い出そうとしても、分からない。ただ、のん気にその時間を楽しんだんだ。
君が笑うから。いつもより多く、俺の名を……愛しく呼ぶから。
俺の心は、純粋に反応した。浮かれたんだ。
君に心が通じたんだと……単純に。
学校が終わったのは何時だった?
その日は、進路の関係で5時を過ぎ……6時が近かった。
君は、夜ご飯にいつものファミレスじゃなく……初めて入った喫茶店を選んだ。
そう、契約を交わした場所だ。
思い出の場所に浮かれた。君は、俺と違う意味で味を覚えているだろうか?
同じ、ディナーセットだった。遅い時間のそこは、いつもより高い金額だった。
そこがいいと、初めてのわがままに……君の焦る姿は忘れない。
可愛い君のわがままに、金額なんて気にならない。
そんな俺を、君はどう見た?
“別れなければならない現実”を……味わったのだろうか?
俺の世界は、ここでなくてもいいんだ。
俺は男だぞ?人との付き合い?みんなが経験する。世間に出て、もまれて当然だ。
上下関係を覚悟して生きる。
資格を取る。どんな仕事だっていい。君と共に時間を過ごせるなら……お金だっていらない。
君が欲しいんだ。俺を見失うほど。
編集長が警戒するほど、狂ったのは俺の感情をコントロールできない自分の所為だ。
君が悪いんじゃない。君を失ったら……物語は終わりなんだ。
未来はない。君が……どれだけ望んでも……物語の世界にさえhappy‐endは無い。
時間は、無情にも過ぎていく。楽しい時間は、あっという間だった。
君は?同じ時間、辛い想いばかりだっただろうか?
君の呼ぶ名前に、違和感を抱き始めた。
君は、視線を逸らして誤魔化す。
残り時間は、わずかになった……ほんの少しの瞬間。
俺は、後悔する。言うんじゃなかった。言わなければよかった。
君は、赦さないで。憎しみでも、俺を忘れるな!
「ね、キスしてもいい?5万出すから。」
「……はっ!一瞬、悩んだ自分がいるわ。……触れるだけ?なら、考えなくもない。」
君は、冗談ぽく振舞った。
我慢の限界に、火を付けた。
「じゃ、早速。戴きます。」
近づく俺を、見たことのない涙の量の君。
俺の口を手の平で押さえ、離した手の平にキスをした。
「……ごちそうさま。……ごめんね。さようなら……」
幾久side。
編集長に母親に怒られて、次の日には退院した。
夢の中の君は泣いていたけど、入院のことは黙っておこう。
同じように、現実で君に泣かれたら……胸が苦しい。君の笑顔を見ていたい。
編集長が、時間をくれた。
疑問に思うべきだった。俺には、自由があった。偉い人から許可をもらわなくても……。
浮かれた俺は、最後の日を時間の短い普通の日に選んだ。
君の電話の声は、落ち着いていて……女優だね。
そんな演技をさせたなんて、俺を殺してやりたいよ。
君は、その時間……何を考えた?
いくら思い出そうとしても、分からない。ただ、のん気にその時間を楽しんだんだ。
君が笑うから。いつもより多く、俺の名を……愛しく呼ぶから。
俺の心は、純粋に反応した。浮かれたんだ。
君に心が通じたんだと……単純に。
学校が終わったのは何時だった?
その日は、進路の関係で5時を過ぎ……6時が近かった。
君は、夜ご飯にいつものファミレスじゃなく……初めて入った喫茶店を選んだ。
そう、契約を交わした場所だ。
思い出の場所に浮かれた。君は、俺と違う意味で味を覚えているだろうか?
同じ、ディナーセットだった。遅い時間のそこは、いつもより高い金額だった。
そこがいいと、初めてのわがままに……君の焦る姿は忘れない。
可愛い君のわがままに、金額なんて気にならない。
そんな俺を、君はどう見た?
“別れなければならない現実”を……味わったのだろうか?
俺の世界は、ここでなくてもいいんだ。
俺は男だぞ?人との付き合い?みんなが経験する。世間に出て、もまれて当然だ。
上下関係を覚悟して生きる。
資格を取る。どんな仕事だっていい。君と共に時間を過ごせるなら……お金だっていらない。
君が欲しいんだ。俺を見失うほど。
編集長が警戒するほど、狂ったのは俺の感情をコントロールできない自分の所為だ。
君が悪いんじゃない。君を失ったら……物語は終わりなんだ。
未来はない。君が……どれだけ望んでも……物語の世界にさえhappy‐endは無い。
時間は、無情にも過ぎていく。楽しい時間は、あっという間だった。
君は?同じ時間、辛い想いばかりだっただろうか?
君の呼ぶ名前に、違和感を抱き始めた。
君は、視線を逸らして誤魔化す。
残り時間は、わずかになった……ほんの少しの瞬間。
俺は、後悔する。言うんじゃなかった。言わなければよかった。
君は、赦さないで。憎しみでも、俺を忘れるな!
「ね、キスしてもいい?5万出すから。」
「……はっ!一瞬、悩んだ自分がいるわ。……触れるだけ?なら、考えなくもない。」
君は、冗談ぽく振舞った。
我慢の限界に、火を付けた。
「じゃ、早速。戴きます。」
近づく俺を、見たことのない涙の量の君。
俺の口を手の平で押さえ、離した手の平にキスをした。
「……ごちそうさま。……ごめんね。さようなら……」




